出会い
8月10日。僕の住んでいる千葉は、いつも以上の残暑だった。
外ではセミがやかましい声で鳴いていた。
その声よりも大きく鳴った目覚まし時計。
セミの声よりも耳障りなその音で僕は目を覚ました。
「8時か‥‥」
手を伸ばし軽く時計を叩く。
耳障りな音は止んだ。
同時に、セミの鳴き声が再び聞こえてきた。
僕はいつも通り塾の支度をする。「あれ?筆箱が無いな‥‥」
カバンの中に入れてあったはずの筆箱が見当たらない。
「おかしいな‥‥どこにしまったかな?」
カバンの中を見渡す。
やっぱり見つからない。
「昨日まではちゃんと入ってたのに‥‥一体どこにいったんだ?」そうこうしてる内に家を出る時間になってしまった。
「しょうがない‥‥とりあえず何か持ってくか‥‥」
家にある文房具を一通りカバンに入れた。
家から出た瞬間、日差しが僕の身に降り注ぐ。
「今日も暑いな‥‥」
僕はバス停まで自転車を走らせた。
家からバス停までジャスト15分。
いつもより急いで来たせいか、僕のTシャツは汗だくになっていた。
僕はタオルで汗を拭きとり、バスが来るのを待った。
5分後、バスがやって来た。
バス内はクーラーが効いており、席も空いていた。
一番後ろの席に座り、僕は塾の前のバス停に着くのを待った。
約30分、目的地に着き、僕はバスを降りる。
外に出た瞬間に気温差に苦しんだ。
僕は再びタオルで汗を拭こうとした。
しかし、肩にかけてあったはずのタオルが無くなっていた。
「今度はタオルか‥‥今日はあんまりいい日じゃなさそうだ‥‥」
「君、これ落としたよ。」
後ろから優しい声がした。
僕は振り返った。
後ろには、タオルを持った女の子が立っていた。
「これ、君のでしょ?」
手に持ったタオルを僕の方に見せてきた。
「ああ、僕のタオルだよ。ありがとう。」
「今度からは気をつけてね。」
彼女は優しく微笑んだ。
そして彼女は僕と一緒の塾に入っていった。
これが、僕と彼女、柊秋穂の初めての出会いだった。