表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/139

魔石の使い方

 今日のリルは魔獣退治で、かなりの魔力を使っている。

 今もリルは、かなり厚かった壁を壊すのにあたり、貯まって来ていた魔力をかなり使っていた。

 その上リル達は、ポーションを補充出来ていなかった。魔獣の肉も在庫がほとんどない。


 リルは自分に残っている魔力で、ハルに回復魔法を掛けた。

 やはりハルの体力が削られていっている。体力から魔力が作られている筈だ。ハルの体力だって魔獣退治で使っているので、今はかなり減っている。これ以上減ったら危険だ。

 ハルの魔力は少な過ぎて、リルには検知出来ないレベルだ。もしかしたらこの状態でも、一般人よりは魔力が残っているのかも知れない。しかしもしかしたら本当にゼロなのかも知れない。

 リルは自分が魔力枯渇に陥らないギリギリの状態になるまで、ハルに回復魔法を掛け続けた。もう探知魔法も使えない。

 そして魔獣の肉を食べながら、自分の魔力が自然回復するのをじりじりと待つ。魔力がもったいなくて熱魔法ももちろん使えないから、肉は生のままだった。


「ハルが言ってた干し肉、今度一緒に作らなきゃね」


 リルはハルの頬に手を当てた。そして顔を近付けると、ハルの額に自分の額を触れさせる。


「これはハレンチ?」


 リルはハルの体の上に覆い被さり、ハルの体温が逃げるのを防ごうとする。

 その状態で、次の肉を食べようとした。バッグに入れた指先に魔石が当たり、上手く肉が取れない。

 リルは体を捻ってハルの横に降り、上半身を起こしてバッグの中に手を入れた。光魔法も使えないから、手探りで肉を探す。先程、横になってバッグの中を掻き混ぜたから、荷物はぐちゃぐちゃになっていた。

 その中で1番邪魔な、1番大きな魔石を取り出した。名前の分からない魔獣の魔石だ。



 魔獣から採れる魔石は、商品として流通する。それはエネルギー源として利用する事が出来るからだ。

 ポーションを作る時にもこの国では砕いた魔石か、魔石を原料とした材料を使う。魔石に内蔵されている魔力を使う事で、魔力や体力を回復したり、怪我や中毒を治したり出来る様になる。

 また一般の魔法使いは、杖に蓄える魔力を魔石から得ている。

 そしてそれぞれの利用方法には特殊な魔法が使われたり、専用の魔法陣が用意されていたり、民間の知恵が伝えられたりしていた。


 リルはポーションを作る時に自分の魔力を使っていた。それはリルが父親に習った方法がそうだったからだ。

 オフリーでポーションの作り方を教わった時も、魔力を加えるとただ言われただけなので、魔石を使うとは知らないでいる。


 リルはまた、杖を育てるのにも自分の魔力を使っていた。それはリルが母親から教わった杖の使い方がそうだったからだ。

 触れている時は常に杖に魔力を流し続ける事で、自然回復する分の魔力を杖に貯める事が出来る。魔法を使う時は魔力の余剰分を杖が吸収する。足りなければ杖に貯まった魔力を使うが、リルは貯まった魔力を使うのがもったいなくて、常に多目に魔力を流していた。リルの母親も同じタイプの性格だった。


