58話保育園お遊戯会準備(祐介視点)
第58話 保育園お遊戯会準備(祐介視点)
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、俺は静かに目を覚ました。隣の布団で寝ているハルナの穏やかな寝息が、心の中に優しいリズムを刻んでいる。今日は保育園のお遊戯会本番前、最後の準備日だ。俺はいつもより少し早く起きて、ハルナの様子を確かめた。
「おはよう、ハルナ。」
眠そうに目をこすりながらも、ニコリと笑う。俺はその笑顔に毎回救われている気がした。起きてすぐ、姉貴のさやかにLINEで連絡を入れた。
「今日もお遊戯会、よろしくな。」
「了解。午後から行くから、ハルナの様子教えてね。」
こうして今日も俺たちの一日は始まった。
朝食を済ませると、俺はハルナの衣装をチェックした。前日姉貴が買ってくれた新しい夏服も、ちゃんと着せている。ハルナは嬉しそうに鏡の前でくるくると回り、まるで小さなモデルのようだった。
「ぱぱ、かわいい?」
「もちろん!すごく似合ってるぞ。」
そんなやりとりをしながら、俺は心のどこかで少し緊張していた。本番に向けての練習は大切だけど、やはり親としては一番良い姿を見せてほしいと願ってしまう。
保育園に着くと、子どもたちはすでに衣装に着替え、にぎやかに練習をしていた。先生方の指導も細かく、ハルナは少し緊張気味だったが、頑張って踊りについていこうとしている。
俺はその様子を見守りながら、ふと周囲を見ると、ほかの保護者たちもカメラやスマホを手にして、我が子の一挙手一投足を見逃すまいと必死だった。あいりちゃんの父、岡本さんも妻と一緒に来ていて、穏やかな笑顔であいりちゃんの成長を喜んでいる様子だった。
ハルナは振り付けの途中で少し戸惑う瞬間もあったが、先生がやさしくフォローするとすぐに笑顔を取り戻した。その姿を見て、俺は胸が熱くなった。
「大丈夫、ハルナ。ぱぱはいつも応援してる。」
そう心の中で呟き、再び動画を回す。
練習が終わると、子どもたちは休憩時間。俺はハルナとベンチに座り、おやつの話をした。
「お遊戯会の後で何食べたい?」
「アイス! みんなで食べるのがたのしい!」
「そうだな、じゃあ終わったらアイス買いに行こう。」
ハルナは満面の笑みを浮かべてうなずいた。
その時、姉貴からLINEが来た。
「今から保育園に向かうよ。ハルナの様子、教えて。」
「わかった。練習は順調だよ。可愛かった。」
姉貴は忙しい仕事の合間をぬって駆けつけてくれた。俺はその優しさに感謝した。
午後の練習も終盤に差し掛かり、いよいよ本番のリハーサルが始まった。子どもたちは衣装を身にまとい、それぞれの役を演じていた。ハルナは星の役で、小さな手を一生懸命動かしながら踊っている。
俺はカメラを構えながら、その姿を見て涙がこぼれそうになった。ここまでの成長、苦労、すべてがこの瞬間に集約されている気がした。
「祐介、こっち見て笑って。」
姉貴が声をかけてきた。俺は笑顔を作り、姉貴はハルナに手を振った。
「さやかおねいちゃん!」
ハルナは声を上げて嬉しそうに叫んだ。
本番は明日だが、今日の準備が完璧だったことに安堵を覚えた。家に帰る途中、俺は姉貴に話しかけた。
「ありがとう、姉貴。ハルナのために色々してくれて。」
「いいんだよ。家族だろ?お互い支え合わなきゃ。」
その言葉に、俺は強い絆を感じた。
夜、家に帰るとハルナは疲れ切ってベッドに倒れこんでいた。俺はそっと側に寄り添い、寝顔を見つめた。
「明日、がんばろうな。ぱぱも応援するから。」
ハルナはうっすら目を開けて微笑み、そしてすぐに深い眠りに落ちた。
俺はその姿を見ながら、何度も何度も心の中で繰り返した。
「大丈夫、明日は最高の日になる。」