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第19話 貞操の危機は、思いも寄らないところから訪れるものだ

今回で響回は終わる予定だったのですが、話が長くなりすぎた為、2つにわけて更新させて頂きます。

「んふっ♡ とってもイイお尻ね。キュッと引き締まっていて、まさにアタシ好みよ〜」


「あの…部長さん?」


俺は、歩いているにもかかわらず、セクハラ行為(俺の体を触りまくってくる)をしてくる部長さんに耐えきれず、声をかけた。


「ミス アビゲイル」


「は?」


何の事か全くわからず、聞き返す俺。アビゲイルって、女性の名前だとは思うんだが…なぜ急にその名前が出てくるんだ?


「ミス アビゲイル」


「は?」


「アタシの名前よ。“部長さん”じゃなくて、ちゃんと名前で呼んで欲しいの♡」


「は?」


いやいや、いくらなんでも無理がありますよ…部長さん。あなた、どこからどう見ても男ですよ? 最近のニューハーフは凄くて、女性にしか見えないような人もいる。しかし、目の前にいる部長さんは…さっきも言ったが、筋肉ムキムキなのだ。しかもそれを見せびらかす為なのかは知らないが、上はタンクトップ1枚。しかもピチピチの。これでオネェ言葉を使うんだから、たまったもんじゃない。善家の男性恐怖症を治す前に、俺が男性恐怖症になってしまいそうだ。



「いや、アビゲイルって…部長さん、どう見ても男じゃないですか」


「何言ってるのよ〜もう! アタシはどこからどう見ても女よ」


そう言って、グッと力こぶしを作る部長さん。…そのポーズをしてる時点で、一般女性とはかけ離れてますよ。


「いや、おとー」


「ミス アビゲイルって呼ばないと、あなたの貞操を頂いちゃうわよ?」


耳元でそう囁く部長さん。普通の人が相手なら、

適当に流す事ができるが、相手は筋肉ムキムキのオネェなのだ。リアルに俺の貞操が危ない!! 卒業証書(何を卒業するのかは、想像に任せる)をくれるのが部長さんなんて、絶対嫌だ。

俺は、脅迫に負け、渋々部長さんの名前を呼んだ。



「……ア、アビゲイルさん」


「違うわ。ミス アビゲイルよ、ミス アビゲイル!」


「ミス アビゲイル!」


「あ〜ん♡ いいわ〜!! 最高よ〜」


「で…それでですね、ミス アビゲイル。体を触られるのはちょっと…」


「何よ!! アタシに触られるのが嫌なの? どうなのよ?」


そう言って、俺の方に詰め寄ってくるミス アビゲイル。ああ、神様…哀れな俺を、このオカマからお救い下さい。

そう思い、和と善家の方を見るが…残念な事に全く目を合わそうとしない。


…この世界には、神も仏もいないんですね…


「…いえ、嫌じゃないです」


俺は全てを諦め、そう言った。




「ここがオレの部屋だ」


善家が1つのドアの前で止まる。表札を見てみると、確かに善家と書かれてあった。一体…どんな部屋なんだろうか? 善家の性格から考えたら、必要最低限の物しか置いてなさそうだな。それに、置いてある物もシンプルな物。それか、男っぽいレイアウトかもしれないな。ドクロの置物とかがあっても、違和感ないな。


そんな事を考えていると、善家が


「今から必要な物を運んで行くけどよ…一ノ瀬、お前は絶対に部屋の中に入るんじゃねーぞ!」


とドアの鍵を開けながら言ってきた。




「え? 何でだよ? 確かにミス アビゲイルがいるから、力仕事には困らないだろうけどさ、俺も手伝うぞ? わざわざ電車に乗ってここまで来たんだし、何もしないのはちょっとな」


「力仕事って…アタシか弱い乙女だから、そんなのムリムリよ〜」


そう言って、体をくねらせるミス アビゲイル。

…ミス アビゲイル、1回自分の姿を鏡でじっくりと見る事を、強くオススメします。


「そういう意味じゃねーよ。部屋には入らなくても手伝いはできるだろ?」


「確かにそうだな…でも、なんで俺は入っちゃいけないんだ? 何か、俺に見られちゃいけない物のでもあるのか?」


「い、いやっ? そ、そんな訳ねーだろ」


…明らかに嘘をついているのが、モロバレである。目が泳ぎまくってるしな。

俺に見られたくない物か…一体なんなんだろうな? エロい物? それは流石にないか。いやいや、でも、善家も年頃の女の子だ。そういう物の1つや2つはーって、何を残念な事を言ってるんだ。変態のセクハラジジイか、俺は。

