表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/160

魔石の効果

 オフリーの城壁が見えると共に、周囲をうろつく魔獣も目に付いた。


「ハル?!どうしよう?!」

「落ち着いてくれ、リル。何をどうするのだ?」

「ここまで使った壁で囲って殲滅が使えない!」

「確かに、魔力に寄って来ないな」

「なんで?!ハルからは魔力が漏れてるのに!」

「1頭ずつ、仕留めるしかないな」

「それなら城壁の中に行こう!」


 城壁の外には倒れている人影らしき姿も多数見えるが、探知魔法では人間の生存者はいない事が分かる。


「そうだな。城壁の内側なら、建物の中に隠れて助けを待っている人も、まだいるかも知れない」

「うん。まだ無事な人もいるから、中の魔獣から倒そう」

「分かった」


 リルを抱いたままハルが壊れた城門を(くぐ)り抜けると、リルは土魔法で壁を作って、門を閉じた。ハルの魔力を使ってリルは、その壁を限界まで固くする。


「どうするのだ?」

「外から魔獣が入って来ない様に。今度はこっち。ダンジョンから魔獣が出て来ない様にもしなくちゃ」

「分かった」


 リルが案内をしてダンジョンを囲む城壁まで辿り着くと、リルはまたハルの魔力で城壁の高さを高くした。


「上を閉じて蓋をした方が良いのではないか?」

「確かに!天才!」


 リルは高くした壁を絞る様に口を狭めていき、最後には閉じ切った。

 リルは中に人がいる事を感知していたけれど、自力で出てこられないのなら後で助ければ良いと割り切った。


「良し!倒そう!」

「ああ」


 ハルはリルを下ろすと剣を手にする。

 そしてリルが手近な魔獣から倒そうと礫を作ると、ハルが止めた。


「待て!リル!礫を作ると街が壊れる!」

「え?何の事?」

「建物の壁や石畳を原料として礫を作る積もりだろう?」

「もちろんだけど?他に材料ないじゃない」

「しかし」

「あぶない!」


 ハルを襲おうとした魔獣の足下(あしもと)に、リルは土魔法で窪みを作った。魔獣が躓いたところにハルの振った剣が届き、魔獣の顔を切る。リルはハルの腕を潜る様にして魔獣に近付き、その胸をナイフで抉った。

 魔獣から抉り出した魔石を手に、リルはハルを向く。


「ためらってたら私達が危ない!既に魔獣に壊されてる建物もあるし!」

「そうだな。分かった」

「あぶない!」


 またハルが襲われそうになり、リルは思わず手にしていた魔石を礫と間違えて撃ち出す。

 その魔石が魔獣の胸に当たると、魔獣の体が弾けた。

 上半身の消えた魔獣の下半身だけが、石畳の上に倒れ込む。


「今のは?」

「・・・分かんない」

「死ぬとこうなる魔獣ではないのだな?」

「普通のイモンキーだったと思うけど、魔石の所為?」


 また魔獣がハルに襲い掛かるが、ハルはそれを剣で倒し、リルは直ぐさま魔石を取り出した。


「魔石の所為とは?」

「やってみる」


 次の魔獣がハルに襲い掛かろうとするのところに、リルが魔石を撃ち出して胸に当てると、先程と同様に魔獣の上半身が弾け飛ぶ。


「なにこれ?コワっ!」

「どこを狙ったんだ?」

「魔獣の胸の魔石だけど」

「魔石同士を()つけると、弾けるのか?」

「知らない!多くの魔石を一カ所に集めるのは危険って言うけど」

「これまで集めた魔石でもやってみよう」

「こう?」


 リルはバッグから取り出した魔石を握り、ハルを襲おうとしている魔獣に向けて撃った。するとまた魔獣の上半身が弾ける。


「よく見ると、下半身もぐずぐず」


 そう言いながらリルは次の魔石を手に取り、またハルを襲おうとする魔獣を撃って弾けさせた。

 足先で、地面に残った魔獣の肉片を突きながら、リルは次の魔石を用意する。


「魔獣の中の魔力を辿って、体が裂けてるみたい」


 ハルを襲おうとする魔獣にまた、リルは魔石を当てて弾けさせる。


「魔獣の魔力が流れている部分だけを破壊出来ると言う事か?」

「そう見えるわよね?」


 ハルを襲いに来る魔獣が次々と、リルの撃ち出す魔石を受けて弾け飛んでいった。


「それとハル?襲われてない?」

「そうだな。リルには見向きもせずに、私ばかり襲われている様に見える」

「見向きもされないって言い方、ちょっと気になるけど、そうよね?」

「リルが襲われるよりは全然良い」

「まあ、良いや。でもホントにハルばかりね?」

「見ていると、遠くにいた魔獣は私達に気付いて近寄って来るが、途中で目標を私に定めて襲い掛かって来る様だな」

「もしかして、離れてるとハルの魔力に気付かないとか?」

「そんな事がありうるのか?」

「人間も、魔力感知に個人差あるでしょ?」

「いや、魔力や魔法は詳しくないから、分からないが」

「あるのよ。クワイバーンとかミディアとかは遠くの魔力に惹き付けられて王都の方を目指したけど、オフリーに残ってるイモンキーとかモモンキーとかは遠くの魔力は感知出来ないのかも?」

「なるほどな。つまり私が街の中を(くま)無く走り回れば、街に残った魔獣も集める事が出来ると言う事だな」

「そうね」

「良し」


 ハルはリルを抱き上げた。


「走り回るから、リルは倒していってくれ。魔石を当てれば、(とど)めは不要なのだろう?」

「うん!」


 リルは人が魔獣に襲われている様に感じられる場所をハルに教え、二人は魔獣を住民から引き剥がしながら次々と倒していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