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第2話 屍の騎士《コープスナイト》

—1—


「試験を始める前に改めて確認だ。昇格条件はB級ダンジョンのボス『屍の騎士(コープスナイト)』の討伐およびB級ドロップアイテム『月夜の仮面』を持ち帰ること。A級ハンターの冬士はサポートに徹してトドメを刺すのは青葉。お前だ」


「ああ、分かってる」


 試験説明を行う父さんの背後に禍々しい漆黒が陽炎のように揺らめている。

 漆黒の正体は『ゲート』。ダンジョンに繋がる門の役割を果たしている。

 ダンジョンはハンター協会によって管理されていて許可が降りなければ中に入ることができない。

 ハンターによる無謀な挑戦を防ぐ為で、死人を出さないように管理しているのだ。


「どうした青葉? 顔が引き攣ってるぞ。緊張してるのか?」


 桔梗さんがこちらの顔色を窺う。


「この日の為に訓練を積んできたのでプレッシャーが……」


「心配するな。お前の実力はゆうにB級を超えている。もっと自分に自信を持て」


「そうだぞ。師匠の言う通りだ。模擬戦の成績は俺の方が上だけど、A級の俺とっているだけそこらのA級よりいい線いってるはずだ」


「うるさい。模擬戦の成績もすぐにひっくり返してやるから見とけ」


 冬士の肩を軽く押して、オレは腰に差していた炎剣に手を掛けた。

 そのままゲートに向かってゆっくりと足を進める。


「冬士のおかげで軽口を叩けるくらいには緊張も解けたようだな。桔梗、俺達は後衛で見守ろう」


「ああ、この2人ならボス部屋までは心配ないだろう」


 オレと冬士が前衛、父さんと桔梗さんを後衛に配置しながらゲートに潜るのだった。


—2—


 ダンジョン内で発生するモンスターは『魔物』と呼ばれ、体内に『魔力』を有している。

 ダンジョンの中でも魔力総量の高い魔物がボスフロアに配置され、魔力を消費して発動する『魔法』攻撃を仕掛けてくる。

 オレ達で言うところの『異能力』に近い。


 今回戦う屍の騎士(コープスナイト)も魔法攻撃を仕掛けてくるタイプの魔物で主に闇属性の攻撃を繰り出してくるらしい。

 以前、A級昇格試験を経験している冬士が情報源だから信用していいだろう。

 魔物を倒すにはHPを削り切るか『魔核』を破壊するかの2択しかない。

 魔核の位置は一般的に心臓付近と考えられているが、必ずしもそうであるとは限らない。

 頭や腕や足、珍しいもので言えば魔核が体内を自由自在に移動していたという例も報告されている。


 魔物も生存競争に打ち勝つ為に進化している。

 ダンジョンの発生と共に人間が異能力を宿したように魔物も討伐されないように進化しているのだ。


「炎剣に刃こぼれ無し、耐久性も問題無し。異能力の使用も最小限に抑えていたからエネルギー切れの心配もない」


 ボス部屋の扉の前で装備品のチェックを行う。

 異能力の発動には精神力を消費する為、食事や睡眠などの休息で回復することができる。

 ボス部屋の前や道中にある安全区域で小休憩を挟むことが望ましいが今回はその必要は無さそうだ。


「道中は魔狼とゴブリンくらいしか遭遇しなかったからな。青葉、このまま進むけど準備はいいか?」


「ああ、問題ない」


 左右の扉をそれぞれ押し込み、ボス部屋へと足を踏み入れる。

 黒い石で覆われたフロア。

 奥に目をやると黒を基調とした鎧に身を包んだ騎士がいた。

 赤のマントを纏い、手には剣が握られている。

 何より目に付くのは顔を覆っている仮面だ。

 B級ドロップアイテム『月夜の仮面』。

 不気味な模様が刻まれていて直視することを躊躇われる。

 がしかし、戦場で敵から目を逸らすことは死に直結する。

 屍の騎士(コープスナイト)を視界に収めたまま中央まで前進すると扉が自動で閉じた。

 出口の封鎖。

 ボスを倒すことでしか地上に戻ることができない仕様らしい。


「青葉、来るぞ!」


 屍の騎士(コープスナイト)が左手を前に伸ばし、短く何かを詠唱すると地面に魔法陣が展開された。


「召喚魔法か」


 魔法陣の中から骸骨スケルトンが這い出るようにして現れた。

 その数は全部で10体。

 心臓の位置に赤い結晶が埋め込まれている。あれが魔核だ。


「冬士、手分けして片付けよう。屍の騎士(コープスナイト)はその後だ」


「オッケー」


 出現した骸骨スケルトンが一斉に突撃してくる。

 その後ろに屍の騎士(コープスナイト)が控える布陣。

 まずはこちらの力量を見定めることが狙いか。

 いいだろう。


 炎剣を構え、突撃してきた骸骨スケルトンの胴を薙ぐ。

 骸骨スケルトンの装備は剣と盾。

 こちらの攻撃が盾によって防がれるが、力技でゴリ押しするのみ。

 体勢を崩した骸骨スケルトンの左胸に突きを放って魔核を砕く。

 魔核を破壊された骸骨スケルトンはたちまち霧散した。

 残りは4体。

 冬士は炎の異能力で骸骨スケルトンを火だるまにしていた。

 一瞬で5体を焼き払い、こちらにドヤ顔を向けてくる。

 頼もしい事この上ないが少しムカつく。


「くッ」


 振り下ろされた剣をかわし、炎剣で正確に魔核を貫く。

 冬士に遅れを取りながらもほぼ無傷で骸骨スケルトンを撃破した。


「この調子でボスも倒したいところだが油断は禁物だ」


「分かってる。オレが突っ込むから冬士は援護を頼む」


「はいよ」


 炎剣を握り直し、素早く特攻を仕掛ける。


呪いの闇球(カースボール)


