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あいつ!

「同じ魔獣が現れたら、任せて良いか?」

「うん!」

「分かった。そうすると後はこの2頭だな」

「硬い礫をたくさん当てて、粉々にするしか」


 また上空から魔力が降り注ぐ。


「あいつ!」


 リルは魔石を撃って、遠くの尖塔の上に立つ女が持つ杖に付いている魔石に当てた。

 女はその衝撃で杖を取り落とす。


「リル!」


 のたうち回っていた2頭の魔獣が立ち上がる。そして2頭揃って、胸を叩いて鳴らした。

 リルはその1頭の胸に、礫と魔石を同時に当てる。すると魔獣の上半身は弾け飛んだ。

 もう1頭は胸を叩くのを()めてハルに殴り掛かるが、ハルはこれを()なす。

 擦れ違って振り向いた魔獣の胸に、リルの撃った弾が当たり、こちらの魔獣も弾け飛んだ。


 リルは尖塔を睨んだ。


「爆発しなかったか」

「リル!爆発などさせたら彼女を殺す事になったぞ!」

「だからなに?」


 リルは睨んだ顔のままハルを見る。


「殺人じゃないか!」

「あいつはハルを殺そうとしたのよ?」

「え?攻撃魔法だったのか?」

「魔獣の傷を治し続けるなんて!攻撃魔法よりタチ悪いじゃない!」


 リルは力魔法で瓦礫を飛ばし、バルコニーの上の尖塔に穴を開けた。

 バルコニー上では人々が逃げ回っている。


()めるんだ!聖女は住民を治しているだけなんじゃないのか?」

「住民を治してるだけの積もりでも!結果として魔獣も治してたらダメでしょうが!」


 リルはハルに抱き抱えられながら、ハルの胸をど突いた。


「あの杖を使ってあんなヘッポコな魔法しか撃てないんなら!直ぐにも聖女を辞めるか!下に下りて怪我人に直接手を触れながら魔法を使うべきなのよ!」


 リルは怒って、ハルの腕から下りようとする。それをハルは、まるで小動物を逃がさないように両手のひらを順繰りに動かす様に、腕を順繰りに動かしてリルを下ろさなかった。


「なにすんのよ!」

「リルこそ落ち着くんだ!」

「ハルは聖女のとこでもどこでも行けば!」

「え?なぜだ?」

「だって!ずっと聖女を探してたんでしょ!」


 そう言って何故か涙目で、リルが両手でハルの胸をど突く。それで落ちそうになったリルをハルは慌てて掬い上げた。


「聖女はもう良いんだ」

「来た!」


 先程のと同種の魔獣がまた姿を現す。

 魔獣がこちらに向かって走り出すのと同時に、リルは魔獣を撃った。

 魔獣の上半身が弾け飛ぶ。

 すると直ぐにリルは、ハルの腕の上で体を捩り始める。


「リル?」

「なにが良いのよ!」

「落ち着いてくれ」


 リルの後頭部に手を当てて、リルに顔をハルに向けさせながら、ハルは静かな声を出した。

 リルは歯を食いしばりながら、ハルを睨む。


「後で話そう。だが私はリルから離れる気はないし、聖女に会う気もない」

「うそ!」

「嘘ではない。リルが会いたいなら同席するが、そうでないなら、今後も聖女に会う事はない」

「だって、さっき、聖女を庇ったじゃない」

「そうではない」

「また来た!」


 同種がまた姿を見せ、2人に向かって走って来た。


「むこうも!」


 別方向からもう1頭も来る。

 リルは2頭とも倒すと、またハルの腕の中で身動(みじろ)ぎをした。

 ハルはまたリルの後頭部に手を当てて、リルに自分の方を向かせる。


「私は聖女を庇っていない。だが聖女はこの街の役に立つと考えている。だから今はまだ、聖女を攻撃するな」

「・・・後なら良いの?」

「ああ」


 躊躇わずに肯くハルをリルは見詰めた。そして顔を背けて「分かった」と言うのと同時に手を伸ばした。


「次!」


 リルの指差す先から、また同種の魔獣が姿を見せた。


「分かった」


 ハルはリルが攻撃をしやすい姿勢に抱き直した。

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