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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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それから【傍話】

「なあハニー?これ、君がいたパーティーの事じゃないか?」

「アタシがいたパーティー?・・・確かに『輝きの光』なんて名前を付けるヤツは他にいないだろうけど」

「この聖女って?」

「確かにパーティーにはリルってヒーラーがいたけど、リルなんて名前はありふれてるから、別人だよ」

「いや、だけど、ハニーの話だとリーダーってのは、かなりな駄目男だったんだろう?そのパーティーに聖女って呼ばれる様な人が新たに参加するかい?」

「そう言われたらそうだけど、私の知ってるリルは、駄目リーダーのパーティーに相応しい駄目ヒーラーだからね」

「そうしたら、『輝きの光』って言う別のパーティーがあるって事か?」

「聖女って元王妃もそうだったんだろう?そのリルがアタシの知ってるリルでもそうじゃなくても、政治絡みで聖女って呼ばれてるんだろうから、関わらないほうが良いよ」

「まあ、そうだな」

「そうさ。どっちにしろ、アタシ達には関係ない話さ」



「なあ?リルちゃんの話、聞いたか?」

「俺のリルちゃん」

「俺の天使」

「ああ、聞いた」

「俺の聖女」

「お前、()めろよ」

「ホントに聖女だったんだってな」

「オフリーにいたヤツがスタンピードの時に見掛けたって」

「らしいな。1人で魔獣を倒したって」

「2人でだろう?」

「あ、そうだ。2人でだったな」

「その後、王都も救ったって」

「王宮で倒壊があった時も、大勢を助けたらしいな」

「やっぱり聖女だったんだな」

「サインとか、貰っとけば良かった」

「俺、ケガを治して貰った事あるんだけど、覚えててくれてるかな?」

「無理だろう?」

「でも1回デートしてくれたんだぞ?」

「でもそれ、大勢いるから、忘れられてるだろう?俺もだし」

「俺もだ」

「俺も」

「たとえ覚えていてくれても、もう雲の上の人だからな」

「もう会えないかもな」

「遠くからでも見掛けられたらラッキーだけどな」

「リルちゃん、遠くなっちゃったな」

「ああ。俺の天使」

「俺の女神」

「俺の聖女」

「おい?ホント、()めとけって。そんな言葉、誰かに聞かれたら処罰されるからな?」

「そうだぞ?リルちゃんは聖女でも、そのお相手には気を付けないとだぞ?」



「この話、あんたが前にいたパーティーの事じゃないか?」

「前にいた?・・・確かにそうだな」

「このリルって、どんな人だったんだ?」

「いや。私が『輝きの光』に参加したのは、彼女が辞めたのと入れ違いだったのだ。街で擦れ違った事はあるかも知れないが、どの様な人物かに付いては直接は知らないな」

「そうなのか?オフリーだろう?確かオフリーで聖女の噂があったよな?」

「いや、その聖女は領主の娘だと言う話だったから・・・もしかしたら領主の養女になったのかも知れないか」

「そうなのか?」

「分からないが、貴方もオフリーのポーションは知っているだろう?」

「あの奇跡のポーションだな?」

「そうだ。それを作っていたのが、そのリルと言う少女らしい」

「そうなのか?凄いな。紹介してくれよ」

「いや、だから、私は面識がないのだ」

「だったら元のパーティーメンバーを頼れば良いんじゃないか?」

「普通ならそうだが」

「普通なら?」

「リルと言う少女は権力を持った様だから、私は近付かない事にしておこう。ろくな事にはならなそうだ」

「そうなのか?もったいないな」

「いいや、良いのだ。下手に関わると、それこそ人生を棒に振って、もったいない生涯を送る事になるからな」



「ねえねえ?リルってどんな子だったの?」

「可愛かった?」

「やっぱり魔法が凄かったの?」