 屍の騎士(コープスナイト)が頭上に黒い球体を複数展開。

 すぐさまオレの行く手を阻むように振り下ろしてきた。


炎の円盾(フレイムシールド)


 眼前に炎の盾が出現。

 

「ナイス冬士!」


 冬士の盾のおかげで勢いを落とすことなく屍の騎士(コープスナイト)に接近することができた。

 砂煙に紛れて一気に斬りかかる。

 が、


「簡単にはいかないよな」


 死角を突いたつもりが剣で受け止められた。

 仮面の中の息遣いが聞こえる。

 刹那、屍の騎士(コープスナイト)が鍔迫り合いのまま踏み込んできた。

 物凄い力で押し込まれ、二撃、三撃と剣が振り下ろされる。

 神経を研ぎ澄ませ、体勢を崩されながらも必死に食らいつく。

 背丈は180くらい。剣戟をただ受けるだけでも腕が痺れる。

 腰を入れて体の回転運動を利用してギリギリ持ち堪えている状態。

 対してこちらの攻撃は鎧が邪魔をして通らない。

 正直、これ以上は持たない。

 どうする。冬士に助けを求めるか?

 視線を後方の冬士へ向けようとして頭を振る。

 これから上を目指す人間がB級ダンジョンのボスを倒せなくてどうする。

 オレは誓ったんだ。

 冬士ライバルを超えてS級パーティーのリーダーを務める父さんのようになるって。


「うおーーーーーー!!!!」


 体内の空気を吐き出し、全力で剣を振るう。

 腕から噴き出た炎が剣を飲み込み、左右に乱れるように荒れ狂う。

 力任せに振るうその姿は側から見れば不恰好に見えるだろう。

 体に染み込ませた剣の型は原型を留めず、ただ標的に最速で襲い掛かる。

 息が、できない。

 頭に血が上り、目の奥が熱い。

 酸素を取り込まなくては。

 しかし、この猛攻を防いで屍の騎士(コープスナイト)に一撃を入れるにはその時間さえも惜しい。

 あと少し、あと少しで届く。


暗転ブラックアウト


 瞬間、視界が闇に染まった。


「がッ!?」


 直後、左腕に刺すような痛みが走った。

 暗闇で何も見えない。


烈火の炎柱(インフェルノピラー)


 地面から天に向かって炎の柱が打ち上がり、フロアが見渡せるようになった。

 オレの左腕に切り傷を与えた屍の騎士(コープスナイト)は下段からオレの胴体に斬りかかろうとしていた。


「青葉! 今だ!」


 屍の騎士(コープスナイト)が踏み込んだ地面が割れ、炎の柱が噴き上がる。

 炎を避けようと状態を後ろに逸らした屍の騎士(コープスナイト)の腹部目掛けて炎剣を振り下ろした。

 痛む左腕に鞭を打ち、打ち上がった炎もろとも屍の騎士(コープスナイト)を両断する。


炎剣十字架斬フレイミングバスタードッ!」


 渾身の一撃が炸裂し、屍の騎士(コープスナイト)の肉体が灰と化していく。


「勝った、のか」


 照明が灯り、灰の山の中からB級ドロップアイテム『月夜の仮面』を拾い上げる。


「青葉、最後の一撃凄かったな」


「ああ、でも炎剣がダメになったみたいだ」


 炎剣の剣身が割れて、粉々に砕け散った。

 『炎剣十字架斬フレイミングバスタード』は爆発的な威力を生み出す技だがその代償として剣にかかる負担も大きい。

 直前まで屍の騎士(コープスナイト)と斬り合っていてダメージが蓄積されていたとはいえ、一撃で使い物にならなくなってしまった。


「2人ともお疲れ。青葉、これでお前も今日からA級ハンターだ」


「冬士も素晴らしいアシストだった。私が出る幕はなかったな」


 試験官として戦闘を見守っていた父さんと桔梗さんがこちらにやって来た。


「でもおかしいな。普通ならダンジョンボスを倒したらゲートの外に通じる転移陣が現れるはずだが」


 桔梗さんが周囲を見渡すもそれらしきものは見当たらない。

 ボス部屋の扉も閉じたままだ。

 完全な密室。

 ダンジョンはクリアしたはず。

 まだ何かあるのか?


「我が同胞の気配が消失したと思い駆けつけてみればそこそこ戦えそうな人族がいるではないか」


 背中に悪寒が走り、全身に鳥肌が立つ。

 ありえない。

 なんて魔力量だ。

 屍の騎士(コープスナイト)なんて比にならない。

 まるで底が見えない。

 というかいつからそこにいた?


 青年の見た目をした魔族が品定めをするような視線を向け、微笑んでいた。

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