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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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見知らぬもの

 ウリボアを1頭狩った後のリルとハルは、街道を進んで次の街に辿り着いていた。

 しかし街の城門は閉じられている。この街では前の街とは違って、門の前に人が集まってはいなかった。


「これって、どうしたら良いんだろう?」

「見張りもいないが、門を敲いてみるか?」

「聞こえるのかな?」

「まあ、やるだけやってみて」

「ハル?門を壊すと犯罪者だからね?」

「壊すわけないだろう?」

「だって、ハルが身体強化してたたいたら、一発でしょ?」

「まあ、力は少しずつ込めてみるか?」

「ううん。まず私がたたくよ」


 そんな相談を2人がしていると、城壁の上から門兵が声を掛けた。


「おい、あんたら。今は街に入れないぞ」


 リルとハルは門兵を見上げる。リルが尋ねた。


「何かあったんですか?」

「何かって、この先が通行止めで、足留めされた人が街中に溢れてるんだ」

「この街もか?」


 ハルの質問に門兵は首を振る。


「いや、他の街は知らんが、そうなのか?」

「ああ」

「隣の街もそうでしたよ」

「門の外まで人が溢れてたな」

「そうなのか?ここでもそうだったんだが、近くに魔獣が出て、入れられるだけ入れてるから、もうあんたらは入れられないんだ」


 門兵は済まなそうな顔をした。


「魔獣って、ウリボアですか?」

「ウリボア?いや、魔獣の事は良く知らんが、そのウリボアってのは良く出る魔獣なのか?」

「ウリボアなら来る途中で狩ったから」

「狩った?あんたらが?」

「夫が一撃で」

「妻の罠のお陰だがな」


 リルが夫と呼んでまたハルを赤くさせようとしたけれど、今回はハルも直ぐにリルを妻と呼んで反撃をした。しかしどちらも効果は今ひとつだ。


「私の罠なんて、なくても大丈夫だったじゃない」

「その様な事はないし、狩る事が出来たのは、リルの作戦のお陰だ」

「ううん。ハルの魔法の威力があれば、ウリボアなんて一撃よ」

「いいや、リルの知識があってこそだ」

「あんたら、そんなところでいちゃいちゃするのは、どうかと思うぞ?」


 2人がお互いを照れさせようとしあっていたが、それを門兵が呆れた口調で窘める。

 2人も今は門を開けて貰うのが先だと考え直して、門兵に顔を向けた。


「取り敢えず、魔獣は倒したから、門を開けて貰えない?」

「いや、もう人が一杯だって」

「だが、魔獣は倒したぞ?」

「そうよ。街から出て行く人もいるんじゃない?」

「あんたらが倒したのがホントでも、他にもいるかも知れんだろ?」

「捜しながら来たけど、他にはいなかったわよ?」

「いや、ダメだ。門を開けないように言われてる。誰か来ても追い返せとの命令なんだ」

「それならば、その命令をした者を呼んで来てくれ」

「いや、誰を呼んでもおんなじだよ。食べ物も足りなくなってるから、あんたらを入れる事は出来ないんだ。悪いけど、他の街に行ってくれ」

「食べ物なら、ウリボアの肉はどうだ?」

「魔獣の肉を食べろって言うのか?」

「あれ?食べないの?」

「高級品だろ?馴染みはないけど、持ってるのか?」

「ううん。ほとんど置いてきた」

「取りに行くなら案内するが」

「う~ん?そう言う事なら、上司に聞いて来るから、待っててくれるか?」

「ええ。良いよね?」

「ああ」

「じゃあ、ちょっと待っててくれ!よろしく!」


 そう言うと門兵は姿を城壁の陰に隠した。


「もう少し、運んで来てやれば良かったな」

「そうね。でも、食料が足りないなんて知らなかったし、余分に運んでも傷んじゃうからね」

「乾燥させるのはどうだ?薪を乾燥させる様に」

「干し肉みたいに?魔法で?」

「ああ。重さも減るし、日保ちもするんじゃないか?」

「そうね。いつも納品するかその場で食べるかだったからやった事なかったけれど、そうすれば良いのか」

「それなら予め戻って、乾燥しておくか?」

「案内は?」

「俺が戻っておくから、いや、俺がいないところでリルが他の男といるのはないな」

「そんなヤキモチ、初めて会った人に、気持ちを許したりしないよ?」

「会った事がある男が出て来るかも知れない」

「え~」

「それにリルが気持ちを許す許さないに関わらず、俺が良い気持ちがしないのだ」

「そんなに執着されるほどの価値、」

「だからヤキモチだ。もちろんリルと言う存在は俺にとって何ものにも代え難い価値がある事は知っていて欲しいが、それがどうこうではなくて、単なるヤキモチだ」


 正面からそう言われ、リルはハルから視線を逸らし俯く。

 顔を少しずつ赤らめていたけれど不意に、リルは顔を上げて遠くを見た。釣られてハルもそちらを見る。


「あれは、なんだ?」

「見える?」

「ああ、クワイバーンとは違う何かが飛んでいる」


 リルは道端の木から枝を折りって杖として、空を飛ぶ何かに向けて構えた。


「なにあれ?」

「知らないのか?魔獣ではない?」

「ううん。魔獣だと思うけど、見た事ない。魔力の感じも知らない」

「どちらにしろ、放ってはおけないな」

「もしかして、ウリボアの肉を狙ってる?」

「魔石を抜いたから、それほど魔力は残ってないのではないのか?」

「そうね・・・まさか、この街を?」

「倒せるか?」

「分かんない。初めて見るし、私が知ってるダンジョンの魔獣より強そう」

「俺よりはどうだ?」

「え?そりゃあ魔力だけならハルの方が上だけど」

「なら倒そう」

「でもどんな攻撃をして来るか、分かんないよ?」

「攻撃される前に倒せば良い」

「なに言ってんの?」


 リルが振り向くと、真剣な表情のハルと目が会った。

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