表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/93

78話 休日にて

第78話「休日にて」


朝の光がカーテンの隙間から差し込み、祐介はゆっくりと目を覚ました。隣のベッドには、まだ深い眠りについている茶髪の小さなエルフの女の子、ハルナが静かに寝息を立てている。祐介はその穏やかな寝顔を見つめながら、柔らかな笑みを浮かべた。


「おはよう、ハルナ」


声をかけると、彼女は小さく目を開けて、ぼんやりとした目でパパを見た。


「ぱぱ、おはよう」


ハルナの声はまだ少し眠そうだったが、それでもその言葉には確かな温もりがあった。祐介は朝の準備をしながら、台所で朝食の支度を始めた。目玉焼きにベーコン、トーストとミルクの用意はいつものルーティンだ。


リビングのテレビからは朝のニュースが流れていた。ちょうど昨日の社長の講義が話題になっているらしく、画面には「子育てと怒り方の研修」と題された映像が映し出されていた。祐介の顔も映り、少し照れくさそうにテレビを見つめた。


「ぱぱ、テレビに映ってる」


ハルナが隣で指をさしながら言う。祐介は苦笑いをしてテレビの方を見た。


「うん、昨日の講義だよ。たくさん学んだことがあってね」


祐介はニュースに映る自分の姿に少し誇らしさを感じながらも、子育ての難しさを改めて実感していた。彼にとって、ハルナと過ごす日々は、まるで未知の世界を歩くようなものだった。


その日の午後、二人は近くの公園へ出かけた。春の柔らかな日差しが木漏れ日となり、ハルナは元気よく遊具の上を走り回っている。祐介は木陰のベンチに腰掛け、遊ぶ彼女を静かに見守っていた。


すると、公園の入り口から見覚えのある顔が現れた。岡本とその妻、そして娘のあいりが笑顔で近づいてくる。あいりはハルナと同じ年頃で、すぐに二人は手を取り合って遊び始めた。


「こんにちは、祐介さん」


岡本の妻が笑顔で挨拶をしてきた。


「こんにちは、岡本さん。こんにちは、あいりちゃん」


祐介も笑顔で返し、子どもたちの様子に目を細めた。


「あの講義、すごくよかったですね」


岡本が話を切り出すと、妻も頷いた。


「私も会場にいましたよ。実は、私も子育て中でして…とても参考になりました」


祐介は少し驚きながらも、彼女たちの言葉に嬉しさを覚えた。思わぬ場所での繋がりが、彼の日常を少しだけ華やかに彩っているのを感じた。


しばらくして、子どもたちは遊び疲れたのか、二人でベンチに座り込み、アイスクリームを食べ始めた。祐介は岡本たちと談笑しながら、これからの育児の話題で盛り上がった。


「これからもお互い、頑張りましょうね」


岡本が言うと、祐介は力強く頷いた。


「ええ、子どもたちのために、頑張ります」


夕暮れが近づく頃、ハルナの小さな手を握りながら、祐介は今日という一日がかけがえのない時間だったことを噛み締めていた。彼らの未来はまだ遠く続いている。けれど、これからも二人で歩んでいくのだと、心から思った。


「ぱぱ、また明日も遊ぼうね」


ハルナの言葉に祐介は笑顔で答えた。


「もちろんだよ、ハルナ」


穏やかな休日は、静かにそして確かに過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