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まるで別人のよう

「本当に今回はウチの騒動に巻き込んでしまって申し訳なく……」


なし崩し的に部長となってしまった優希の最初の仕事は須頃への謝罪であった。


結果だけ見れば動画配信部のゴタゴタに巻き込んでしまったのだから当然なのかもしれない。


「いえ、私達も今回の一件では色々と考えさせられましたよ。

これを機会にもう少し外へと活動を広げてみよう思います。

その為には涼君や結城君という若い力が必要となるでしょう。

これからも協力して頂けますか?」


「勿論です!」


「ああ、今回の話は俺にとっても勉強になったからな。

部長を精一杯サポートさせてもらうよ」


こうして一波乱はあったものの結果的にそれぞれの部活の結束を高めた。


「それでは今後の事を話し合わなければいけないので失礼します」


そう言って去っていく動画配信部の面々を険しい顔つきで見る人物がいた。


「結城……どうした?」


「……え?」


「何か悩んでる顔してる気がしたんだが……」


「優希がさ……僕の知っている優希と全然違った気がしたんだ。

今まではもう一人の自分って感じだったんだけど、今日は全く知らない人みたいだった。

僕だったらあんな風に急に部長の座を渡されて引き受けられないと思う……でも、優希は戸惑いこそすれ拒否するという感じは一切無かった。

それが僕には信じられないんだ」


そう言って俯く結城。


彼の心の中には自分と同じだと思っていた片割れが一人でどんどんと先に進んでいっている……そんな感覚に囚われていた。


「確かお二人は双子という事でしたね?」


そんな結城に対して須頃部長が優しく語りかける。


「あ、そうなんですよ。

昔からいつも一緒に行動している仲の良い双子でして」


対外的には2人は双子ということになっているので、動揺している結城が妙な言葉を喋らないように涼は咄嗟にフォローを入れた。


「これまでは同じ歩みで同じ道を進んでいたのでしょうね。

しかし、お互いに違う道を進んだ事によってズレが生じてしまった。

彼女が自分よりも成長しているように見えたのならば、それだけ彼女は試練を乗り越えてきたのでしょう」


「試練を……乗り越え……?」


「そうですよ。

残念ながら今までの私達の部活動ではそれ程の試練は訪れませんでしたしね。

でも、これからは全員が一丸となって目標に向かっていきましょう。

結城君にはまだまだ成長の可能性が眠っているでしょう。

ですから、私とこのアナ研と一緒に共に成長して頂けませんか?」


結城の眼を真っ直ぐに捉えて語る須頃の言葉には一切の偽りなく本心からそう言っているのだという事が感じられた。


「部長……はい!

僕は優希に負けないくらいに成長したい。

だから、これからもよろしくお願いします」


こうして2人は固い握手を結ぶ。


その光景を見ながら熱い男同士の友情を黙って見守っていた涼の目には一筋の涙が流れていた。

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