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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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礫とおはじき

 男はベンチを材料に土魔法で鏃を作ると、それをリルに見せる。


「礫とは、この様なものだろうか?」


 リルは鏃を見て「ううん」と首を左右に振ると、同じ様にベンチを材料にして雫型の礫を作ってみせた。


「私が使うのはこんなの」


 そう言って手渡された礫を見て、男は首を捻る。


「変わった形なのだな」

「魔力の消費が少ないのよ」

「この形だと?そうなのか?」

「うん」


 肯くリルから視線を落として、男は手の中の鏃と礫を見比べた。そして鏃を雫型に作り直す。


「消費が少ないのか」

「ね?」

「あ、いや、全然分からない」


 そう言うと男は、鏃に戻したり雫型に変えたりを繰り返した。


「やはり分からないな」

「そう?」


 リルも真似して、雫型と鏃に交互に変形してみる。


「確かに少しの差だから、あなたには分かんないかもね?」

「繊細さが足りないと言う事か」

「あれだけ魔力容量が多ければ、こんなの分かんないから。こんなの誤差よ」


 そう言ってリルは肩を竦めた。

 男はしばらく礫と鏃を見比べていたが、顔を上げてリルに尋ねる。


「この礫を投げて見ても良いか?」

「ここで?筋力強化したら、大変な事になるからダメよ?」


 そう言いながらリルは、壁に魔法で的を描いた。


「この周りなら壁を脆くしたから、筋力強化しなければ、破片が出来てもそんなに跳ね返らないと思う」

「分かった。ありがとう」


 そう言って男は、まず礫を投げる。礫は砕けずに壁にめり込んだ。続いて鏃も同じ様に投げて、壁にめり込ませる。

 男は壁に近寄ってその結果を確認すると、リルを振り向いた。


「君が礫を投げる時は、筋力強化をするのだな?」

「え?ううん。違うけど?」

「え?投げてみて貰って良いか?」

「狩りをする時は、別の魔法を使ってるけど。私はね?」

「そうなのか。どの様な?」

「力魔法ってやつ」

「見せて欲しい」

「そうね。こんな感じ」


 リルは礫を壁に向けて下手投げで投げたけれど、礫はリルの手を離れた瞬間に、腕の振りの速さより速い速度になった。


「今のが力魔法?」

「うん」

「どうやっているのだ?力と言っても、筋力強化とは違うのだよな?」

「うん」


 そう言うとリルはベンチに座り、おはじきを2つ作ってテーブルの上に置いた。


「それは?」

「おはじき。子供の遊び道具だけど、知らない?こうやって弾いて()つけ合ったりするの」


 リルは一方のおはじきを指で弾いて、もう一方に打つける。


「石を投げたり、こうやって弾いたりする時って、腕や指の力を使ってるでしょ?」

「そうだな」

「で、その力を魔法で出すとこんな感じ」


 そう言うとリルはおはじきに触れずに手を翳し、魔法で弾いておはじき同士を打つけてみせた。


「なるほど。その力魔法も教えて貰えないだろうか?」

「外に出たらね」

「・・・私が加減出来なかったら、危険だと言う事か」

「うん」

「先程の壁の様に、的を作っても?」

「探知魔法を使ってあなたの筋力は分かってるから、壁を的にしたけど、あなたの魔力は良く分かんないから、いきなり大惨事が起こるかも知れないでしょ?」

「そう言われたら諦めるしかないのかも知れないが、礫をとても小さくして脆くしてみるのはどうだろう?」

「粉々になった礫の粉を吸ったりしたら、体に毒よ?」

「・・・なるほど。諦めるしかないな」

「うん。外に出れる様になったら、色々教えるから」

「そうだな。分かった。楽しみに待つとしよう」

「うん、そうして」


 そう言うと男はテーブルの上に視線を落とし、おはじきを指で弾いてみた。リルはもう一つのおはじきを弾いて、男の弾いたおはじきに打つける。打つけられて動いたおはじきを男がもう一つに打つけると、リルも打つけ返し、2人はしばらく打つけ合いを続けた。



「しかし、私はそろそろ外に出ても良いのではないか?筋肉も戻って来たし、筋力強化もかなり使い熟せる様になった」


 男は自分で土魔法を使って剣を作り、素振りをしながら筋力強化を使う練習もしている。


「そうね。逸れた時を考えて、魔力漏れがなくなったらって思ってたけど、ポーションを使えば魔力切れは心配しなくて良いんだもんね」

「そうだったのか・・・しかし、いつまでも君を拘束して置くわけにもいかない」

「別に急ぐ旅じゃないから構わないけど?」

「だが、もうかなりの時間、君をここに(とど)めてしまっているではないか?」

「私が好きでそうしてるんだから、気にしなくて良いから」

「・・・君はそう言ってくれるが、やはり」

「別れたら、私の事を忘れてくれるんでしょ?」

「それは、そうだが」

「だから、私の事は気にしなくて良いじゃない。でも、考えてみたら、あなたの都合もあるもんね」

「いや、まあ、なくはないが」


 リルは指先でおはじきを小さく弾く。


「力魔法、試してみる?」

「え?外に出て良いと言う事だろうか?」

「ううん、この中で。安全を計算して。それで力魔法で礫を打てれば、あなたが外に出て危険に遭っても、問題なく乗り切れる様になると思うんだけど、どう?」


 真面目な顔のリルに、男は真剣な表情で「是非、教えて欲しい」と返した。


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