「いいや。キミらの方がリルの何倍も可愛いし、リルの魔法よりキミらの魅力の方が何倍も強力だよ」

「も~」

「またまた~」

「おだてたって、おつまみくらいしか出ないわよ?」

「いやいや、ホントだって。僕はウソをつけないから」

「え~?」

「ホント~?」

「ホントでもウソでも良いから、コイツの相手なんかしてないで、ほら、お客が来たから、さっさと稼いでおいで」

「は~い」

「またね~」

「後でね~」

「ああ、待ってるよ」

「待ってるよじゃないよ。お前はさっさと帰んな」

「酷いな、客に対して」

「客ってのはお金を払うもんなんだよ。客扱いして欲しけりゃ、先ずはツケを払いな」

「だから今はちょっとケガしてて、ダンジョンに入れないんだってば」

「ポーションを惜しむ程度のケガなんだろう?怠けた事を言ってんじゃないよ」

「いや、感覚が変わると危ないんだってば」

「言い訳は良いから。クランの名前でツケが出来るったって、限界はあるんだからね?」

「分かってるよ。はあ。パーティー払いに出来た昔が懐かしいけど、このリルってホントにあのリルなのか?」



「ねえねえ先生?このリルってホントに先生の仲間だったの?」

「おんなじパーティーにいたってホント?」

「ホントよ」

「すごい!」

「聖女様と一緒だったなんて!」

「先生すごい!」

「すごいでしょう?そのリルってなんにも出来なくて、私が助けて上げてたんだから」

「「「先生すご~い!」」」

「ねえねえ先生?私も聖女様になれる?」

「私もなりたい!」

「私も!」

「そうね。魔法の勉強をもっとがんばれば、なれるかもね」

「ホント?!」

「ホントよ。だってノロマでもたもたばかりしてたリルが聖女になれるんだもの。みんなだったら聖女になるのなんて簡単よ」

「ねえ先生?お父さんとお母さんがいなくても?」

「捨て子でも?」

「リルもお父さんとお母さんがいないし、私だっていないもの」

「みなしごでもいいの?」

「もちろんよ」

「なら私、聖女様になる!」

「私も聖女様になりたい!」

「私も魔法、いっぱいがんばる!」

「私も!」

「私は先生みたいな先生になる!そしてみんなを聖女様にしてあげるの!」

「そう?それならやっぱり、もっと勉強しなくちゃね」

「うん!がんばる!」

「じゃあ、今日も練習をがんばりましょう」

「「「はーい」」」



「なんで付いてくんだよ!」

「それはこっちのセリフだ」

「そうですよ。2人とも付いて来ないで下さい。縁起悪い」

「縁起悪いだと!」

「お前こそだ。マゴコロ商会に捜査が入ったからお前は追われてんだろう?」

「スルリの所為なのか!」

「私だけの筈がないでしょう?あなた達が国王の前でちゃんとしなかったから、追われてるんじゃないですか」

「いい加減だったのはオマエもじゃないか!」

「その上、マゴコロ商会の件で取り調べ対象になりやがって」

「それは2人も一緒でしょう?」

「俺はパーティーがマゴコロ商会に買収されてただけじゃないか!」

「俺はほんの一時期、マゴコロ商会との取り引きがあっただけだ」

「そう思うんなら2人はさっさと捕まれば良いじゃないですか」

「そんな訳に行くか!」

「そうだ。どんな罪を着せられるか分かったもんじゃない」

「それもこれも!リルが聖女になんか成った所為だ!」

「そうだな。俺からポーションの作り方を教わった恩も、ポーションを買い上げてやってた恩も忘れやがって」

「パーティーに入れてやった恩も忘れて!誘いを断りやがって!」

「1人で好い目を見やがって」

「その通りだ!スルリ!オマエもなんか言ってやれ!」

「なんで離れて行くんだ?」

「今やリルは国の重要人物なのに、それをこんな人通りのあるところで堂々と批判するあなた達と、一緒にいられる訳はないじゃないですか」

「なに言ってんだ。オマエだって酒飲みながら、過激な事を言っていたじゃないか」

「そうだ!酷い事を言ってた!みなさん!コイツは聖女様を!」

