表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/64

第16話 そうして始まる新しい日常

「はぁ…」


俺は、目の前にいる善家を見て、深くため息をつく。



「500万なんて払える訳ねーよ。俺はどこにでもいる、一般市民だぞ?」


「払える、払えないじゃない。払わなきゃならねーんだ。マストだ、マスト」


と、呆れたように、こっちを見てくる善家。この子も、和と同じ神様。ちなみに、善家はこういう金銭トラブル関係仕事に就いてるんだそうで。まあ要は、ただの借金取りなのだが。


「それに、お前の一家はどう考えても、一般ではないだろ? 何せ、お前のご両親は、オレ達、神の手伝いをーって、やべえ、忘れてた!」


そう言って、再びポケットをゴソゴソする善家。

この子、物凄く忘れっぽい性格みたいだが…これで、本当に仕事が務まるのか?


「ほらよ、お前のご両親からの手紙だ。ここに来る前に渡されたんだ」


「親父とお袋から?」


俺は、善家から手紙を受け取る。最近、手紙が来ないと思ったら…神様に預けてたのか。

などと、1人で変に納得しながら、俺は封筒を開けた。



『このリア充野郎、爆発してしまえ!』


「……は?」


俺は、思わず固まってしまった。そりゃそうだ。親からの手紙の出だしで、いきなり爆発しろなんて言われたら、誰だってこうなるって。


『本部から聞いたぞ。生活サポートに来たのは、黒髪の美少女だってな。1つ屋根の下に、男女が2人っきりって…それ何てエロゲだ、ゴルァ! こんな事になるとわかっていたなら…お前のサポートは筋肉ムキムキのガチムチのお兄さんにしてやったのに…』



…これが親父からの手紙だと思うと、何だか悲しくなってくるなぁ。息子相手に嫉妬って…。そもそも、俺と和はそんな関係じゃないぞ。そりゃ、なれたら嬉しいですよ? 俺だって、健全な高2ですから。でも、同居している内に、相手の事を好きになっていくなんていう、それこそエロゲ展開は現実にはありえないからな。それに、和の彼氏なんて、俺には荷が重すぎる。

和には、ぜひとも彼女に見合った相手と付き合って頂きたい。それが、同居人である俺の望みだ。



『どうせ、あれだろ? もう、ヤっちゃったんだろ? くそっ、羨ましすぎる! 今からでもいいから、俺と早く変われ! それが親孝ー』


「あれ?」


親父からの意味不明な話は、そこで終わっていた。何て、中途半端なんだ。書くんだったら、最後まで書ききれよ…。

などと、思いながら何となく、手紙を裏返してみるとー


『母さんより』


ーと言う出だしから始まる、文章が書かれてあった。


『悪いわね、冬夢。父さんが暴走しちゃって…。あまりにもヒドイから、ちょっとお仕置きしちゃった♡ 書いてる途中にお仕置きしちゃったから、父さんの手紙、中途半端に終わってるけど気にしないでね』


…「お仕置きしちゃった♡」って…お袋、一体何したんだよ。「♡」が物凄い怖いんだが…。


『それより冬夢、鈴の話、聞いたわよ。500万円支払わなきゃならないんですってね? 全く、バカな事をしたわね…』


既に、親父とお袋の所に話が回ってたのか…これはヤバーいや、待てよ。親父とお袋は、神様の手伝いをしてる訳だし…もしかしたら、お偉いさんに話を通してくれて…借金チャラとかありうるかも!


『冬夢の事だから、私と父さんが上層部の方に話を通してくれるんじゃないか、とか思ってるでしょ? 残念ながらそれは、流石に私達にもできないから、諦めてね。』



うぉぉぉぉぉぉお!!!! マジかよ! って事は…リアルに500万円支払わなきゃなんねえのか? 高校生にして、百万単位の借金とか…人生終了じゃねーか! 500万円なんか、1回で払える訳がないから…当然、分割払い…利子も付いて来る訳で…。ははは…何だかね、泣けてくるよ。って…いかんいかん。今は手紙を読んでる途中なんだった。


『でもね、冬夢の頑張り次第にによっては、借金をチャラにできるかもしれないわよ?』


本当かよ! 借金がチャラになるなら、何でもやる! やって見せる!


