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ダンジョンの口

 リルが命を救える怪我人が街にいなくなったのは、夜もかなり()けてからだった。後の怪我人は、命に別状がないか、手遅れでリルには救えないかだった。

 リルとハルが治療に走り回っている間に亡くなった人もいた。


 神殿の尖塔のベランダにいた女は、ベランダの上から魔法を撃っていたけれど、道に下りてくる事はなかった。

 治療が出来る筈の神官もヒーラーも、街中で見掛けなかった。


 ポーションを手に入れる為に商店を襲った者達は、他の店や人家も襲っていた。火が付けられた建物もあって、暗い空の下、街のあちこちが明るく照らされている。



「ダンジョンに行こう」

「いや、休もう、リル」

「疲れた?」

「リルが疲れただろう?」

「ハルが大丈夫なら、あと少しだからやっちゃおう」

「・・・分かった」

「うん」

「ちなみに私は体が全く疲れていない」

「え?ウソ?」

「本当だ。だから私を気遣わなくて良い。その代わり、リルが疲れたら直ぐに言ってくれ」

「疲れてるは疲れてるけど、ここで休んでも落ち着かないから、片付けちゃおう」

「ああ。分かった」


 ハルはリルを抱き直して、ダンジョンに向かって走り出した。



 オフリーのダンジョンは城壁で囲われている。その城壁にはリルが蓋をしていた。


「溢れなかったから、蓋、いらなかったね」

「蓋をしたから、街中の事に集中出来たのだろう?」

「うん。確かに」


 リルは蓋を開ける事なく、城壁の扉から中に入った。

 城壁の上には人の気配があり、ところどころで光魔法が使われて、周囲を僅かに照らしていた。


 リルも光魔法で身の回りを照らしながらハルを先導して、2人は壁の上の通路に立った。


「下にいるのはウリボアか?」

「うん」

「確かに大きいな」

「でしょ?見掛けないと思ったけど、壁の外に出られなかったんだね」

「その様だな」

「さて、どう倒そう?ウリボアの武器は突進力だけど、こんだけみっちりつまってたら動けないだろうし、このまま倒せれば楽だけど」

「ウリボアの足下に溝を掘って、そこに下りて、下から胸の魔石を狙うのはどうだろう?」

「ダンジョンを囲む城壁は、壁も床もカッチカチに作られてるから。そうでなくちゃ、ウリボアが穴を開けて出てってる筈」


 ハルが下を覗き見る。


「確かに壁も地面も、それ程掘られてはいないな」

「見えるの?」

「ああ」

「真っ暗なのに、夜目が利くの便利だよね」

「まあ、そうだな。それで、その方法でどうだ?」

「え?だから、強い魔法でカッチカチだから」

「それは私の土魔法より強いのか?」

「・・・そんな訳、ないか」

「ああ」

「うん。やってみよう。こっちから下に下りれるから」


 リルはハルの手を引いた。



 ダンジョンの口を塞ぐ大扉は破壊されていた。そして魔獣はダンジョンの中まで続いて詰まっていた。


「逃げられてもイヤだから、あの後ろを塞いじゃおうか?」

「そうだな」

「ダンジョンって、壁に魔力が通り易くて、魔力を込めても散ってっちゃうから注意してね?」

「うん?そうなのか」

「取り敢えず、入り口まで行ってみよう」


 リルはハルを促して、魔獣の足を避けながら床に溝を掘らせる。


「ハルなら問題なく掘れるね」

「ああ。これくらいなら大丈夫だ」


 そのままハルは、ダンジョンの口まで掘り進む。

 

「ここを境に向こうがダンジョン。掘ってみて」

「ああ・・・なるほど、手応えが違う」

「でも掘れるね」

「硬い訳ではないからな」

「でも魔力が散って、もったいない。ちょっとやらせて」


 リルがハルの手を握り、ハルの魔力で溝を掘る。


「う~ん、やっぱり散るけど、少しはマシだよね?」

「少しではない。大分効果が高いではないか」

「そう?じゃあこっちは私が掘る」

「ああ。任せた」


 リルはハルの魔力で溝を掘り進め、詰まっている魔獣の後ろまで来ると、そこに壁を作った。


「一応出来たけど、散りやすいからさっさとやろう」

「だが倒してしまうと隙間が出来て、自由に動けるウリボアが出るのではないか?」

「それもそうね」

「ウリボアは後ろ向きには勧めないのか?」

「そう言われてるけど、分からない」

「それなら取り敢えず、ダンジョン内にいるものを先に倒して、壁や溝が崩れても良い様にしよう」

「そうね」


 肯くリルに肯き返すと、ハルはダンジョンと外との境に壁を作った。


「この中を先に倒そう」

「分かった」


 リルは魔獣の間にも壁を作って動けなくさせて、胸の魔石に魔石を打つけて、1頭1頭倒していった。


 ダンジョン内の魔獣を倒し終わると、2人はダンジョンの外に出る。


「ウリボアの足が危険だったな」

「拘束する?」

「地面に埋めてしまうか?」

「それをハルが硬く固めれば大丈夫ね」

「そうだな。そうしよう」


 ハルはダンジョンと城壁の間に詰まっている魔獣達の足下を流動化した。そして全ての魔獣を床に沈めていく。魔獣は鼻先まで床に埋められた。


「このまま土の中に埋めたらどうだ?」

「なかなか死なないと思うし、魔石を取らなくちゃ、掘り起こしたら生き返ったりして、危ないと思う」

「分かった。では最初の予定通り、下に溝を掘って倒していこう」

「うん」


 ハルが魔獣の真下にまで溝を掘り、リルが魔獣の魔石に魔石を撃って当てて倒す。

 それ程時間を掛けずに、ダンジョン口の全ての魔獣を倒した。

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