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スタンピードの後の街

 リルとハルが街に戻ると人通りはあったけれど、誰もが皆、疲れて見えた。


 リルは崩れた建物に向かい、ハルと2人で瓦礫を退けて、中から遺体を掘り出した。

 通りから見える位置に平らな場所を作って遺体を並べる。

 すると2人に声を掛けて来る男がいた。


「お前らはあの時の!」


 その男がリルに走り寄る。ハルはリルの前に立った。


「お前らの所為で俺の子供は死んだんだ!お前らが見捨てたから!」

「子供は気の毒だったが」

「ハル。構わないで良いよ」

「なんだと!」

「続けよう」

「ふざけんな!」


 リルは男に背を向けて、遺体の掘り出しに戻る。

 ハルはリルに迫ろうとする男を放って置けない。ハルは仕方なく男を土魔法で拘束した。


「おい!何するんだ!俺まで殺す気か!」


 騒ぎに野次馬が出来る。

 リルとハルがその場の遺体を全て掘り出し終わってもまだ、男は2人に向けて非難の声を上げ続けていた。

 次の場所に移るので、ハルは男の拘束を解く。男はハルに殴り掛かるが、ハルは男を投げ飛ばした。男は腰を打って、直ぐには立てなくなる。


「お前ら!訴えてやる!覚えてろ!」


 野次馬に助け起こされながら、男がリルとハルの背中に叫んだ。


 次の場所でも遺体を掘り出していると、またリルとハルに声が掛かる。


「あなた達は冒険者ですね?」


 そう言った神官は遺体に気付き、顔を蹙めながら遺体から目を逸らした。


「そうだが」

「魔石を寄越して下さい」


 神官は遺体を見ない様に顔を背けたまま、視線だけハルに向ける。


「今は忙しい。魔石が必要なら後で」

「何を言っているのです。私は聖女様に仕える者」


 聖女との言葉にリルが微かに反応した事がハルには分かった。ハルは神官を追い返す事に決める。


「魔石は冒険者協会に」

「聖女様が魔石を所望しているのです。率先して喜んで寄進するのが筋でしょう」

「そう言う話は冒険者協会を通してくれ」

「何を言っているのです。あなた達は冒険者である前に神の子です。今回の騒動も神の恩恵を授かった聖女様のお陰で生き残れたのです」


 ハルは腹立たしくなって、神官を土魔法で拘束した。今度は喋れない様に顎も動かせなくして口も塞ぐ。

 リルは黙々と掘り出し続けていたので、ハルも黙って掘り出しに戻る。

 途中で他の神官も来たので、来る都度ハルは拘束していった。

 次の場所に移るのに神官達の拘束を解くと口々に、罰が当たるとか見捨てられるとか聖女に言い付けるとか言って、神官達は去っていった。


 次の場所では兵士達が来た。


「街を汚したのはお前達か?」

「何の事だ?」

「言葉遣いに気を付けろ!」

「我々は領主様の命で動いているのだ!」

「それに惚けても無駄だ。目撃者がいるのだからな」

「だから何の事だ?」

「言葉遣いに気を付けろと言っているだろう!」

「お前達が魔獣の死骸を散蒔いたのは分かっている」

「大人しく罪を認めろ!」

「罪?何の罪だ?」

「魔獣の死骸を散蒔いた罪だ!」

「魔獣の死骸を片付けないで逃げただろう?」

「何を言っている?」

「街中に死骸を放置したのが罪だと言っているのだ」

「逃げようったって、もう逃げられないからな!」

「領主様の(もと)まで来て貰う」

「罪を償え!」

「ハル?」


 心配そうにリルが声を掛けて来るが、ハルは「大丈夫だ」と微笑みを向けた。

 そして兵士達に向き直ると、土魔法で一気に全員を拘束した。もちろんうるさいから、喋れない様にもしている。


「え?大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」

「でも、ハルの立場とか」

「いいや。問題ない。大丈夫だ」


 そう言ってハルは微笑んで、掘り出しの続きを再開する。リルも少し躊躇ったけれど、やはり兵士達をそのままにして続きを再開した。

 次の場所に移る時には兵士は拘束をしたままにしたけれど、リルが工夫をして、ある程度の時間が来たら自然に拘束が解ける様にした。


 次の場所には冒険者達が来た。


「こいつがリルか?」


 リルがこいつと言われ、ハルは直ぐにそいつを拘束した。


「何するんだ!」


 別の冒険者が拘束を解く。するとハルはもっと硬く拘束した。今度の拘束はその場の冒険者達には解けない。


「おい!何するんだ!直ぐに解除しろ!」

「何の用だ?」

「何のって、あれだ」

「お前ら、魔石を独り占めしてんだろう?」

「それを寄越せ」

「寄越せ?なぜお前達に渡さなければならない」

「俺達が倒そうとしていた獲物を横取りしたからだろう?」

「横取りを協会に届けたら、お前ら、資格取り消しだぞ?」

「分かったら大人しく魔石を出せよ」

「あと盗んだものもな!」

「盗んだもの?」

「ああ。マゴコロ商会や『輝きの光』から色々盗んだんだろ?」

「今だって、瓦礫の下から盗んでんじゃないか!」

「それらを」


 ハルは纏めて拘束した。

 ハルは掘り出しの作業に戻る。


「全部、対応させてゴメンね」


 リルの言葉にハルは「いいや」と首を振る。


「リルでなければ、亡くなった人の場所が分からない。対応は任せて、そちらを優先してくれ」

「うん」


 次の場所に移る前にハルはリルの真似をして、一定の時間が過ぎれば冒険者達の拘束が解ける様にしてみた。ただし初めてなので、上手くいったかどうかは分からない。

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