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夜の成果

 王都の第2城壁の上と下からの魔法攻撃には、攻撃魔法が使われていた。敵に向けて炎を浴びせたり、火球を撃ったり、炸裂する弾を撃ったり、風の(やいば)や水の刃を撃ったりする。

 人間の魔法使いも魔獣も同じ様な攻撃をするが、魔獣は呪文を唱えないのに、魔法使いには杖や魔法陣や呪文などが必要だ。

 それなので魔法使いの動作から狙いが読まれ、魔獣に避けられたりもする。

 その為に、本来なら有利な上から攻撃をしている魔法使いより、不利な筈の下から攻撃をしている魔獣の方が、優勢であったりしていた。


 そして辺りが暗くなると、更に優劣に差が付いた。

 魔獣は夜目が利くが、人間はそうでもない。肉体強化で夜目を利く様にすれば良いのだが、その技術を持つ者は少ないし、その魔法を使うにも呪文が必要だったりするから、攻撃魔法を撃つ頻度は下がるのであった。

 索敵魔法はもっと使い難い。周囲のどこに自分に敵意を持つ相手がいるのか分かるのだが、攻撃魔法の照準に使える程の分解能はない。そしてやはり呪文などが必要なので、攻撃頻度は落ちてしまう。

 リルの使う探知魔法は周囲の明るさに関係なく、魔法の照準にも利用できる精度があるのだが、冒険者の中には使える者がなかなかいなかった。何故なら元々が薬師や鍛冶職人などの技術職が使用する魔法であり、リルも薬師だった父に教えられていた。そして薬の調合に魔法を使いながら使うものなので、他の魔法と一緒に使うのも当たり前だった。少なくともリルはそう教わっていた。



「ねえ?魔法使いの攻撃、()んでるよね?」

「そうだな」

「城壁の上にまだ人がいるみたいだけど、みんなやられちゃったのかな?」

「杖を持っている者が見えるが、怪我をしている様には見えない」

「もしかして、魔力切れ?」

「ポーションを使えば、魔力も体力も回復するだろう?」

「そうよね。怪我もそうか」

「攻撃方法を変えるのかも知れない。注意していないと、巻き込まれるかも知れないな」

「ハルが固めた壁を壊せるとは思わないけど」

「入り口を直ぐに閉じられる様には注意をしておく」

「そうね。私も魔力の流れに気を付けておくね」

「ああ。頼んだ」


 城壁の上には夜警の為の兵士が残り、魔法使いも弓士も下に下り始める。

 ハルの予想は誤りで、魔法使い達は今日の仕事が終わっただけだった。


「え?帰っちゃった?」

「その様だな」

「夜はどうするの?」

「そうだな。私達も休むか?」

「え?でも魔獣達は攻めてるじゃない!」

「魔獣は攻撃を続けているな」

「魔法撃ってるのはたぶんダミーで、今も城壁の下を掘ってるよ?」

「そちらが本命なのだろうな」

「もっとこっちに集める?少しでも掘られない様に」

「そうするか。だが私達も交代では休もう」

「うん、そうだね。お腹空いたし」

「では先にリルが休んでくれ」

「分かった。ハルの分もお肉焼くね」

「ああ、頼んだ」

「何が良い?」

「ミディアも残っていたな?」

「うん。じゃあミディア焼くね」

「ああ、よろしく頼む。だが、ひと眠りしてからで良いぞ?」

「あ、そう?分かった。それじゃあ、撃ち方、変わって」

「ああ。良いか?」

「うん」

「3、2、1」

「はい!」



 ハルは夜目は利くが、リルの様に魔石の場所は分からない。

 それなので、少し大きめの礫を作り、魔獣の魔石がありそうな所を広く吹き飛ばす。もし魔石を外していて魔獣が後で復活しても、もう一度撃てば良いし、リルに代われば(とど)めを刺して貰える事も期待できた。

 ハルも色々と鍛えられ、リルの様に同時に魔法を使うのはまだ無理だけれど、魔法の切り替えは早くなっている。それは呪文を使わないからならではであった。

 ハルは礫を作り、撃ち出し、入り口の魔獣を埋める事に、魔法を切り替えながら対応していった。そして魔力の漏れも少しずつ増やし、周囲の魔獣を集め続けてもいた。


 リルは自分の分の肉を焼いて食べたら、土ドーム内にベッドを作り、後はハルに任せて眠った。

 そしてリルは充分に疲れを取って目を覚ますと、ミディアの肉をハルに焼き、ハルが食べ終わったらリルが腰掛けているベッドで横になって貰い、自分の腹部に回して貰ったハルの手からハルの魔力を吸い出し、その多くを漏らして魔獣を集め、片手で礫を作りながら撃ち出し、必要ならもう一方の手から魔石を撃ち、倒した魔獣を足で発動した魔法で埋めていく。



 第2城壁の上に魔法使い達が戻って来た時には、周囲を囲む魔獣は3分の2になっていた。

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