『条件はー今、冬夢の目の前にいるはずの響ちゃんの男性恐怖症を治す事よ。冬夢なら大丈夫。すぐに治せちゃうわ。』


いやいや…ちょっと待って…さっき何でもするって宣言したけど…それだけはちょっと待って。

俺にはそんなの絶対できないって! 男性恐怖症の治し方なんかわかる訳がない。


『ちなみに、冬夢に拒否権はないわよ。もう、上層部の人と話を付けちゃったし。後、もし失敗したり、放棄したりしたら、借金は倍になるからね』



……何で、もう話を付けてるんだよ! 俺の意思は完全無視かよ!


『ついでにもう1つ。響ちゃんには、一ノ瀬家に和ちゃんと一緒で、冬夢のサポート係として住んでもらうわ。その方が、男性恐怖症も治りやすいと思うから。冬夢も美少女2人と一緒に暮せるし、まさに一石二鳥よね? 冬夢ったらモテモテね、このこの〜♡ 母さんより』



最後にとんでもない爆弾発言をして、手紙は終わっていた。


おいおい、マジかよ…和と一緒に暮らすだけでも、色々とトラブルがあったのに…そこにもう1人加わるだって? ダメだ…これじゃ命がいくらあっても足りない気がする。かと言って、拒否したら借金が1000万になるし…。



「はぁぁぁぁあっ⁈ どう言う事だよ、これは?」


「どうしたんだ?」


俺は考えを一旦中断させ、叫んでいる善家の方に目をやる。

善家はケータイを物凄い形相で睨みつけていた。


「どうしたも、こうしたもない! 今さっき、こんなメールが送られて来たんだよ」


そう言って、ケータイの画面を俺の方に突き出す善家。そこには、こう書かれてあった。



『今日から響ちゃん、一ノ瀬家の息子さんのサポート係に配属ね♪ ちなみに、息子さんと同居する事になるから、その辺ヨロシク。詳しい話は、息子さん本人から聞いてね〜。後、これは絶対命令だから、頑張ってね♡』



…何て軽い文体なんだ…。

そう思い、送信者を見てみると「部長」と書いてあった。…こんなので本当に職場が成り立ってるのか? 俺には全く関係のない事だが、ついつい心配してしまう。



「確かに変だな…」


「だろ? こんなふざけたの、ありえないだろ?」


「ああ、流石にこう言う重要な内容の時に、絵文字を使うのは…」


「いや、そこじゃねーよ!!!!」


「えっ?」


「え、でもねーよ!!!! どう考えても、おかしいだろ。この異動命令」


「いや…全然おかしくないけど」



よく考えてみたら、お袋の言う通りだ。美少女2人と一緒に暮らせて、条件を達成できた借金はチャラ。さらに、善家も得をするんだから、一石二鳥どころか一石三鳥である。何事も前向きに行かなきゃ、やっていけないもんな。



でも…とりあえずは、善家を説得しなくちゃな。いくら命令だとは言っても、無理矢理じゃ今後の付き合いが悪くなるだろうし。


「なあ、善家頼む」


俺は深々と頭を下げる。


「これは俺の為でもあり、善家の為でもあるんだ」


「ん? どういう事だ?」


「つまりだなー」



俺は、一石三鳥大作戦(さっき俺が命名した)を簡単に説明した。


「で、どうだ? 協力してくれるか?」


「……仕方ないな。いいぜ、協力してやるよ。オレにも拒否権はないしな…」


俺の話の中に「男性恐怖症」と言うキーワードがでてきたせいか、善家のテンションはやや低めだったが、了解してくれた。



「ありがとうな、善家。部屋割りとか、荷物とか、必要なものを揃えたりだとか、やらなくちゃいけない事は沢山あるけど…まずは…」


そう言って、俺は壁にかかった時計を見上げる。もう既に、10時を過ぎていた。



「和を起こして、3人で朝ご飯食べよう。俺、和起こしてくるから、善家はキッチンに置いてある食パンの耳を切っておいてくれ。サンドイッチ作りたいからさ」


「ああ、わかった。何だったら、オレが全部作ってやるよ。料理には結構自信あるんだぜ?」


「本当か? だったら、お願いしようかな。材料は食パンの横に置いてあるから」


「よっしゃ! 任せとけ!」



鼻歌を歌いながら、善家はキッチンへ向かって行った。


「じゃあ俺は、和を起こして来るかな」




こうして神様をもう1人迎え、3人となった一ノ瀬家の朝が始まっていった。





誤字脱字や矛盾点などありましたら、ご報告よろしくお願いします。



また、感想や評価などもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