表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/93

55話 姉、静寂の中で沈黙

55話 姉、静寂の中で沈黙



ゴールデンウィークも終盤に差し掛かったある日の午後。

祐介の姉、さやかは仕事の合間にふと思い立ち、弟の娘、姪であるハルナの家へ久しぶりに顔を出すことにした。最近はは忙しくてなかなか会えないが、今日はゆっくりできる時間が取れたのだ。


玄関を開けると、リビングから笑い声が聞こえてきた。祐介がテレビの前でハルナと一緒に座り、二人でアニメを見ているところだった。


「さやかおねえちゃん!」

ハルナは笑顔で駆け寄ってきた。

「わあ、久しぶり!元気だった?」

さやかはその無邪気な笑顔に自然と頬が緩んだ。


ハルナは祐介の膝の上に座り、ふわふわの髪をさやかに向けてくれた。さやかは一瞬言葉を失い、ただ見つめるだけだった。


「…やっぱり、可愛いなあ」さやかは心の中でそうつぶやいた。

普段の忙しい生活の中では忘れていた、純粋な子どもの存在の尊さが胸に染み入る。


祐介はそんなさやかの様子に気づき、にこりと笑って言った。

「なぁ、姉貴。ハルナ、ほんとに大きくなったよ。毎日が発見の連続でさ」


さやかは目を細めて頷いた。

「そうね。パパの祐介もすごく頑張ってるし、ハルナも幸せそう」


三人はソファに並んで座り、ハルナの話題で盛り上がった。

「この間、ハルナが初めておつかいに行ったんだって?」

「そうそう。俺も心配だったけど、無事に帰ってきたよ。姉貴も途中で尾行してくれて助かった」


さやかは照れくさそうに笑いながら言った。

「まあ、弟の子だし放っておけないわよ」


その後も会話は続き、和やかな時間が過ぎていく。だが、ふとした瞬間、さやかはハルナのしぐさや表情に静かに胸を打たれ、言葉を失った。


ハルナが祐介の膝から立ち上がり、無邪気に部屋を走り回る様子を見て、さやかの心はしばしの静寂に包まれた。


「昔の私たちの頃とは全然違うな…」さやかはぽつりとつぶやいた。


祐介はそんな姉の心境の変化に気づき、そっと声をかけた。

「姉貴、どうした?」


さやかは微笑みを浮かべながらも、少し目を潤ませて答えた。

「…いや、何でもない。ただ、ハルナの純粋さに驚いただけ」


その日の夕方、三人は近所の公園へ出かけた。ハルナは砂場で夢中になって遊び、祐介は姉と肩を並べてそれを見守る。


さやかは静かな声で言った。

「祐介、パパとしてよくやってるね。ハルナ、きっと幸せだよ」


祐介は照れくさそうに頭をかきながら答えた。

「ありがとう、姉貴。でも、まだまだだよ。毎日が勉強でさ」


さやかは笑いながら肩を叩いた。

「そういうお前が好きよ」


それから三人は笑顔で帰路についた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