「なにバカ言ってるんですか?」

「おい!あれ!追っ手じゃないのか?!」

「ほら!あなた達がリルの悪口なんて言うから」

「コイツが大声を出したからだ」

「いいや!そもそもスルリがリルを追い出したからだ!」

「またその話ですか!」

「おい!いいから逃げるぞ!」

「待てよ!」

「待って下さい!」

「さっさとしろ!置いてくぞ!」



「姉上!」

「もうあなたの姉ではありません。そう呼ぶのは()めて下さい」

「そんな冷たい!中に入れて下さい!姉上!」

「あなたはもう我が家とは関係がないのです。お母様と一緒に新しい本当のお父様のところに行きなさい」

「私の本当の父上は父上だけです!」

「お母様も相手の方も認めたのです」

「でも!私を追い出すなんて!酷いではありませんか!」

「あなたはお父様とも新しいお母様とも血が繋がっていないのですから、当然ではありませんか」

「でも姉上とは血が繋がっています!」

「しかしお父様とは繋がってはいません」

「そう言ってるのはあの女だけなのでしょう?!姉上は騙されているのです!」

「リル殿をあの女呼ばわりするのは赦しません。リル殿のお陰で我が家は何とか取り潰しを免れたのですから」

「その我が家を嗣ぐのは私ではありませんか!」

「わたくしが婿を取って嗣ぐ事になったのです。あなたはあなたの新しい本当の家を嗣ぎなさい」

「姉上!」

「まだまだわたくしは忙しいのです。あなたにはこれまで姉弟として育った情はありますが、家を潰さない事だけで今のわたくしは手一杯なのです」

「ですから私が姉上を助けます!」

「はっきり言います。あなたは王家に疎まれています」

「・・・え?」

「さんざんハテラズ殿下を馬鹿にしていた事も問題になっています」

「そんな、子供の頃の話ではないですか?今更、言われても、それに私だけではなかった筈です!」

「その上、公の場で、何度もリル殿を批判しました」

「それはだって姉上!あの小娘の所為で父上は失脚させられたんですよ?!」

「あなたに取ってはそう見えるのかも知れませんが、我が家に取ってはお父様の命とこの家の存在を守って下さった恩人なのです」

「ですからそれは!姉上が騙されているのです!」

「あなたも魔石の呪いから救って頂いたと言うのに」

「ですからあれは!あの小娘が仕組んだ罠なのです!」

「これ以上、リル殿への根拠のない非難を耳にする事には堪えられません」

「ですが!姉上!」

「お母様を大切にして上げて下さい」

「え?姉上?」

「さようなら」

「姉上!姉上!待って下さい!姉上!戻って来て下さい!姉上!姉上ー!」



「マーラ」

「イラス様」

「ああ、そのままで良いが、今は2人きりなのだから、イラスと呼ぶ約束だろう?」

「申し訳ありません」

「それとも私が聖女様と呼ぶべきか?」

「いえ、あの、マーラと呼んで下さい、イラス」

「ああ、それで良い。分かったよ、マーラ。今日も大変だったのだろう?」

「いえ、それほどでは」

「昨日より多くの人を治療したと聞いているよ」

「ですが、リル様に功績を譲って頂きましたので、その分には追い付きませんが、精一杯頑張ろうと思うのです」

「だがリル殿は兄上の魔力を使ったからだと言っていたではないか?マーラと比較してはおかしいよ」

「それでもリル様は御自分の成長力も分け与えているのですから」

「そう言う話だけれど、兄上と違って私がマーラを手伝うのも難しいし」

「イラスは国王陛下の政務を助けていらっしゃるのですから、わたくしもイラスの隣りに立つのに恥ずかしくない様にしたいのです」

「そうか」

「はい。それにこの杖を使っても魔石が出来ずに済む様に、ララ様に聖女になる為の修練に付いて教えて頂きましたし、定期的にわたくしが聖女になれたのかどうかを確認する為に、聖女の方達を派遣して頂けるのです。その際に情けない様子は見せられないのもありますし、少しでも多くの治療を熟して、少しでも早く聖女になりたいのもあるのです」

