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働き過ぎは、聖女になりますので、ご注意下さい  作者: 茶樺ん


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経緯

 王妃は奥歯を噛み締め、リルを睨む。

 会場の空気がもう一度、一瞬だけ重くなるが直ぐに軽くなった。


「オフリーでスタンピードが起こったとの報告を受けた時、王妃と宰相はオフリーに調査にいく命令を取り下げさせたな」


 国王の言葉に、王妃は睨む相手を国王に替えた。

 リルが国王と王妃の間に移動する。けれどリルは小柄なので、王妃の視線を妨げる事は出来ていなかった。

 ハルは一瞬考えた後、リルの後ろに立った。それはリルの視線を妨げない為だ。そしてリルの肩に手を起き、いざとなったらハルはリルと場所を入れ替えてリルの前に出て、リルを守る積もりだった。

 宰相は困惑顔で国王を見た。

 国王も宰相の視線には気付いたけれど、そのまま王妃を見詰め続ける。


「王都に魔獣が現れた時も、王妃と宰相は調査を蔑ろにした。そして第2層の民を第1層に避難させる命令も無視したな」

「いいえ国王陛下!私はそれを命じました!」


 宰相の声に国王は視線を向ける。


「退避命令が実行されていない事も報告しなかった」


 国王はまた王妃に視線を向けた。


「そして第1城壁の門を開けとの命令にも従わなかった」

「ですが国王陛下も!直ぐに退室なさったではありませんか!」

「余にも罪がある事は認める。しかし余がそれを償うのは、王妃と宰相を裁いた後だ」


 宰相にまた顔を向けてそう言うと、国王はまた王妃に視線を戻した。


「オフリーのスタンピードも、王都の魔獣襲撃も、王宮の破壊も、王妃と宰相。二人が仕組んだのだな?」

「違うわ!」

「違います!」

「いいや。全てをハテラズとリルの所為としようとした事が、まさにその証拠だ」

「違うわ!スタンピードはオフリー領主の責任よ!王都の魔獣はこの偽物二人の仕業!城壁を(くぐ)るトンネルを掘ったのよ!それを魔獣に潜らせたの!何人もの目撃者がいるのだから!王宮破壊はマーラよ!マーラは私を攻撃したんだから!」

「違います!先にわたくしを攻撃なさったのは王妃様ではありませんか!」

「国王陛下!スタンピードは冒険者がいなくなったのが原因!そしてそれの原因はリルがオフリーを離れた事なのです!私と娘はスタンピードの解消に全力を尽くしました!」

「リル1人オフリーを離れた所為で、スタンピードが起こったと言うのか?」

「それは、違いますが、リルがいなくなったのに合わせて、多くの冒険者がオフリーを離れたのは事実なのです」

「先程は、スタンピードはリルの所為と申しておらなかったか?」

「それは、そうすれば、オフリーはスタンピードの責任がなかった事にすると宰相に言われた為であって」

「違います!国王陛下!スタンピードはリルの所為と言い出したのは、オフリー領主が先なのです!」

「宰相はそれを使って王都の魔獣の襲撃もリルの所為にすると言っていたではないか!」

「お前こそスタンピードの死者もリルの所為に出来ると言っていたではないか!」

「そうよ!リルは王都でも大勢を見捨てて死なせたのよ!それから目を逸らせる為に私を魔人だなんて言いだしたんだわ!」


 国王が溜め息を吐く。


「リル」

「はい」

「ハテラズ」

「はい、国王陛下」

「二人の出会いから、詳らかに述べてみよ」

「はい、国王陛下」

「つまびらか?つまびらかにって詳細にって事ですか?」

「ああ、そうだ」

「魔獣を何頭倒したとか忘れたし、どんな種類がいたとかあやふやなんですけど」

「構わない。どちらにせよ、リルの言葉が事実かどうかは証明出来ないだろう。だが事実であれば、王妃や宰相やオフリー領主の言葉より、皆を説得する力を持つはずだ」


 国王にそう諭されて、リルは「分かりました」と肯いた。


「出会い。出会いから。そうするとまず、オフリーから王都に向かって一日と少し歩いたところで、森の中からゴボウルフと言う魔獣の声が聞こえたので、子供が襲われてるのかと思ってその声を辿ったらハルが、ハテラズ王子様がいらっしゃっていました」

「ハルで良いし、普段の話し方で良い」

「あ、ありがとうございます」

「うむ。しかしなぜ子供だと思ったのだ?」

「冒険者なら外の、ダンジョンの外のゴボウルフに囲まれても平気ですけど、子供が罠に掛かってたら助けなければと思って」

「罠とはなんだ?」

「ゴボウルフは人が助けを求める様な鳴き声を出すんです。それを知らない人は助けようとして、森の奥に誘われて襲われるんです」

「ハテラズはその声に惑わされたのか?」

「はい、国王陛下。まさに人が助けを求めていると思いました」

「その時そなたは既に、供の者達と逸れていたのだな?」

「はい」

「なぜ一人で森に入ったのだ?そなたの立場を考えたら、その行いは相応しくはないであろう?」

「あの辺りには強い魔獣はおらず、我等なら剣で一撃だとの話でした」

「油断したと言う事か」

「はい。それに森には子供が良く採取に来るとの話を聞きました。そして子供が良く魔獣に攫われるとの話で、助けを求める声がしたなら直ぐに魔獣を倒して救い出さなければならないと聞いていたのです」

「誰に聞いたのだ?同行した者か?」

「はい」

「そこでハテラズを殺そうとしていたのか?」


 国王に尋ねられて、ハルにナイフを投げた男は「はい」と肯いた。


「そうすると逸れたのもわざとではあるのだな?」

「はい。そう計画しておりました」

「どうやって逸れたのだ?」

「あ、いえ。実際にどの様にしたのか、手順は存じません」

「そうか。ハテラズ、答えよ」

「はい。森に魔獣の気配があるとの事で、私は街道に残り、護衛達は複数に分かれて森に入って行きました。そして助けの声を聞いたので、護衛達を待ったのですが、護衛達は戻らず、助けの声も続きましたので、わたくしも森に入ったのでございます」

「それが罠だったのだな」


 国王に顔を向けられ、ナイフの男は「はい」と肯いた。

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