 それなのでリルは魔石を使った事がない。使い方も知らない。使えると言う事を知っているだけだった。



 魔石には魔力が詰まっている。それは知っている。

 そしてハルを治すのには魔力が必要だ。



 リルはバッグから小さい魔石を取り出す。そしてハルの魔力を使う時の様に、その魔石から魔力を吸い出してみる。すると呆気ないほど簡単に魔力が吸い出せた。

 ただしハルから魔力を吸い出す時とは異なり、リルと魔石の魔力濃度が同じになったところで止まってしまった。魔石の魔力を全て吸い出す事は出来ていない。


 リルは直ぐにハルに回復魔法を掛ける。そして魔力がなくなるとまた魔石から魔力を吸い出した。

 しかし今度はほとんど吸い出せていないのに、魔力濃度が均衡した。


 回復魔法を掛けるには足りなかったが、魔力の当ては出来た。

 それなので使うのを控えていた探知魔法を使ってみると、ハルの体力が先程よりまた減っている。


 リルは名前の分からない魔獣の魔石を手に取った。

 魔石から魔力を吸い出した瞬間、リルの手は弾かれた。リルの体中から魔力が噴き出す。


 自分が魔力を漏らしている事に気付いたリルは、それを抑えようとするが出来なかった。

 抑えている積もりが抑える力が出ない。まるで抑え方を忘れてしまっている様に感じた。


 リルは構わず魔力を漏らしたまま、ハルに回復魔法を掛ける。

 探知魔法で確認すると、ハルの体力の減り方が弛んでいく。そして止まった。

 いま回復魔法を止めて魔力の供給が止まれば、またハルの体力から魔力が作られ始めてしまうし、まだハルの魔力が増えるのは検知出来ないけれど、リルはホッと体の力を抜いた。



 すると体が熱い。熱くて痛い。

 ハルに触れている自分の手が、赤く爛れていたのに気付く。魔石に弾かれた手はかなり酷い状態だが、反対の腕も皮膚の見える部分がどんどん赤黒くなっていく。


 ハルへの回復魔法と探知魔法を続けながら、自分自身に自癒魔法を掛ける。

 すると体全体に激しい痛みが走り、思わず自癒魔法と探知魔法を崩してしまった。


 切らさなかった回復魔法に加えて、直ぐに探知魔法を掛け直す。

 大丈夫。ハルには影響が出ていない。魔力が増えているのか分からないから効いているのか分からないけれど、回復魔法は途切れさせずに掛け続けられていた。


 今度は治療魔法を自分に掛けてみる。

 これは大丈夫そうだ。痛みが増さない。

 腕が赤黒くなるのも止まった。


 自癒魔法は対象者の魔力を使って治す。

 それなので魔力が溢れて漏らしている状態の今なら、良く効くかと考えたのだが上手くいかなかった。

 もしかしたら経験した事のない様な、凄い勢いで体が治っていたから激しく痛かったのかも知れない。しかしあれには耐えられない。無理。

 

 治療魔法は魔法を掛ける側の魔力を使う。

 怪我人の魔力が足りない時にだけ使っていたので、自分自身に使った事はなかった。

 でもまあ、治るのなら、自分の分は何でも良い。肌が治っていくのが見えるが、見えない部分も治っていそうだ。



 リルは魔力が少なくなって来ると、先程使った魔石をもう一度手にした。

 そしてハルへの回復魔法と自分への治療魔法を掛けたまま、魔石から魔力を吸い出す。

 先程と同じ様にリルの手は弾かれ、治療魔法も途切れたが、回復魔法は掛け続けられた。

 リルは自分に治療魔法を掛け直し、探知魔法でハルの状態を確認する。


 魔力がなくなる度に、リルは魔石から魔力を吸い出して、ハルの回復を続ける。

 そしてハルの魔力が検知出来るレベルまで回復すると、リルはハルの隣に横になり、ハルにくっ付いて眠った。



 リルとハルが入っている土ドームが壊された時に、2人は意識を戻さなかった。


 ハルと一緒に部屋にいた男は、リルが壁を破壊した時に怪我をして、意識が戻っていない。


 リルが壁を壊したのは給仕達が見ていた為、リルは意識のないまま牢に入れられた。

 王宮の壁を壊し、王宮に勤める人間に大怪我を負わせた為、リルは重罪は免れなかったのだが、その場にいた3人とも意識がないので経緯が分からず、リルをどの様に扱うか決まらなかった。

 何せ魔獣を退治していた冒険者なのは確かだが、リルの身元も判明していなかった。


 状況からハルは被害者なのだろうと思われていたが、リルと一緒に魔獣を退治していたので、リルの仲間であるのも間違いない。

 扱いに困ってあちこちの部署をたらい回しにされた末、ハルは貴族が容疑を掛けられた時に使う部屋を宛がわれた。外からは鍵が掛けられているが、高級な調度品が使われていて居心地は良い。意識のないハルの治療もされるし、ハルが目覚めたら美味しい食事も提供される扱いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