「マーラは既にこの国の聖女ではあるけれど」

「ええ。ですけれど、ズーリナ聖国の基準での聖女になれるかは分かりませんが、もしなれたならわたくしはもっとイラスの役に立てると思うのです」

「それは嬉しいのだが、マーラにはあまり無理をして欲しくない」

「無理と言う程の事はしていません。リル様がこの杖に魔力を籠めるだけ籠めて下さいました。わたくしはその魔力を上手に使う事に注意を払うだけですから、大丈夫ですよ?」

「私も見ていたが、あれほどの魔力、信じられなかったな」

「ええ。ハテラズ殿下の大量の魔力と、この杖を作ったリル様の制御が合わさっての事ですものね」

「ああ。兄上にもリル殿にも頭が上がらない」

「そうですね。でも、リル様には弟くんと妹ちゃんと言って頂いたではないですか?」

「ああ。お姉ちゃんだそうだよな」

「ええ。リル様、頼らせて頂くと、少し嬉しそうにして下さいますよ?」

「そうだな。兄上もそうだ。困り事がないか尋ねて下さるし、相談したりすると喜んで下さっている様にも見える」

「いつまでも甘えてはいられませんけれど」

「ああ。多大な恩には何としても報いなければな」

「はい」



「バジが来てくれて助かったよ」

「それは私もだ。ガリの裁判が始まっていたら大変だったからな」

「あいつらいつの間にか大聖女殺人容疑なんてでっち上げてたからね」

「ああ。有罪にでもされていたら、ガリが処刑されていただろう」

「そもそも誘拐だってそうさ。でっち上げな上に、自分達こそガリを誘拐して来ていたんじゃないか」

「イザンもルルの事を攫って来た上に、隠していたからな」

「それでいてお互いを非難するなんて、どの口が言ってんだい」

「まさにその通りだ。ガリの事を心配したからやったのだなど、良く言えたものだ」

「こっちもだよ。そもそもまだ今の大聖女が現役なのに、ルルを大聖女扱いなんて、無茶苦茶だけれどね」

「まあそれを防げたのも良かったし、ガリの無事な顔が見られて私はホッとした」

「そうだろうね。私も早く、ルルに会いたいよ」

「生きている事は既に分かっていても、やはり心配はあるだろうな」

「それはそうだよ。やはり本人としっかり会いたいじゃないか」

「そうだが、そうだな。こう言う時は聖女は良いな」

「え?なにがだい?」

「聖女は老けないであろう?ララとルルが顔を合わせても、直ぐにお互いを認識出来る。だが我々はそうはいかない。ガリも私も歳を取っているから、相手が本物かどうか、お互いに探り探りだったからな」

「ガリがバジを分からないのは分かるよ?バジは老けたろうからね?でもガリはまだ若いんだから、そんなに変わってないんじゃないかい?」

「ガリは早くから頭角を現していたから忙しくしていて、失踪するしばらく前から会えてはいなかったのだ」

「え?息子の顔を忘れる程かい?」

「そうだな。それに人相も変わっていた」

「・・・ウチに連れて来た当初よりは、大分(だいぶ)ましにはなっていたんだけどね」

「そうか・・・それで言うとルルもやつれてはいたな」

「家族の行方が分からなかったんだものね」

「ああ。生死さえ定かではなければ、憔悴するのも分かる」

「私達もそうだったものね」

「ああ。本人達が自発的に出て行ったのが分かっていたし、目撃情報で生きている事が分かっていても、あれほど心配したのだ」

「早くリルと会わせてやりたいよ」

「そうだな。確かに早く、3人一緒に会わせてやりたいな」

「そうだよね。その為にはもうひと頑張りだね」

「ああ、その通りだ。大体、家族を再会させるだけなのに、国家機密がどうだこうだと言うのがおかしいのだ」

「そうだよね。ナンセンスだよ」

「ああ、その通りだ。センスの欠片もない」



「ミファーラ。見ていたと思うが、ハテラズは生きていたよ。君のお陰だ。ハテラズの加護、君だったのだろう?それのお陰でハテラズは生き延びたし、帰って来られた。帰って来たのはリルのお陰でもあるけれどね。その上、ハテラズが君と私の息子だと、リルが証明してくれたのだ。ハテラズの命を助けて生きて帰してくれただけではなくてだよ?私も命を助けられたしね。多くの命も救ったし、聖女の問題も片付けてくれた。本当にハテラズはいい女性に巡り会えたよ。もしかしてこれは、君の導きなのかい?

 まだまだ問題は残っているし、ハテラズは跡を嗣がない事になったけれど、でも、私達の息子は、リルと一緒ならきっと幸せになるだろう。だからこれからの2人を見守ってあげてくれるかい?君と私の分まで、2人が幸せになれる様に」

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