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マイアサウラの休日③

 そうして建物の中をしばらく進んで到着した場所は、中央に直径一メートルほどの魔法陣が描かれているだけの小さな部屋だった。


 レキたちを中に引き入れたラミノは、早速検査の説明を始める。


「今回行う検査は、適正の有無を調べるだけの簡易的なものになります。この検査でわかることは、まずそもそも魔法のがあるかどうか。それと、ある場合には白魔法と黒魔法のどちらの適性があるのかということですね」

「――すみません、白魔法と黒魔法というのは……?」


 手を挙げて質問するレキに、ラミノは手慣れた様子で解説を加える。


「召喚魔法のような特殊なものを除けば、魔法というものは白魔法と黒魔法の大きく二種類に分類されます。その中にもさらに細かな分類はありますが、回復魔法をはじめとした味方を支援するものが白魔法で、攻撃魔法や状態異常魔法のように敵に対して使われるものが黒魔法と考えてもらえれば大まかには大丈夫ですよ」


 なるほど、と心のなかで呟きながら、レキはその説明を理解した。つまり適性で言うならばルキアが白魔法で、アリオスが黒魔法ということだ。

 レキはラミノに礼を言うと、先を促した。


「それでは早速検査を始めていきますね。検査を受ける方は、まずこの魔法陣の中に立っていただきます。どなたが先に検査されますか?」

「リーネちゃん、先いいよ」


 先ほどからリーネが興味深そうに説明を聞いていたのを見て、レキは彼女に先を譲る。

 リーネが魔法陣に立つと、ラミノが両手を合わせて魔法を唱えた。


「では始めます――<開光ルーメン>!」


 すると魔法陣に描かれた文様が、リーネの足元で白い輝きを放つ。


「――これって……!」

「ええ、リーネちゃんには白魔法の適性があるみたいね」


 ルキアの言葉にラミノも同意する。


「はい、リーネさんには白魔法の適性が確認できました。適性検査で確認できるこの光の色が、白魔法と黒魔法の名前の由来なんですよ」


 それを聞いたリーネが嬉しそうに笑う。どうやらセリナにもいい土産話ができたようだ。


「それでは検査を終了しますね。――<収束フィニス>!」


 ラミノが再び魔法を唱えると、魔法陣から発せられていた光はすうっと収まっていった。


「次はレキさんですね。魔法陣の上へどうぞ」


 リーネと入れ替わりにレキが魔法陣に立つと、ラミノがまた検査開始の魔法を唱えた。


「――<開光ルーメン>!」


 するとそれと同時に部屋の中の空気が何やら重苦しいものに変わっていく。


「え? ちょっと、何なの……?」


 今まで態度を崩すことのなかったラミノが、初めて戸惑うような声を上げる。

 そしてレキの足元の文様からは、血のように赤い液体のようなものがじくじくと滲み出してきた。やがてそれは魔法陣全体に広がると、まるで意思があるかのように蠢き出す。


「い、いやっ……! フィ……<収束フィニス>!」


 そのあまりに恐ろしげな反応に、ラミノが悲鳴を上げるように魔法を唱える。すると赤い液体は、魔法陣の文様に吸い込まれるようにゆっくりと消えていった。

 それに伴って部屋の様子も平穏を取り戻したが、引き換えにどこか気まずい沈黙がのしかかる。


「えっと……。つまり私の適性は赤魔法だったー、とかそういうことですかね? あはは……」


 レキが冗談めかして言うが、ラミノはすっかり怯えてしまっているようだ。


「あー、あのね。実はこの子、召喚魔法が使えるのよ。もしかして、それが魔法陣に反応しちゃったんじゃないかしら」


 ルキアがそう言ってフォローすると、ラミノは腕を組んで考え込む様子を見せる。


「な、なるほど……。確かに召喚魔法を使える方は、特殊な反応を示すようなことがありますね。それにしたってだいぶ特殊過ぎた気はしますけど……」


 そうして一応は納得した様子のラミノに対して、ルキアが話をそらすように尋ねた。


「ところで、結局レキちゃんの魔法適性はどういうことになるのかしら?」

「そ、そうですね……。この検査でははっきりとしたことはわかりませんでしたが、別の方法で検査すれば判断はできるかもしれません……。詳しい検査を希望されますか?」



 というわけで、レキはいったんルキアとリーネと別れると、そのまま続けての検査を受けることとなった。しかし結局のところ、レキには白魔法と黒魔法に大別される一般的な魔法についての適正はないということが判明する。


「レキちゃんは今のままでも強すぎるくらいだもの。その上に魔法適性まで持っていたら、さすがにそれは恵まれすぎよねぇ」


 ロビーで待っていた二人に検査の結果を伝えると、ルキアがそう言って笑った。

 彼女の言う通り、レキはすでに『剣聖の祝福』と『乗り物召喚』という二つの強力なスキルを持っているのだ。これ以上を望むのは確かに贅沢というものだろう。


 そうして魔術院を後にしたレキたち三人は、その後は普通に街を観光して過ごすなどしてその日を終えることとなった。


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