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マイアサウラの休日②

 明くる日、レキたちは宿で朝食をとりながらこれからの予定について話し合っていた。

 街を発つのは翌々日に鍛冶屋とエルフの店で品物を受け取ってからということになったため、今日と明日は完全にフリーということだ。


「街の中は昨日十分に回ったし、そういうことなら私は鍛錬をしたいかな」


 セリナがそう言うので、残りの二日は彼女を除いた三人で行動することになった。


「セリナさん、なんというか努力家ですよね」


 セリナを見送ったレキがそう呟くと、ルキアが少し複雑そうな顔で応える。


「――そうね。まあ、あの子にも色々あるから」


 どうやらあまり軽々と話せない事情のようなものがあるようだ。それを察したレキが黙っていると、ルキアはすぐに表情を笑顔に切り替えた。


「あっ、そうそう。レキちゃんのこと魔術院に連れて行ってあげるって話してたわねぇ。時間もあるし、行ってみようか?」


 確か魔術院にで調べれば、レキに魔法の適正があるかどうか分かるというという話だったか。そういえば、いつだったかそんなことも話していた。

 レキが了承すると、ルキアはリーネに向き直った。


「リーネちゃんもそれでいい? せっかくだから、一緒に適正調べてみてもいいと思うよ」


 それにはリーネも興味を持ったようで、コクコクと頷いてみせる。そうしてその日はレキたち三人は街の魔術院へと向かうことになった。



 宿を出たレキたちが通りをしばらく進んでいくと、やがて街の中でもひときわ大きな建物の前にたどり着いた。あちらの世界で例えるならば、ちょっとした大学くらいの規模はあるだろうか。建物の外観もどこか学術的な雰囲気が感じられる。


「ここがマイアサウラの魔術院よ」


 入口から中に入ると、そこは広々としたロビーとなっていた。

 高さが取られたアーチ型の天井には高級そうなシャンデリアが吊るされ、美しい装飾が施された石造りの壁や床からは、学院のような厳かさと教会のように神秘的な雰囲気とが感じられる。


「――立派な建物ですねぇ……! これが魔術院ですかぁ……」


 まるでお上りさんのように口を半開きにしながら、レキとリーネはその内装に見入っていた。


「まあ、この街の魔術院はとりわけ規模が大きいからねぇ。ケプスの街なんかだと、さすがに建物はもっと質素よ?」


 そう言って苦笑するルキアの目に、ゾンビのようにフラフラとロビーを歩く男の姿がとまった。


「――って、アリオスじゃない」


 あちらもレキたちに気がついたようで、ふらついた足取りのままこちらに向かってくる。


「よぉ……。なんだぁ、お前たちもきたのか……」


 覇気のないアリオスの顔はなんだか昨日よりもだいぶやつれているようで、目の下にはうっすらと隈が浮かんでいる。


「えっと……。大丈夫ですか……?」

「その様子だと、ずいぶん苦戦してるみたいねぇ」


 二人の言葉を聞いたアリオスが、力なく笑う。


「あれから今までかかって、ようやく火の付与魔法はものにできたところさ……。なぁに、基本的な術式構成は同じだから、残りの三つはそう長くはかからないだろうぜ」


 そうしてアリオスは、やって来たままの足取りで去っていってしまった。院内にある仮眠室のような部屋で少しの間休息をとるらしい。


「――魔法の習得って、大変なんですね……」

「属性の付与魔法って、わりと習得難度が高いみたいだからねぇ。特にアリオスは専業の魔術士じゃないから、なおさら大変ってところかしらぁ

 ルキアはあっけらかんと話すが、それを知ったうえで四属性の習得を押し付けたならばなかなかのスパルタだ。アリオスが渋ったのも理解できる。


「さて、そんなことよりレキちゃんとリーネちゃんの適性検査よ。ちょっと手続きしてくるわね」


 ルキアはそう言ってロビーに並ぶカウンターの一つへ向かうと、やがて青いローブを着た女性を連れてレキたちのところに戻ってきた。先ほどから同じローブを着た人を何人も見かけるので、おそらくはこの魔術院の職員なのだろう。


「マイアサウラ魔術院のラミノと申します。お二人の適性検査を担当させていただきますね」


 そう言ってにこやかに微笑みかけるラミノという職員の案内に従って、レキたち三人は検査が行われる部屋へと向かった。

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