エピローグ
「私達は別の人間になる事を選んだのに1人に戻りたがってたなんて夢見て寝惚けてたとしか思えないわ」
「オマケに誰のために2人に分裂したのかすら忘れてたんだからね。
笑い話にすらなってなかった」
お互いに寂しそうな目をしながら笑う。
それはお互いがこの先の事を予想していたからだろう。
「そんな私の寝惚けた頭を引っ叩いて起こしてくれたのは邪険に扱ってしまった亜美だった。
亜美は私たちの為に何処までも考えて付き合ってくれた……本当に親友で良い女。
私が男だったら一生大事にするのに」
「僕も同じさ。
涼は何処までも僕と一緒にいてくれて色々悩みながらも力になってくれた。
僕が女だったら絶対に惚れてるくらい良い男さ」
そう言って2人は先程とは違い心から笑った。
「ふふ……そういう訳だから亜美のこと頼んだわよ。
異性のぼく」
「もちろんさ……異性の私も涼と幸せになってね」
そう言って固く握手をした後で2人は覚悟を決めた表情をした。
「本の妖精さん。
私たちどうしても叶えたい願いがあるの」
「今までみたいに大掛かりじゃない……少しだけ変えて欲しいんだ」
そうして2人が願った事は……。
♢ ♢ ♢
「お、今日は早いじゃない。
おはよう、涼」
「ああ、何か目が覚めっちまってな。
おはよう、亜美」
学校がある平日の朝、寮と亜美は双葉家の前へのやってきた。
亜美がインターホンを鳴らすと家の中からバタバタとした音が聞こえてきた。
「ほら、2人とも。
涼君と亜美ちゃんが迎えに来てるから早く支度しなさい」
「ちょ、ちょっと待って!
ねぇ、あれ何処にやったか知らない?」
「昨日リビングのテーブルに置きっぱなしだったよ。
僕のスマホはどこいった〜!!」
「……あ、ごめん。
私のバッグにスマホが2つも入ってた。
同じ機種だから紛らわしいのよね」
「今度カバー買いに行って分かりやすくしよう。
よし、準備オッケー」
「私もオッケー。
お母さん、行ってきます」
「行ってきまーす」
「はいはい、2人とも気を付けてね」
朝の騒乱が落ち着いた所で双葉家の玄関が開けられる。
中から姿を現したのは2人が見慣れた双子の姿。
『結那、優香、おはよう』
「おはよう、2人とも」
「待たしちゃってごめんね」
そう言って結那は亜美の横に、優香は涼の横に並んで4人は仲良く登校していく。
あの時、2人が願ったのはお互いの名前を少しだけ変えること。
[ゆうき]という名前を捨て去る事で別々の人間に変わる最後の一歩を踏み出したのだった。
こうして2人は同じ人間ではなく、別の人間としての道を選んだ。
その道がどう続いていくのか分からない。
でも、どんな困難があろうときっと乗り越えていけるだろう。
隣に信頼できる相方と恋人と親友がいるのだから。
かなり強引でしたが今回の話で完結とさせていただきます。
正直な話をすると今回は自分の力不足を痛感した一作でした。
このジャンルは初挑戦とはいえ、楽しみにしてくださっていた方には申し訳なく思っております。
次回作の構想は既にあり、そちらは慣れたジャンルをチョイスしていますので、もしまた読んで頂けるなら是非ともよろしくお願いします。
また、合わせて現在連載中の勇者と魔王の配信稼業もチェックしていただけると嬉しいです。
長々と失礼しましたが最後にもう一言だけ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




