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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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うだうだ

「リル」

「なに?」


 リルは、微笑み掛けるハルを睨んだ。


「怒らせたのは申し訳ないが」

「怒ってないわ。不愉快なだけ」

「そうか。どちらにしても申し訳なかったが、ここで謝ったり言い訳をしたりするとまた、話が逸れると思うから、先ずは私の話を聞いて貰えないだろうか?」

「話って?聞いてたじゃない?」

「ああ。だが、私は話をする順序を間違えた様だ」


 そう言うとハルはベンチから立ち上がり、リルの足下に膝を突いた。そして片手を胸に当て、もう一方の手でリルの片手の指を掬う。


「リル。私と結婚をしてくれ」

「・・・ムリよ」

「いいや。私はリルの御両親を尊敬しているが、それはそもそもリルを尊敬しているからなのだ」

「私を尊敬?なんで?」

「何でなのかは後で説明する。私の回りには、尊敬に値すると私が思う女性はいなかった」

「え?なんで?」

「何故だろうな。他の男性達はそう言う女性達と恋愛をしていたから、私の回りでは私の方が異常だったのかも知れない」

「確かに」

「確かに?リルもそう思うのか?」

「え?って言うか違くて、確かに変わってるけど、それがハルの回りと比べてどうかは分かんないけど、確かに私とは違うけどって言いたかったの。それだけ」

「そうか」

「ごめん」

「あ、いや、気にしてはいないから」

「ううん違くて、私が口を挟むと、確かに話が逸れるなって。だから、ごめんね?続けて」

「ああ・・・それで・・・そうそう。私の回りには、私が尊敬出来る女性はいなかったと言ったが、それは同世代の場合かも知れない」

「そうなのっとごめん。続けて」

「ああ。ただし、リルにしばしば指摘を受ける、女性の立場が弱いからとは関係なく、同世代の男性にも尊敬に値する人物はいなかったのだ」

「同世代って、続けて」

「うん?何か訊きたいのか?」

「後で訊くから。たびたびごめんだけど、どうぞ続けて」

「ああ・・・それで、誰も彼も、私に近付いて来る様な女性達とは、一緒にいるのが私には苦痛でしかなかったのだ」

「そうなの?」

「ああ。だがリルは違う。一緒にいると心が安らぐ。リルの笑顔を見れば楽しい気持ちになるのは当たり前なのかも知れないが、リルの拗ねた顔も怒った顔も、私には愛おしい」

「え?怒った顔も?」

「ああ・・・リルを見ていると私は幸せになる。それなので、リルも幸せにしたいと思ったのだ」

「そう」

「ああ。それなのでリル?私と結婚をしてくれないだろうか?」

「答えは分かってるでしょ?私はハルと結婚は出来ないから」

「何故だ?リルは婚約者はいないのだろう?」

「それは、うん」

「今現在、結婚もしていないのだよな?」

「うん」

「恋人もいないと言っていたな?」

「うん。いないけど」

「けど?けどと言うのは、好きな人ならいるのだろうか?」

「・・・いるって言ったら?」

「もちろん、リルに私を選んで貰える様に、その人物に負けない様な人間に私はなってみせる」

「・・・ハルと真逆な人だったら?」

「真逆?私の真逆とは?とても優しいとかだろうか?」

「ハルは優しいじゃない」

「何?そうするとリルは、優しくない人の事が好きなのか?」

「優しくない人ってどんな人?好きになれるとは思えないけど?」

「それではリルの好きな人物は、優しいのだろうか?」

「うん。優しいと思う」

「それなら真逆とは?・・・難しいな・・・外見か?」

「外見?」

「ああ。瞳や髪の色とか?」

「え?それはハルの世界でしょ?髪や目や肌の色で、好きになったりしてないけど?」

「そうか。それなら身長とか体重とか、体型だろうか?太いとか細いとか筋肉量が多いとか」

「外見がゼロではないけど、確かにヒゲを伸ばしてたら直ぐには好きにならないかも知れないし、でも、そう言う外見で好きになった訳ではないから」

「顔もだろうか?」

「顔?」

「整った顔の方が女性には好まれるのだろう?」

「確かにイケメンだけど」

「イケメン?良い顔と言う意味だな?」

「顔で言うならね」

「そうか。つまりリルから見ると、私の顔はイケてはいないと言う事か」

「だから!顔で好きになったんじゃないし」

「うん?そうか。では、剣を苦手とするとか?」

「剣が苦手でも好きになるかも知れないけれど、剣が苦手だから好きってならなくない?」

「いや、そうは思うが、女性の気持ちは分からないし」

「そうでしょうね?でも、私も女性だからね?」

「うん?それは、知っているが?改めてそう言ったのは、どう言う意味なのだ?」

「私の気持ちも分からないって事だよね?」

「リルの気持ちは確かに分かっているとは言えないが、知りたいと思うし、理解する必要も感じている」

「なにそれ?」

「いや、変だろうか?」

「色々と変よ」

「まあ、私の事は良い。リルの好きな人物に付いてだ。あ?リル?」

「うん?なに?」

「リルはその人物が好きなのだな?」

「・・・そうね」

「その人物が好きだと言うのは、人間として、とかの意味だろうか?それとも男性として・・・リルが好きだと言う人物は男性か?」

「・・・いま、結婚の話をしてたでしょ?」

「ああ」

「そんな時に、人として好きだとか、結婚できないけど愛してるとか、それなら最初にそう言うわよ」

「と言う事は、異性として愛してるのか?」

「愛してるとか、良く分からないけれど、異性として・・・好きよ」

「リルはその人物との結婚を考えているのか?」

「だから!結婚は出来ないって言ってるでしょ!」

「・・・どう言う事だ?結婚できないなら、最初にそう言うと言っていなかったか?」

「・・・だから、最初からそう言ってるじゃない」


 リルは囁く様にそう言った。

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