しかし、本音を言うと、どうしても見たい! 「見るな」と言われると、見たくなるのが人間なのだ。その辺は許して頂きたい。



「仕方ないな。じゃあ、ここで待っースキありっ!」


「あっ!」


俺は善家の一瞬のスキをつき、部屋の中に入る事に成功する。既に鍵を開けていてくれた、善家に感謝。



「さて、善家の部屋はどんな…って、何だこれは!」


俺は目の前に広がる光景に、ただただ驚く他なかった。


「何なんだ! この可愛らしい部屋は!」


そう、善家の部屋は、俺の予想とは違い、物凄く可愛らしかったのだ。


全体的に部屋のレイアウトはピンクで統一されていて、本棚には、少女マンガが沢山。そして、最も目を引いたのがーぬいぐるみだ。キーホルダーサイズのものから、1mはあるんじゃないかと思われる大型の物まで、様々なぬいぐるみが所狭しと置かれていた。


「わあぁぁぁ!!!! 見るな、見るな、見るな!」


後から慌てて入ってきた善家が、俺の前に立ち、部屋の中を見られまいと、必死に手をバタつかせる。

善家の顔は、やはり恥ずかしいのだろうか、真っ赤っかになっていた。


「何をやってるのだ、響は? 別に、冬夢に見られても構わないだろうに。どうせ一緒に住むのだから、ここで隠してもどの道見られるぞ?」


部屋の中に入ってきた和にそう言われた善家は、


「うぅ…」


と小さくうめいたかと思うと、その場に座り込み、顔を近くにあったウサギのぬいぐるみで隠してしまった。


…そんなに俺に見られるのが嫌なのかよ。これから一緒に住む仲なのに…何だかヘコむな。



「どーせ、あれだろ? オレには、こんな可愛いもの、似合わねーとか思ってんだろ?」


そう言って、ぷくっと頬を膨らませる善家。どうやら、拗ねてしまったようだ。う〜ん、可愛いな。流石美少女、何をやっても可愛く見えてしまう。こんな美少女と暮らせるんだから、俺って幸せ者だよな。もしかしたら、また善家とお風呂でアクシデントがー



「痛たたたた!!!」


「何、破廉恥な事を考えているのだ! 鼻の下が伸びてるぞ!」


和に腕をつねられ、俺の妄想は中断される。


「べ、別にエロい事なんて…全く、全然、これっぽっちも考えてないぞ? 和はおかしな事を言うなあ…ハハハハハ…」


「…」


やめて! そんな冷たい目で、「何バカな事を言ってるんだ」って言う目で俺を見ないで! せめて…せめて、リアクションしてくれ! 無言はキツい。無言は精神的にキツいから !


「い、嫌、全然似合ってるぞ? 善家自身が可愛いからな、とっても似合ってる」


俺は、冷め切った和の視線から逃げる為に、話を戻した。あの目で見られ続けたら、いたってノーマルな俺でも、Mに開花してしまいそうである。危ない危ない…。



「そ、そうか? 本当にそう思ってるのか? 嘘だったら、殴るからな!」


…男性恐怖症で、男に触れる事ができないのに、殴る事はできるのかよ。


「ああ、もちろんだとも。そのぬいぐるみなんか、善家にピッタリだと思うぞ」


俺はそう言って、善家が抱きかかえているウサギのぬいぐるみを指差す。


「そうか!!! 一ノ瀬はやっぱりわかってるな!!」


さっきまでの拗ねていた善家はどこへやら、満面の笑みでウサギのぬいぐるみをギュッと抱きしめる善家。


「ちなみに、このピッフェルちゃんはな、オレの1番のお気に入りなんだ。抱きしめた時のモフモフ感が、たまんねーんだよ」


「確かに…モフモフしてそうだな…」


「だろだろ〜? でも、一ノ瀬には抱きしめさせてやんねーからな」


それは一向に構わないが…ピッフェルちゃんって…ぬいぐるみに名前をつけてるのかよ。もしかして、ここにある全部のぬいぐるみにか? 大小含めたら、500コ近くはあるんじゃないか…。


「…まさかとは思うが、ここにあるぬいぐるみ全部に、名前をつけてるのか?」


俺がそう聞くと、善家は呆れた顔をして


「何、当たり前な事を聞いてるんだよ、お前は? そりゃ、つけてるに決まってるだろ。こいつがミューマで、こいつがアスターシャ。でもってこいつが、デルジャイルでー」


1つ1つぬいぐるみを手に取り、名前を言っていく善家。

おいおい…この調子で全部言っていくのかよ。いくらなんでも、それは勘弁してくれ。


「な、なあ、響。ぬいぐるみの紹介もいいが、それは荷物を私達の家に運んでからにしないか?」


流石の和もこれには耐えられないのか、善家のぬいぐるみ紹介を遮りそう言った。


「…それもそうだな」


しぶしぶながらも、ぬいぐるみ紹介をやめてくれる善家。物分りのいいヤツで、本当に助かった。どこかの誰かさんは、唐揚げの事となると完全に自分の世界に入り込んで、周りが完全に見えなくなるからな。あえて誰とは言わないけども。



「じゃあ、響ちゃん、持って行きたい荷物を教えてちょ〜だい」


「えっとですねー」


こうして、善家の引っ越し準備は始まった。

誤字脱字や矛盾点などありましたら、ご報告よろしくお願いします。



また、感想や評価などもお待ちしております。

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