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遺跡に散る紫③

 レキたちは駐屯所を立ち、目的の遺跡を目指し山中を進んでいた。

 巡回のルートとなっているためだろう、山の中とは言え道は比較的歩きやすい。


「レキちゃん、具合はどう?」


 先ほど盛大に醜態を晒したレキの体調を、ルキアが優しく気遣う。


「大丈夫です。だいぶ気分は良くなってきました」


 虚勢ではなく、実際にルキアの体調はだいぶマシになってきていた。こうして静かな山の中を歩いているのは、ハイキングのようで気持ちがいい。

 


 一行がさらに進んでいくと、山道はやがて木々の生い茂る森を抜け開けた場所に出る。

 そこには広々とした高原が広がっており、晴れ渡る天気のおかげで遠くまで見通すことが出来た。


「見えた。あそこだな」


 アリオスが立ち止まって前方を指差す。

 彼が指し示した方角、高原の中央付近に崩れかけた石製の小さな家が点在しているのが遠目からでも見て取れる。ここが目的の集落遺跡で間違いないだろう。

 そして事前に報告を受けていた通り、そこには襤褸切れを纏う紫がかった肌の人型モンスターが徘徊しているのが確認できる。あれがオークで間違いないだろう。


「――もう少し近づきたいわね。できれば全体を見渡せる位置に」

「となると、あそこだな」


 セリナが指した遺跡の右手側は、低木の茂る小高い丘のような地形になっている。確かにあの辺りからならば身を隠しつつ集落全体の様子を窺うことが出来るだろう。


 レキたちは見つからないように迂回しながら目的の場所までたどり着くと、それぞれ木々の陰に身を潜めた。思った通り、ここからなら遺跡全体が見渡せるようだ。


「見える範囲にいるのは十五体――ですかね」

「ああ、そうだな」


 レキとセリナが目視で確認したオークの数は、二日前に兵士が目撃したときよりも少し多い。たまたま建物の外にいる者が多いのか、あるいはその間に数自体が増えたのか。


「ルキア、<真なる眼光(グレーターアイ)>は使えるか?」

「ここからじゃちょっと遠すぎるわね。遺跡全体を索敵範囲に入れるなら、入口近くまで接近する必要があるわ」


 戦闘時にはルキアが索敵のために魔法を使う――意識が怪しかったせいでだいぶ記憶が曖昧だが、そんなことを馬車で聞いていた気がする。おそらく今のはその話だろう。


「まあオークが二十から三十に増えたところで大差ないさ。それで? 今回はどう動く?」


 セリナがルキアに尋ねる。作戦についてはルキアが担当のようだ。


「基本はいつも通りでいきましょう。私が全体を見ながら魔法で支援するから、アリオスは私のそばで向かってきた敵を迎撃してちょうだい。セリナとレキちゃんは遊撃をお願いね」

「遊撃、ということは……」

「とにかく出てきた敵を片っ端から叩いていけばいい、ということさ」


 セリナがそう言って大雑把にまとめる。

 初めての集団戦で複雑な連携を求められても困るだけなので、このシンプルな役割はレキにとっては正直言ってありがたい。


「だからって中衛後衛おれたちから離れすぎるなよ? まあそんなふうに突っ走ることに関しては、俺はレキよりもセリナのほうが心配だけどな」


 なにか心当たりでもあるのだろう、セリナはアリオスの言葉に顔をしかめる。


「はいはい、まだ話は途中よ。次はエルダーオークが出てきた場合だけど、その時はセリナもレキちゃんもアリオスの位置まで下がってちょうだい。エルダーオークといっても、私たち四人で戦うことができればさほど難しい相手じゃないわ」


 そうやってルキアが作戦の概要を説明し終えたところで、アリオスが口を出す。


「ところで、初手はどう打つ? せっかく向こうに気づかれてないんだ、正面から突っ込むだけってのも芸がないんじゃないか?」

「そうね……」


 アリオスの言葉に思案を始めるルキアを見て、レキがすかさず手を挙げる。


「それなら私に任せてくれませんか」


 三人の目線が自分に集まるのを確認すると、レキは詳しい説明を始めた。


「そこの入口の近く、オークが集まっているところに私の――えっと、召喚獣を突撃させます」


 レキの指し示した先、遺跡入口からすぐのところには、ちょっとした広場のように開けている場所があった。そこには四体のオークたちが座り込んでいるのが見える。


「敵の数を減らすという目的もありますが、爆発のような大きな音も出せるはずなので、それで残った敵もかなり混乱させられるんじゃないかと」


 レキの言葉に、ルキアが納得したようにうなづく。


「――そのタイミングで切り込めば有利に戦えそうね。二人もそれでいいかしら?」


 セリナとアリオスも同意したのを見て、レキはつい笑いが漏れそうになる。


(――やったっ! これでオークがハジけるところが見れるっ!)


 レキがこの作戦を提案したのには、もちろん前提として自分なりに有効性あると考えたからということには間違いない。しかし本音としては、それ以上にオークという未知の存在を轢死させたいという欲求に後押しされたからに他ならなかった。

 一度乱戦が始まってしまえば、巨大な乗り物を召喚できるタイミングなどそうそうあるものではないだろう。できるとしたら相手の不意をつける最初の一手しかあるまい。


「それじゃあ配置なんだけど――」


 その後、ルキア主導で作戦の詳細が詰められていった。

 そして一通りの確認が終わったところで、アリオスが三人の前に拳を突き出す。


「よし、今回もやってやろうぜ」


 それにセリナ、ルキアが次々と拳を合わせていく。それを見たレキもおずおずと拳を差し出すと、アリオスたちがにこりと笑いながらそこに拳を合わせてきた。


「さあ、行こうか!」


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