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day1 〜初めてのタイムリープ〜

火照った体を冷やしにベランダに出る。

冷たい海風が心地よく体を包み込む。

体を乗り出して真下を見つめる。

昨日大雨だったからか波が激しい。

体が吸い込まれてしまいそうな迫力に唾を飲み込む。


背後から物音がしてふと我に帰る。

猫がゆっくり足元まで寄ってくる。

「あー。酷く酔っ払ってしまったのかな…猫が見えるよ…」

見えるはずのないものから再び視線を海に戻した時、足元から鳴き声が聞こえる。

「ねぇ」

まるで猫が話しかけてくるかのように。

「え?」

「ねぇ、君に14日の猶予をあげる。今までの人生やり直してから死ねば?」

猫の言葉に目を丸くする。

猫が喋ったことよりその内容に。


「それって…過去に戻れるってこと?」

「そうだね。その後はまたこの時間に戻ってくるけど。」

聞こえた言葉をただ同じように繰り返しただけで何も理解はできなかった。

「……何が君の目的なの?」

「簡単なことさ。愚かな人間は人生やり直してどう生きるのか。まあそれに、もう死ぬ君にはどうだっていいことだろ?」

「私は……」

星が煌めく夜空を見上げ唇を噛み締める。


(どうせなら後悔を消したい。)


猫は欠伸をする。

「それじゃあ決まり。その日眠りにつくと次の後悔した日に遡る。君は自由に過ごせばいい。簡単だろ?」

「何それ…あはは、漫画の主人公みたい。」

ここまで話してもやはり何一つ理解できず自然と笑いが出てしまう。

「僕は優しいから君が戻りたいと思う日を中心に戻してあげるよ。」

そうは言われても、たくさん後悔があっても"ここだ"という日はパッと思い出せない。

右の頬から冷たいナニカが流れた時、視界が狭くなっていき目の前が黒に染まっていく。

そして最後に聞こえた。


ーこのことは誰にも話したらダメだからね。


ーーーーーーーーーー


day1

目が覚めるといつものベッドの上にいた。

(私あのまま寝たのかな)

体を起こして背伸びする。すると扉が勢いよく開く。

「あ、まだ起きてないんか思った。」

私は反射的に短い悲鳴をあげる。


なぜ、なぜ…半年前に離婚した旦那がいるのだろうか。鍵は返してもらった、離婚後連絡すらしてない。

口をパクパクしていると彼は怪訝そうに(ひたい)に手を当てる。

「体調悪いのか?今日出かける言ってたのに全然起きんから…大丈夫か?」

私はハッと体を後ろにさらす。目に入ったデジタル時計の日付は1年前の年明け。

(…え?本当に??あの猫の言ってたことは…)

頭がうまく回らず考えこむと彼は私に尋ねる。

「やっぱ行くのやめる?」

「あ、ごめん!準備する!待ってて!」

私は急いで準備する。


(なぜ私はこの日に帰ってきたんだろう?)


彼の運転で彼の実家に行く。

親戚が一堂に介しており挨拶する。

「あの…あけまして…」

「まあ、たぁーくん遅かったわね!心配してたのよー?いつもたぁーくんは準備とか早いのにぃ〜!」


…そうだ、いつも義母はコレだ。

甘ったるい声音で彼の腕をさする。

嫌味を言い、私を一瞥するが私に対して言葉は発しない。

一人息子を奪った私への当てつけ。それが嫌で義実家に帰ることが嫌だった。

親戚は皆笑う。彼は何も言い返さない。

ここに私の味方はいない。

それがすごくすごく居心地が悪かった。

(苦しくて嫌で…この日私はこの場所から逃げたんだった。どうせ同じ日を過ごすなら…)


大きく息を吐くと私は口角を上げて義母の顔を見つめる。

ギョロッと目をむき出し体を()け反らす義母に私ははっきり話す。

「いや、すみません!私が寝坊してしまいまして!本当いつもすみません!つまらないものですがこれどうぞ!明けましておめでとうございます!」

義母は私の顔と手土産を交互に見つめると奪い取る。もちろん感謝の言葉など一つも返ってこない。


私はいつもの場所、部屋の隅で親戚共がお酒を飲む姿をぼーっと見つめる。

いつもは苦痛な空間だが、考え事に没頭していた。

(本当に戻って来れたのなら、明日は別の日に行けるってことよね…どこに辿り着くのか、何を後悔したっけ…残り13日。1日も無駄にしたくない。)

