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無自覚の疲れ

 リルとハルが第2城壁に近付いた事は、第2城壁の上にいる兵士や冒険者が直ぐに気付いていた。しかし2人が何をしようとしているのかは、誰にも分からなかった。

 そして2人が土ドームを作って中に籠もったら、ますます2人が何をしようとしているか分からなくなる。ハルが魔力を漏らす意図も掴めない。

 兵士や冒険者に取って、土ドームは不気味な存在に思えた。


 魔獣が土ドームに向かい始めると、何が起こったのかと注目を集めた。

 そして魔獣はリルとハルに倒されていくが、城壁の上からは土ドームの中に魔獣が入って行く様にも見えた。入り口で倒された魔獣が、その場に沈められていったからだ。

 それは日が暮れても続けられ、翌朝には目に見えて、魔獣が減っていた。


 行方も分からず魔獣が消えていく様子は、兵士や冒険者に恐怖を感じさせていた。



 リルとハルが土ドームで魔獣を倒し始めてから翌朝までに、第2城壁に集まっていた魔獣の3分の1が倒された。

 そして次の1日を掛けて、更に3分の1を2人が倒す。

 しかし魔獣の集まり具合は徐々に悪くなっており、狩りの効率は落ちていた。

 狩りの方法を変えるべきかも知れないと、リルもハルも考えていた。


「壁をぐるりと回って、狩っていくしかないのかな?」

「後は私の漏らす魔力をもっと増やすか」

「でもそれは、今が限界じゃない?もう弱いヤツが寄って来ないでしょ?」

「ああ」

「たぶん、ハルの魔力を怖がって、逃げちゃってるのがいるんだと思うんだ」

「漏らせば良いと言う訳ではないのか」

「たぶんね」

「それならば、以前行った瀕死の真似はどうだろう?」

「う~ん?魔獣達が城壁の中を目指してるじゃない?やっぱり中に、魔獣達を惹き付ける何かがあると思うんだよね。だから瀕死の真似をしても無理なんじゃないかな?」

「なるほどな」

「でも、やるだけやってみる?」

「そうだな。試してみようか」

「うん」


 ハルは魔力の漏れを波打たせて、息も絶え絶えの様子を演じてみせる。しかしその結果、魔獣達は散ってしまった。

 魔力の漏らし方を元に戻すとまた魔獣が、かなり数を減らしてだけれど集まって来る。


「リルの予想通りだったか」

「駄目だったね」

「土ドームを出て、1頭1頭、倒すしかないか」

「取り敢えず、1頭も来なくなったらそうしようか」

「そうだな。だが、第2城壁がいつまで()つのかも心配ではあるのだ」

「それなら、一休みしたら、ひと回りしてみる?」

「そうだな。だが、行くなら直ぐの方が良いのではないか?」

「ダメよ。ここに籠もってるのと違って、危険が多いんだから、万全で行かなくちゃ。ハル、調子が悪いんじゃない?」

「いいや。その様な事はないが」

「ダメ。ここに来てからもそうだけど、その前からあまり寝てないじゃない。一回、ちゃんと休んで」

「疲れは感じていないのだが」

「ダメだったら。いざって時は私を守ってくれるんでしょ?」

「ふっ。そうだな。万全を期そう」

「うん。先に何か食べる?」

「いや。食べるのは後で良い。先に休ませて貰おう」

「うん」

「私が起きたらリルも休んで、それから城壁をひと回りしよう」

「ちゃんとハルの疲れが取れてたらね」

「ああ、分かった」

「じゃあ、ほら、さっさと寝て」


 リルは腰掛けているベッドをポンポンと叩いた。


「ああ、分かった」


 ハルはリルの背後に横になると、手をリルの腹に回す。リルはそのハルの手に、自分の手を重ねた。

 そしてハルが漏らす魔力を減らしていくのに合わせて、リルがハルから吸い出した魔力を漏らしていく。この切り替えもかなり慣れ、2人はスムーズに熟した。


「それでは、先に休ませて貰う」

「うん。お休み」

「ああ、後はよろしく頼む」

「任せて」


 リルがハルの手をポンポンと叩く。ハルは少し微笑んで、目を閉じた。

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