私、やりましたわ!!
アンナが見つけた青年は、彼女の方を鋭く睨むと、「ちっ」と小さく舌を打った。そのままさっと踵を返し、会場から逃げ出そうとする。
「お待ちなさい!!」
アンナは渾身の「悪役令嬢スライディング」をかまし、青年との距離を一気に詰めた。何度も死に戻りをした彼女の実力、決して舐めてはいけない。
「うぜぇな!」
黒づくめは懐からナイフを取り出し、近づいて来たアンナの脇腹を、一気にグサッと突き刺そうとした――。
「残念ですけれど、それは残像でしてよ」
――スライディングを極めた彼女は、誰の目にも留まらぬ速さで、青年の後ろに回り込む。振り向くよりも早く、彼女は彼の上に馬乗りになり、そして大声で叫んだ。
「捕まえましたわよーーっ!!」
青年は騎士たちに捕らえられ、スタン王子の前まで引きずられた。アンナは意気揚々として、彼を質問攻めにする。
「さあ、白状なさい!! ヴェイン騎士団長の毒殺を試みたのは、あなたでございますのよね!?」
彼女が激しく問い詰めると、青年は悔しそうに顔を歪めた。
「どうして犯行に及んだのか、正直に答えなさい! 第一王子のパーティで殺害を企んだ、その理由を!」
……ついに観念した青年は、苦々しい声で返答した。彼の胸の内にあった、犯行の動機を。