そんなことを考えていると彼が横に座ってくる。

「えっと…話はもういいの?」

「ん。」

彼はぐびっと酒を飲み込む。普段飲酒しない彼の頬はうっすら色付いている。

「つまらんよな、ごめんな。」

彼はぽつりと呟く。

考え事してる様子が機嫌が悪いと感じ取ったのだろう。慌てて誤魔化す。

「ううん、別にいいよ!せっかく帰省してみんな集まってるんだから楽しみなよ。」

謝罪した彼にも驚いたが、何より今は明日以降の残りの日をどう過ごすかに時間を使いたいのだ。


義母が親戚に餅や野菜など入った袋を配っている。彼は立ち上がり義母から奪い取ると再び私の目の前まで戻ってくる。

「ん?どうし…」

「帰る。」

彼が私の手を引き車に向かう。

1年前と違う行動に私は驚きつつ親戚に頭を下げて運転席に乗り込む。

「えっと…帰るよ?」

「ん。」

彼は車の窓から外を見つめる。

車を走らせていると彼はショッピングモールを指差す。

「お前行きたい言うてただろ?」

「あ、そうね」

(ここで買った福袋良かったのよねー!)

大賑わいの駐車場に無理やり車を停めて店に乗り込む。

たくさんの福袋があるがお目当ては決めてある。まっすぐその店へ向かう。


結局3店舗巡り、レシートにくじ引きチャンスと書かれた文字を見つめる。

「こっちだってよ。」

「あ、待って。」

彼が手を引きくじ引き会場へ誘う。

長い列だがどんどん人が捌かれていく。

あっという間に私の番。


紐を引くタイプのもの。

そして私は覚えている。

動悸が激しくなるが迷わずそして勢いよく引く。

その瞬間真横で鐘が激しく鳴らされる。

「おめでとうございます!2等の高級国産和牛でーす!」

笑顔の店員さんからずっしり重い大きな桐の箱を渡される。

私はにやっと笑う。

前回後ろの人が引いていたもの。その時はもう少し遅く5分の1を外して悔しかったのだ。

(…確かその時に義実家の件もあって彼に当たったんだっけ?理不尽だったなー。)

そう考えてるとふと腕が軽くなる。

「あ、ごめん!」

「いや、持つ、重いだろ。」

「あ、えっと、ありがとう?」

「なんで疑問系なんだよ。」

早足の彼の隣を歩いて車に戻る。

「今日はすき焼きかなぁ。」

私の言葉に彼はふっと微笑む。

「いい肉が当たったしな。」


夜、すき焼きを食べる。

さすが5万円相当の高級和牛。やはり美味しい。

脂が甘く、スッととろけて一瞬で口の中から無くなる。

「はぁ…幸せ…」

そう呟くと「俺も」と返事が返ってくる。

そして彼は私に尋ねる。

「なぁ、今日は本当に体調大丈夫?」

「んー?なんでー?」

彼は少し俯いてから口を開く。

「んー。朝から気になってたけど俺が起こす前に起きてたし、親戚やおかんからいろいろ言われたのになんかいつもより冷静な気がして…それに買い物もいつも悩むのに早いなぁって。」

過去から戻ってきたと言ってしまいたいがふと思い出す、戻ってくる直前脳内に響いた言葉。

ーこのことは誰にも話したらダメ

話したらどうなるかわからない、残りの13回が無くなってしまうのかもしれない、もしかしたら私という存在がなくなるのかもしれない…

「おーい、やっぱ体調悪い?」

彼が不安そうな顔をする。

「あ、ごめん、福袋とか最近は中身わかるから調べてたの。」

その言葉に彼は納得する。

「お肉…美味しいね。」

彼は笑顔になる。

「ほんまな!那智(なち)が当ててくれたからだよ!すごいな、あの中から当たるなんて!」

彼は大袈裟なくらい褒めてくれる。

(そういうところを私は…)

彼の携帯が鳴る。

「あ、ごめん」

彼は携帯を持って部屋から出ていく。


(そうだ、忘れてはいけない。彼との離婚理由を。そう、あの電話の相手は…。)


箸を持つ手に自然と力が入る。

その後はなんとなく彼と話したくなかった。入眠前の準備を全て済ませて無言のままベッドに入る。そして手を組みギュッと力を入れる。


初めましてorお久しぶりです!

もっと早く更新するつもりでしたが私生活が大きく変わり忙しく…今後はなるべく更新頻度を増やしていきたいと思います!ちなみにマンチカンちゃんは元気です!!


今回は現代チックな物語です。ドキドキワクワクというよりはしんみりとした心に響く物語になればと思います!全15話の構成予定となっておりますので最後まで見てくださればと思います!

もうすぐ梅雨の時期ですね…体調崩さないように気をつけてください!こちらは40度の高熱で倒れたばかりなので皆様より気をつけます!


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