ふざけんな!
リルの作った土ドームを中から打ち破り、魔獣が立ち上がる。
「なんで?!」
そう叫ぶリルをハルは直ぐさま抱き上げた。
魔獣は2人に気付くと睨みながら唸る。そして空を見上げ、魔獣は自分の胸を連続で叩いた。その音が周囲に響く。
「なんだ?!」
「なに?!なに?!」
「あれはなんだ?魔法か?」
「分かんない!リンゴリラの資料に載ってなかった!」
「そうなると別種か?」
「他でも聞いた事ない!」
胸を叩くのを止めると同時に、魔獣は2人に襲い掛かる。ハルはそれを躱して魔獣から距離を置いた。
「速度は変わらない。肉体強化魔法ではなさそうだな」
「魔力の流れは変わってないから、単に自分の気持ちを昂ぶらせたのかも?」
少し落ち着きを取り戻したリルは、ハルの考察に付け加える。
魔獣はまた距離を詰めてハルに殴り掛かる。ハルはそれを腕で受けた。
「強さも変わっていないな」
ハルが殴られた事にリルが叫ぶ。
「自分から当たりにいった!」
「分からない相手からは、情報を収集しなければならないだろう?」
「そうだけど!強化してたらどうするのよ?!」
「リルを信じたのだ。魔力の流れは変わっていないのだろう?」
「信じてんなら確かめなくて良いでしょ?!」
「なるほど、それもそうだな」
また魔獣が殴り掛かって来るが、ハルは今度は躱した。
ハルの落ち着きが少しうつったリルも、魔獣の足下に土魔法を撃って邪魔を始める。
魔獣が躓いて体を開いた瞬間に、リルは礫で魔獣の股関節を狙った。
しかしそれは魔獣が腕を出して防ぐ。
魔獣の腕には傷を付けられたけれど、魔獣はそれをまるで意に介さない様に、ハルに殴り掛かって来た。
ハルは魔獣の拳を受け流し、魔獣に足を掛けて背中を押した。
魔獣は蹈鞴を踏むが倒れない。
魔獣がハルを振り向こうと片脚に体重を掛けた瞬間に、リルはその足下に穴を開けた。
踏ん張る地面を消された魔獣は、両手を地面に突いて体を支え、もう1本の脚に力を込める。
リルはその魔獣の回りの地面も穴にした。
魔獣は胸まで地面に埋まる。
ハルは剣を手にして、魔獣の頭を切ろうとした。
「あぶない!」
リルが魔石を撃ち出した先には、もう1頭の魔獣がハルを襲おうとしていた。
リルが撃った魔石は魔獣の体に触れると弾け、魔獣はそのままハルに殴り掛かる。
ハルは剣で魔獣を去なし、その背中を切り付けた。しかし剣も弾かれる。
「硬いな」
「それなら!」
魔獣が振り向いたところをリルは、リルはその頭部に瓦礫を打つけた。
リルは仰け反った魔獣の股関節に礫を当て、また片脚を千切り掛ける。
しかし魔獣はもう一方の脚で後ろに飛んで、2人から距離を取った。
そこに上空からまた、魔力が降り注ぐ。
「え?!なんで?!」
千切れ掛かっていた魔獣の脚がみるみる治っていく。
「ふざけんな!!」
リルは神殿の尖塔に向かって、拳を振り上げて叫んだ。