うだうだうだ
「リル」
「・・・なに?」
「私はリルの事が好きだ」
「・・・それで?」
「リルが望むなら、真逆の人間になる努力もしよう」
「・・・そんなの、いらないから」
「それならリルはどうなのだ?その好きな人物の為に、自分を変えたりは出来ないのか?」
「変えたくても変えられないわよ」
「それはつまり、それほど好きではないと言う事か?」
「・・・そうかもね」
「そうか・・・それならその相手を止めて、私を好きになって貰う事も可能だな?」
「え?」
「私はリルと結婚をしたい」
「だから、ムリでしょ?」
「その為には、私はどの様な努力もしよう。何度も告げたが、立場を捨てても良い」
「そんな責任放棄、ダメだから」
「いいや、大丈夫だ。だが、それを君の所為だと思わないで欲しい。君の所為ではない。責任放棄も、努力も、君の為ではなく、私の為だ。良いか?私の為なのだ。何故なら私には、リルとの将来が必要だからなのだ」
「だから、私じゃダメなんだってば」
「ああ。今は駄目なのだろう?だから先ずは、リルが自分を変えても構わないと思うくらい、リルに私の事を好きになって貰う」
「・・・なによそれ」
「そしてそれを達成出来るまで、リルに好かれる為の努力を私は行おう」
「そんなの、いらないってば」
「リルから見たら不要かも知れないが、私に取ってはリルに好きになって貰う為の努力は、私の人生には必要なのだ」
「・・・そう」
「ああ、そうだとも」
「勝手にすれば?」
「そしてその為には、王都行きは不要だ」
「え?なんで?」
「リルは王都には行かないのだろう?」
「ハルは王都でお父さんが待ってるんでしょ?」
「待っている人間がいるとしたら父だけだと言う事だ。何度も言ったが、父も私が死んだと思い、待ってはいない筈だ」
「そんなのダメだよ!生きてるんだよ?!生きてるんだから、帰って上げないと!」
「私が王都に行くなら、リルも一緒だ」
「・・・それで、ハルが結婚する所を見てろって言うの?」
「私が結婚するのはリルだ」
「私を第二夫人にするって事?」
「第二夫人の訳がないだろう?」
「第三?第四?」
「私の妻はリル、君一人だ」
「でも、跡継ぎが必要なんでしょ?」
「リルが子供が欲しくないのなら、産まなくて構わない。子供が嫌いだと言うのなら、養子を取ったりもしない」
「そう言う事じゃなくて」
「子供を産めと言うプレッシャーからもリルを守る。跡継ぎは作らないと宣言をして、跡は弟に譲っても良い」
「ダメよ」
「それなら、弟の子供に譲るのならどうだ?」
「ダメに決まってるでしょ?だってハルは、正妻に子供が出来なかったから生まれる事が出来たんでしょ?」
「うん?・・・それはそうだが、それが?」
「だったらハルも、跡継ぎを作らなくちゃダメじゃない」
「・・・リルがそう言うのなら、そうしよう。しかし、私の子を産むのはリルでなくてはならないぞ?」
「そんなの、決まってないでしょ?」
「いいや。私の中では決まっている」
「そんなの、だって、まだ好きになったばかりで、子供の事なんて考えられないわよ」
「それはその通りなのだが、私はリル以外と結婚をする気はない。もしリルが結婚してからも、私との間に清い関係を望むのならそれでも良い。そしてその場合にも、第二夫人もそれ以降も、私には不要だ。もちろん他の女性と男女の関係になるなど、絶対に嫌だ。有り得ない。しかしその代わり、リルにも私以外の男性と関係を持つ事は許せない」
「・・・でもハルが意図しなくても、ハレンチな状況になって、私と離婚して、お相手と結婚するかも知れないんでしょ?」
「リルと片時も離れなければ、その様な事は起こらないが」
「え?それはちょっと」
「ああ。それなので対策の選択肢としては、私が平民になるか、この国を出るか、法律を変えるか」
「え?習慣じゃなくて、法律で決まってるの?」
「ああ。王族や貴族向けの法律があるのだ。まあ、元々の習慣を明文化したらしいのだが」
「でも選択肢、どれも現実的ではないわよね?」
「どれもリルの好意を手に入れるよりは、簡単だと思うが」
「え?私・・・そんな恋愛ベタに見える?」
「いや。私が恋愛初心者なのだ。これまで女性を異性として好きになった事がないのだから」
「それは、私も同じだけど」
リルは俯いてそう呟いた。




