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壁の穴

 土ドームから一番近い、第2城壁の城門は閉じられていた。


「閉まっているのは見えていたが」

「やっぱりね。どうする?壊す?」

「魔力がもったいない」

「そうすると壁を登るのもナシね?」

「登る?」


 リルの言葉にハルは上を見上げた。


「土魔法で足場を作りながら」

「なるほど。だが足場が残るのは駄目だ」

「それなら、作りながら消しながら?」

「リルは高い所は平気なのか?」

「平気って?」

「高い所に上るのを怖がる人もいるそうだが?」


 ハルの言葉に今度はリルが上を見上げる。


「わかんない」

「いや、止めておこう」

「そうしたら、魔獣が作った穴を探すしかないわね」

「ああ」

「まだ残ってれば良いけど」

「これだけ綺麗に魔獣がいないのだ。塞がれてはいないだろう」

「そうね」


 2人は第2城壁に沿って歩き出した。



 第2城壁の下はぐるりと掘られている。どこも魔獣が掘り返しているからだ。

 しかし壁の向こうまで貫通している所はない。


「これ、埋め直すのかな?」

「そうだろうな」

「かなり深いけど、壁がこっちに倒れて来たりしないかな?」

「いいや。壁が全部繋がって1枚になっているから、外にも内にも倒れにくい筈だ」

「そうなのね。なるほど」


 しばらく歩くと、ハルが音を聞きつけた。


「人の声がする」

「壁の向こうから?」

「そうだろうな」


 その場所まで2人は走る。


「ここから聞こえる」

「ホントだ。聞こえないけど、穴が繋がってる」

「良し。では入ろう」

「先に行こうか?」

「何故だ?私に先に行かせてくれ」

「探知魔法で先を見た方が良いんじゃない?」

「私が前を歩いていても、いつも探知出来ているだろう?」

「そうだけどね」


 ハルは剣を抜いて、穴に降りて行く。


「後ろ、閉じとくね」

「ああ。頼む」


 リルは土魔法で穴の入り口を閉じた。


「そんなに固くしなかったよ」

「分かった。後で確りと直させよう」

「うん」


 外からの光が遮られたので、リルが光魔法を使う。


「魔力は大丈夫か?なんなら抱いて行くが?」

「そうだね。お願い」


 リルが光魔法を消して両手を伸ばすと、ハルが抱き上げる。


「あれ?そう言えば夜目が利くの?」

「うん?そう言えばそうだな」

「そう言えば遠目は?」

「遠目も利いた」

「肉体強化かと思ってたけど、魔力、関係ないのかな?」

「私の魔力が目を中心に流れているだろうか?」


 リルはハルの額と胸に触れた。


「ううん。肉体強化っぽい魔力の流れはないけど」

「そうか。何なのだろうな」

「なんだろうね?」

「ここからは登りだ。私が先に出る」

「うん。穴の先には何もいないし、誰もいない」

「分かった」


 ハルは出口まで進み、ゆっくりと顔を出す。

 次に体を出して外に出て、周囲を目視して安全を確認すると、穴に手を伸ばしてリルを引き上げた。


「ありがとう」

「ああ」

「こっちも閉じとくね」

「ああ、頼んだ」

「これ、建物の中?」

「そうだな。城壁に接している建物の様だ」

「声は?」

「この外だ」

「そう言えば、耳も良いままだった」

「そう言えばそうだな」

「床が泥だらけだね」

「これを辿れば魔獣が見付かるから、楽だな」

「うん。でもやっぱり、魔獣は入り込んでいたのか」

「そうだな」

「この先にもう一つ壁があるんでしょ?」

「ああ」

「その先が昔ダンジョンだったとこ?」

「そうだ」

「やっぱり。やな感じがしてる」

「魔獣はやはり、それを目指しているのだろうか?」

「でも・・・」


 リルが不安そうな顔をする。


「どうした?」

「昔からあるのに、なんでいきなり目指したんだろう?」

「・・・ダンジョンが復活した可能性があるかも知れないと言う事か?」

「わかんない。オフリーのダンジョンから、こんな感じ感じた事ない。それに外からダンジョンを目指した魔獣の話なんて聞いた事ないから、ダンジョン自体が目当てじゃなくて、魔獣の好きな物が急に元ダンジョンの中に出来たとか?」


 ハルの眉根が寄った。


「もしそうであれば、それを処分しない限りはまた、魔獣が集まって来るかも知れないな」

「そうだよね」


 泥は建物の中をあちらこちらに広がっていたが、扉を壊して、外に続いている。

 ハルが先に建物から外に出た。

 その先の、石造りの道の上に足跡の付いた泥が残っている。


 リルとハルは肯き合うと、無言でその跡を付けて行った。

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