表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/93

83話「ハルナ、絵日記を書く」

83話「ハルナ、絵日記を書く」


初夏の朝、窓から差し込む柔らかな日差しに包まれながら、ハルナはリビングの小さなテーブルに座っていた。目の前には真新しい絵日記帳とカラフルなクレヨンが広げられている。今日の保育園のことを絵と文字で書こうと意気込んでいるようだ。隣には祐介が優しく微笑みながら見守っていた。


「ぱぱ、ハルナね、きょうのこと、いっぱいかくの」


「そうか、楽しみだな。どんなことがあったか思い出しながら書くといいよ」


ハルナは小さな手でクレヨンを握り、保育園での出来事を思い出そうと目を細めた。お友達のあいりちゃんやしおりちゃんと遊んだこと、先生と一緒に絵本を読んだこと、そして何より嬉しかったのは、また安心して保育園に行けたことだった。


「あのね、あいりちゃんとおままごとしたよ。おいしいカレーつくったの」


そう言うと、ハルナはおもむろにオレンジ色のクレヨンで丸いお鍋の絵を描き始めた。続けて、緑や黄色、赤のクレヨンで野菜や具材を表現する。


祐介はそれを見て微笑んだ。「いい感じだな。上手に描けてるよ」


「ぱぱ、しおりちゃんもいたんだよ。しおりちゃん、ハルナのこと、いっぱいなぐさめてくれたの」


そう言って、ハルナはピンクのクレヨンで女の子の三人組の絵を描いた。三人の手が繋がっている様子がよく表れていた。


祐介はそっと近づいて、その絵に優しく触れた。「いいなあ、仲良しなんだな」


「うん!でもね、こわいこともあったの。しんにんのせんせいが、ハルナの耳をつかんで、いたかったの」


ハルナの顔に少し影が落ちた。祐介はすぐに優しく声をかけた。


「そうだったな。痛かったよな。でも、ぱぱもお姉ちゃんも、みんなが守ってくれるから大丈夫だよ」


ハルナは大きくうなずいた。「うん。だから、また明日もがんばっていくよ」


「えらいな。そうやって少しずつ、強くなっていくんだよ」


その後もハルナは絵日記に夢中で、いろいろな色を使って楽しい日々を表現していった。祐介はそんな娘の姿を見つめながら、これからの毎日が穏やかで幸せであってほしいと心から願った。


夕方、ハルナはできあがった絵日記を嬉しそうに祐介に見せた。「ぱぱ、みてみて!いっぱいかけたよ!」


祐介は大きく目を見開き、「すごいな、ハルナ。ぱぱ、感動したよ」と笑顔で言った。


その夜、祐介はベッドの中で、ハルナの明るい未来を思い描いた。過去の傷はまだ癒えきっていないかもしれないが、彼女の小さな勇気と愛情に満ちた日々が、その痛みを少しずつ和らげてくれることを信じていた。


「おやすみ、ハルナ。また明日もいっぱい笑おうな」


静かな夜に、小さな声でそうつぶやきながら、祐介は深い眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