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実技訓練②

「やはり今年も脱落者が多いですね、先生」

Aクラスの担任であるバーネスは、Sクラス担任のロアールに話しかける。先程からずっと木にもたれかかって目を閉じている。

「先生?聞こえてます?…はぁ」

やはり才能がある人間はマイペースだ。こちらの声など全く聞こえていないのだろう…。


そんなバーネスの事など露知らず、ロアールは新しく自分の教え子となった規格外の双子の様子を観察していた。何故かあの双子には魔物たちがあまり寄り付いていないようだ。

(本当に謎だな。この前の授業の時といい、全く実力が測れない。)

ロアールがリエとニールの正体を探るために学園に配属された筆頭魔術師様だとはまだ誰も気づいていない。



「やっぱり他の班にも魔物にも全然出会わないなぁ」

リエが呟く。

買っておいた昼食を食べつつ、襲ってきた魔物を狩っているうちに夕方になってきた。

「俺たちが幸運だってことじゃないかな?」

と言うルベ。魔物に出会う度に逃げ回っていたのに全く疲れた様子がない。

「ある意味不幸だろ。もう少しいろんな魔物が見れると思ったのにさぁ。」

「そんなことを言うのはきっとニールくらいだと思うよ。」

魔物の少なさにガッカリしているニールにアルが苦笑する。アルの言う通りだ。『普通』の人はそんなこと言わないだろう。

「夕方になってきたし、そろそろ食糧の調達と寝床の準備をしよう。」

「よし!ニール、俺らで食糧調達行こうぜ!」

意気揚々とルべが言う。本当に元気だなあ。あんなに走り回ってたのに。

「おう!どっちがたくさん肉狩れるか勝負な!」

「望むところだ!」

そう言って2人で走っていった。

さっきまで散々魔物のこと可愛がってたのに、既にニールの頭の中では『肉』になったのか…

「じゃあ僕らは拠点の準備をしようか。」

アルが苦笑しながら言う。

「そうだね。じゃあとりあえず家作ろっか!」

「…ん?」

何故か困惑しているアル。聞こえなかったのかな?

「家だよ、家!」

「あぁ、いや、別に聞こえてない訳じゃないんだけどね…」

どうしたんだろう。あ、もしかして王子だから、家って聞いてお城想像してる…?

「ごめんね、簡易的なものだから、お城ほど豪勢にはできないよ!」

「…うん、それは大丈夫だよ…そもそも家を作るってこと自体が普通の人間からしたら、おかしいんだけどな…」

アルが小さく呟く。

大丈夫だとは言いつつ、やっぱり小さな家だと嫌なのだろうか。

(アルのためにも、出来るだけ大きな家にしよう!おかしいって思われない程度に…!)

アルの呟きが聞こえなかったリエは変な方向に気合いを入れている。

「じゃあ作るね!build(ビルド)!」

一瞬で、魔物が棲みつく危険な森には似合わない大きめの小屋が出来た。

「なんと、家具つきです!!」

自慢げに言うリエ。

「……すごいね…」

アルは絶句している。やっぱり小さすぎた?!

でも!王子様には似合わないのは分かってるけど!これ以上大きい家は絶対目立つし、『普通』じゃないよね?!

「…っあの、これ以上大きくは出来ないんだけどね、ベッドとかふかふかだし、キッチンもあるから!野宿よりは快適なはずだよ!」

この家で満足してもらうべく、必死に訴えかける。

「ん?あぁ、いや、別に小さいなんて思ってないよ?そもそも家を作れること自体が凄いんだし。」

アルの言葉にリエは驚く。

「え?そうなの?でも、アルは出来るよね?」

「僕もできないよ。こんな魔法初めて見たし。」

「ええぇぇ!!いや、でも、アルも練習すれば出来るようになるよ!簡単だから!」

リエは、自分は『普通』だと信じてもらうべく、焦りながら弁解する。

「多くの人が知らないであろう魔法を知ってることについては弁解しないんだ?」

アルが笑いながら聞いてくる。

「うっ、それは、その、ほら!オリジナル魔法作る人っているじゃない?それと同じだよ!」

「ふーん?」

「もう!からかわないでよー!」

にやにやしながら相槌を打つアルに対し、リエが怒る。

「何イチャついてんだ?」

「…うわっ!なんだこの家!」

ニールとルべが帰ってくる。

「あれ、思ったより早かったね。」

ニールの言葉が聞こえてないかのようにアルが言う。

「…まぁ、肉取ってくるだけだったしな。昼間動き回って疲れたし。」

「ねぇ?!何この家!無視しないでくれよ!!」

「確かに、それもそうだね。じゃあさっさとご飯食べて寝よう。」

突然現れた小屋の存在に驚くルべのことを2人して無視している。2人とも冷たいなぁ…

こう思うだけで応えないリエもよっぽどだが。

「早く休息を取るのには私も賛成!睡眠は大事だからね。」

「よし、調理は任せてよ。僕だけ何も出来てないし。」

アルが言う。王子なのに料理出来るんだ…

「なぁ!飯にすんのは俺も賛成だけどさ…この家リエが作ったのか?いや作るとかありえるのか?俺らがいない間に何があったんだよ!」

未だに訴えかけるルベだが、説明するのも、異常だと思われるのも嫌なので聞かないことにする。こうして1日目が終わった。この先何が起こるのか、なぜ魔物たちが寄ってこないのか、分からないことばかりだが、とりあえず楽しいのでオールオッケーだ。

明日は何が出来るかなぁ…。

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