29話 高知帰省4日目(姉付き)
第29話:高知帰省4日目(姉付き)
朝、実家の居間に集まった家族たち。
親戚のアルバムから出てきた一冊の古い写真集がテーブルの上に広げられていた。
「これ、見てみい。お前らが小さい頃の写真もあるぞ」
そう言いながら父が写真をめくると、次のページで姉・さやかの若かりし頃の姿が映っていた。
特攻服を羽織り、黒いカブにまたがった凛々しい姿。
眉間にしわを寄せ、鋭い眼光が強烈なオーラを放っている。
「うわあ……お姉ちゃん、これほんまに?」
ハルナは目を輝かせて写真に見入った。
「これ、かっこいいね!」と、幼い声で興味津々。
それを見た母も思わず笑いをこぼす。
「昔は結構やんちゃやったもんな、さやかは」
しかしその頃、さやかは自分の部屋のカーテンの陰からそのやんちゃな黒歴史が暴露されているのに気づき、徐々に顔色を変えていく。
「な、なんでこんな写真を持ち出すのよ……!」
数秒後、さやかはついに居間へ全速力で飛び出した。
「やめてよ! これ以上見ないでっ!」
祐介は呆れた顔でため息をつきながら、
「また始まったよ、姉ちゃんの黒歴史大パニック…」
ハルナはまだ写真に夢中で、無邪気に笑っていた。
「お姉ちゃん、かっこいいね!」
「う、うん……ありがとう、ハルナ」
姉は赤くなりながらもどこか嬉しそうだった。
⸻
その日の夜、祐介はベッドに横になりながら、
「姉ちゃんの黒歴史はいつになっても安定の笑いどころだな」と静かに笑った。
ハルナの無邪気さが、家族の温かさを改めて感じさせる一日だった。