こんな感じ!
脚の治った魔獣は、1頭目がやったのと同じ様に、自分の胸を叩いて鳴らし、音を周囲に響かせた。
ハルはその隙だらけの魔獣の胸に、硬く作った礫を高速で撃ち込む。
礫は魔獣の体を突き抜けて、背後の建物の壁も突き破った。
ハルは慌てて礫に力魔法を掛ける。礫は急激に速度を落とし、建物の中の壁に当たって床に落ちた。
礫に貫かれた魔獣は、仰向けに倒れてのたうち回る。
その傍でもう1頭の魔獣は、地面から抜け出ていた。
そしてまた、胸を叩いて鳴らした。
ハルもまた、隙を見せる魔獣の胸に、今度は魔獣の体内に収まる様に礫を当てた。
こちらの魔獣は蹲る様に前のめりに倒れ、そしてやはりのたうち回る。
「また来た!」
リルの言葉にハルが振り向くと、同じ種類の魔獣が2人を目掛けて走って来る。
「もう1頭!」
ハルが指差す方にも、同種の魔獣が姿を見せた。そして2人の方を見ると、やはり駆け寄って来る。
「リル。この2頭に止めを」
「どうやって?!」
「今なら胸に穴が開いている。魔石を狙える筈だ」
「2頭とも魔石が砕けてるよ?!」
「なに?」
「だからあんなに苦しんでるんだし!」
「それは、しまったな」
「どうしたら?!どうしたら?!」
慌てるリルに、ハルは言葉を返せない。
ハルは迫ってくる新手の2頭から目を離さずに、対応を考えてみるが浮かばない。
ハルは無意識にリルの頭を抑えて脚も抱き寄せ、リルの体を包み込むように、自分の体に押し付けた。
ハルの腕の中で丸まりながら、リルは突然目を見開いた。
力魔法で瓦礫を地面から広い、バッグから魔石を取り出す。
そしてその2つを合わせて、迫って来る魔獣の1頭に向けて撃ち出した。
当たった魔獣の上半身が、弾け飛んだ。
「こんな感じ!」
もう1頭が殴り掛かって来るのをハルは躱し、その背中を蹴り押す。
魔獣は転がって前転から立ち上がり、振り返ったところをリルに撃たれ、その上半身を弾け飛ばした。
「こんな感じよ!」
ハルは魔力の流れから、リルが土魔法と力魔法を使ったのは分かったけれど、何をしたのかは分からない。しかしリルが魔獣の倒し方を見付けたのは分かった。