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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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魔法を覚えるには

「私に魔法を教えて貰えないだろうか?」


 男の言葉にリルは「ううん」と首を左右に振った。


「覚えるなら、ちゃんと習った方が良いと思う」

「ちゃんと?君では駄目なのか?」

「あなたの思ってるのって、杖を使っての魔法でしょ?」

「ああ、そうだ」

「私、見て覚えたから、かなり自己流で」

「習ったのではないのか?」

「うん。火魔法だけは習ったんだけど、使えないし」

「え?習ったのに使えないのか?」

「うん。火魔法は見て覚えられなかったから、お金払って習ったんだけど、全然ダメだった」

「君でも使えない魔法があるのだな」

「それはそうよ」

「いや、だが、肉を焼いているではないか?」

「え?うん」

「詰まり君は、杖を使わなければ、火魔法も使えると言う事だな?」

「あ~、あれは熱魔法って言って、光魔法の仲間なのよ」

「熱魔法?」

「うん。太陽の光って、温かいでしょ?」

「ああ、そうだな」

「でも、今ここの壁は光魔法で光らせてるけど、壁自体が温かい訳ではないでしょ?」

「そうだな。ちょうど良い室温ではあるが」

「室温は空気を温度魔法で調整してるから」

「ほう、そうなのか」

「うん。それでね?壁の光には太陽の光の温かくなる成分は入れてないの」

「ほう?」

「私達に明るく感じる光だけを出させてる」

「それは何故?」

「室温調節を簡単にするのと、魔力を節約する為ね。太陽を浴びると日焼けするけど、日焼けする成分もここの光には入ってない。それも節約の為でもある」

「そうなのか。肉を焼く時には、その熱を出す光を使っているのか」

「大まかに言うとね」

「だがそれは、火魔法とは違うのだな?」

「うん。全然違う」

「君は光魔法や熱魔法も、杖を使っても使えるのか?」

「うん。使える」

「杖なしで使える魔法も習ったのか?それとも見て覚えたのか?」

「習ったのも見て覚えたのもあるけど」

「それなら習ったのを教えて貰うのでも良いのだが、どうだろう?」

「え?マイナーだし、習得に時間が掛かるわよ?杖を使った方が簡単に覚えられるらしいけど?」

「そうなのか?だが君は、杖なしで覚えたのだな?」

「まあ、杖を持ってない内に、母の魔法を見て覚えたら、色々と教わる様になったから」


 男はリルの両親の話や子供の頃の話を聞かない様に気を付けていた筈なのだが、魔法を習う事に意識が集中してしまい、本来なら()けたであろう質問をしてしまった。

 男はリルの言葉にただ「そうか」とだけ返す。

 しかしリルは気にした素振(そぶ)りもなく、話を続けた。


「杖で習う時って、まずは呪文を唱えるでしょ?正しく唱えれば魔法は直ぐ使える。素質があればだけどね?」

「つまり魔法を習うと言うのは、素質があるなら呪文を覚えるだけと言う事か」

「うん」

「練習とかは不要なのだな?」

「向かない魔法も練習で使える様になるらしいけど、全く素質がないといくら練習してもダメらしい。私の火魔法みたいに」

「それだと、魔法が使えなくても、素質がないのか練習が足りないのか、分からないのではないか?」

「両親が使ってなかったら、素質がないって思って良いと思う」

「そうなのか?」

「魔法の才能って両親から半分ずつ貰うから。魔力の波を見ると、両親から何を受け継いだのか、大体分かるし」

「そうなのか?」

「うん。ちなみにあなたには、かなりの才能があると思う」

「・・・しかし私は魔力がないと言われて育ったのだ」

「何らかの事情があって、ご両親があなたの才能を隠したかったとか?」

「考えにくいが・・・うん?私に魔力があるとか才能があるとか、君には分かるのだな?」

「うん。あなたの魔力容量については、まだ分かんないけど」

「君に私の事が分かるのは、君が特別な魔法を使えるからなのか?それとも、他の人でも分かるものなのか?」

「特別ではないから、見る人が見れば分かると思うけど?」

「杖を使っていても?」

「うん。多分、もちろん」

「それなら詰まり、君に火魔法を教えた人は、君に火魔法の才能があると思っていたと言う事だな?」

「え?どうだろう?」

「どうだろうって、才能がないのに教えたりはしないだろう?」

「お金さえ貰えば、才能があろうがなかろうが、教えるわよ」

「才能がないって分かっていてもなのか?」

「才能がないって分かっていても、収入になるし」

「それは、倫理的に良いのか?」

「倫理とか大袈裟だと思うけど、最初に言われるもの。努力もせずに出来なかったからお金を返せと言われても返さないって。あまり才能がない人に、あなたは時間が掛かるなんて言ったら、じゃあやらないってなるでしょ?だから才能あるなしは、見ない様にしてるんじゃないかな?」

「そうすると君にも実は、火魔法が使えるのかも知れない」

「でも、倍の練習をすれば使えたとしても、それは詰まりあまり才能がないって事で、ダンジョン探索や魔獣狩りで使うには、実用にならないって事だから」

「・・・そうか。君は冒険者だったな」


 低くなった男の声に釣られて、リルも低く「ええ」と返す。

 しかしリルは笑顔を作って、男に向けた。


「でも考えてみたら、あなたに火魔法を教える事は出来るかも?呪文は覚えてるし」

「ああ、そうか。そうだな」

「杖を作って試してみる?」

「そうだな。是非教えて欲しい」


 そう言うと男も明るい表情をリルに返した。


「じゃあ杖に見合う素材を見付けて、ここを出たらね」

「え?直ぐには駄目なのか?」

「ダメよ。あなたの魔法がどんな威力になるか分からないから。水辺で試しましょう」

「いや、確かにそうだ。確かにそうなのだが、ここで私に覚えられる魔法はないだろうか?杖がなくても良いもので」

「う~ん?清浄魔法?」

「君が毎日掛けてくれる魔法だな」

「うん。使える?」

「使える?使えるとは?」

「これだけ毎日掛けてるし、覚えられるならもう覚えてると思うけど、どう?」

「え?どうって、教えては貰えないのか?」

「教えるとしても、どうやったら良いんだろう?」

「いや、しかし、君は習った訳ではないのか?」

「うん。これは清浄魔法よって言われて、掛けてるのを見たり掛けられたりして」

「・・・そうか。見て覚えると言うのは、そう言う事なのか」

「うん。うん?うん」


 その後男は、リルに一応の解説をして貰いながら、清浄魔法を受けた。

 しかし、何を手掛かりにして覚えれば良いのか、男にもリルにも分からなかった。

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