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これくらいなら一緒

 ハルが目を覚ますと、それに気付いたリルが声を掛けた。


「おはよう」

「ああ、おはよう。魔獣はどうだ?」


 ベッドから上半身を起こしながら、ハルはリルに尋ねる。


「そこそこ減ったよ」

「逃げたりはしなかったのか?」


 ハルはベッドから足を下ろして、リルの隣に座った。リルはハルの手を少し握り直す。


「うん。今も土ドームの周りに集まってる」

「追加でも集まって来ていたのか?」

「うん。それで強いのが増えた分、弱いのが大分減った」


 ハルの眉根が寄った。


「強いのが残ったのは、大丈夫なのだろうか?」

「強いって言っても集めても、あの正体不明のよりは魔力量が少ないから」


 口角を上げて答える緊張を感じさせないリルの様子に、ハルもホッと息を吐く。


「そうなのか。1番強いのはどれくらいなのだ?」

「ふふ、1番強いのはハルだよ」


 リルはハルの顔の前で、指を1本立てた。


「ダントツだし」

「あ、いや、そうではなく」


 ハルが誤解を解こうとするのをリルはニヤニヤして見ている。


「集まってる魔獣の中で」

「冗談よ。分かってるから。でも実際に強いのは、イガグリズリーくらいだし」

「うん?」


 またハルの眉根が寄った。


「ウリボアの方が強かったのではないか?」

「ウリボア、いないんだよね」


 リルが肩を竦める。ハルは難しい顔をした。


「そうなのか?」

「うん。逃げたとかじゃなくて、他にもオフリーの魔獣で見てないのもいるし」

「どう言う事なのだろう?誰かが既に、退治をしているのなら良いが」


 声を低くしたハルに、リルが明るく返す。


「そうね。取り敢えず(そと)出て、サクッと倒しちゃおうか?」

「サクッとと言うが、イガグリズリーもダンジョンにいる方が、外で暮らしているものよりは強いのだよな?」


 困り顔のハルにリルは肯いた。


「うん。でも、囲んで動きを止めちゃえば、一緒でしょ?」


 明るい調子のままのリルの様子に、ハルはふっと息を吐く。


「・・・そうだな」

「じゃあ、また魔力ちょうだい」


 リルが繋いだままだった手を持ち上げた。


「ああ」


 ハルは肯いて、リルの手を握る力を少し強める。しかし、リルが勝手に魔力を使うので、ハルから握る分には余り意味はなかった。


「じゃあやるね」


 リルは立ち上がるとハルの手を引いて、ハルもベッドから立たせる。リルは土ドームの中にいるまま、外に集まる魔獣を刃の付いた壁で囲み、柱を生えさせて魔獣達の自由を奪った。


(とど)めはよろしく」

「ああ。だがそう言えばそろそろ、魔石は持ち切れないのではないか?」

「あ、そうね。ハルはまだ運べる?」

「まだ大丈夫だが、追加の箱なり袋なりが必要だ」

「イガグリズリーの皮を加工しよう。ダンジョン産なら大きいし丈夫だから」

「そうか」

「できたらイガグリズリーは、なるべく皮を傷めない様にお願い」

「分かった。そうしよう」

「うん。じゃあドーム、開くよ?」

「ああ、頼む」


 ハルが剣を構えると、リルはベッドを消してから土ドームを開放した。



 倒している間に別の群れもハルの魔力に惹かれて集まって来たが、それらも改めて囲んで倒していった。


「なんか、キリがないね。これくらいならどれだけ来ても、やる事は変わんないけど」

「そうだな。まだ近くにいるのか?」

「分かる範囲にはいない」

「では、先に進むか」

「そう言えば、オフリーに真っ直ぐ向かってるけど、途中の街は大丈夫なのかな?」


 リルが来た道を振り返る。


「街の周囲に、魔獣はもういなかったのだろう?」

「食べ物とか。倒した魔獣は埋めて来ちゃったし」

「・・・それは自分達で何とかして貰わないといけないな」

「いいの?助けないで?」

「スタンピードを止められるのなら、それが優先だ」

「・・・全体での被害の合計を少なくするのね」

「そうだ」

「ハル、偉いよ」


 リルは自分の肩をハルの腕に()つけた。


「うん?」

「色々と考えてるんだろうけど、その決断をしたハルは偉い」


 ハルの腕を両腕で抱きながら、リルはハルの肩に顔を付ける。


「ふっ、そうか。ありがとう」

「どう致しましてと言う事で、先を急ごうか」


 顔を上げて笑顔を向けるリルに、ハルも笑顔を返した。


「そうだな」


 リルはハルから視線を外し、前を見ると片手の拳を突き上げる。


「それでとっとと終わらせよう」

「ああ、そうだな」


 ハルはリルを抱き上げると肉体強化を使い、再びオフリーに向かって走り出した。

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