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第九十八話『馬鹿と魔法は使いよう』

 僕には奥の手が3つある。

 奥の手なのに3つもあるのかと、疑問に思うかもしれない。

 しかしそれは、僕がそれだけ奥深い人間だということを表しているに過ぎない。


「ほう、魔法は使えないと聞いていたが」

「使えませんよ、ただハサミの使い方を知らなくともハサミを持つこと自体はできるでしょう、それと同じことです」


 奥の手の中の1番手前、魔装まそう

 本来なら身体に魔力を纏わせて、自身の耐久を強化するなどの使い道があり非常に低コストの魔法なのだが。


 魔法の使えない僕は、身体に魔力を留まらせることができない。

 それ故に、手と足から魔力が常に流れ出ている状態なのだ。さながら開きっぱなしの蛇口の様。


 これが奥の手の理由、それは使うと死ぬほど疲れるのだ。この死ぬほどというのは、比喩ひゆではない。


「禍々しいな」

「僕もそう思います」


 禍々しく見える理由はずばり、流され続ける魔力だ。

 黒いもやが手や足にまとわりついて、まるで蛇のようにとぐろを巻いている。


「正義とか何とか言ってましたよね」

「ああ」

「そんなこと普段から考えて生きてる人なんてそうそういませんよ」


 言いきろうとする前に、ルベルトが足を踏み込んだのを見て即座に次の攻撃が来ることを見切った。

 大剣が振るわれる、それもイカれた速度で。


「ほう、なるほどな」


 振るわれた剣を腕で防ぎ、弾いた。

 通常なら腕ごとぐちゃぐちゃにされるのだろうが、魔力を纏っている今は鋼鉄にも優る強固さをものにしている。


 そして、あくまでも学者であるルベルトは何かを悟ったらしい。打開策を練られる前に仕留めなければならない。


「その様子だと、長くは持たないらしいな」


 僕も拳を何発か叩き込むが、大剣がそれを阻む。

 ルベルトは後退するが僕は逃れることを許さず、さらに畳み掛けるべく前へと踏み込む。


「どういった時に、人が失敗するかわかるか」

「さあ、知りませんよっ!!」

「自分が優位にたっていると、思い込んだ時だよ」

「なんっ……」


 腕を捕まれ地面へと崩れさせられた、次の大剣が僕に届く前に何とか腕で身体を守るが、吹き飛ばされ体制を崩してしまう。


 すぐさま視界を敵へと向ける、向けようとした。

 だが向けた先にルベルトがいない、どこへ消えた?


 いや、そうじゃない消えているわけがない、いくら混乱したからってその考えに至るほど馬鹿じゃない。

 ────上だ、跳躍したルベルトが今まさに大剣を叩きつけようとしているんだ。


「明らかに学者の動きじゃあないっ!」


 なんとか、転がり込むような形で上からの一撃を避けた。

 しかし、間髪入れず大剣を避けて隙だらけの僕を狙って刺突が襲う。


「悪人を野放しにする事こそが、真の悪だ、そう思うね、俺は」


 刺突を腕でピンポイントに防ぐ、痛みは勿論あるが死なないのなら問題は無い。

 しかし、攻撃を防いだ僕を待っていたのは。


 またあの薙ぎ払いだ、それも力と物量に任された強烈な一撃。


「ふざけっ……!」


 咄嗟に攻撃は防いだが、しかし衝撃で大きく飛ばされてしまった。

 戦っているのは場外に出ると死に至る、高層の工事場リング


「…まずいっ」


 上にかけられた鉄骨に、なんとか捕まり場外負けにはならずに済んだ。

 弾丸が飛んでくる前に、僕はそこから勢いづけてルベルトへと蹴りを食らわせにゆく。


「重い一撃だ、この大剣よりも重い」


 僕の攻撃が、ほぼ全て大剣に防がれる。

 それだけ大きな幅のある剣を、どうしてこうも自由奔放に振り回せるものなのか。


「疲れただろう、これ以上、長引かせる必要もない」


 大剣に、蹴りを押し返された。

 体勢を崩す訳にはいかまいと、一度離れ体制を取り直す。

 向き直ると、また視界からルベルトが消えていた。


「悪人は淘汰されるべきなんだ、すまない」

「……ひとつ言いますと」


 ルベルトの大きく飛躍してから、振り下ろされる一撃。

 それを後ろに下がり、避ける。


「一度でも見せた戦術を、同じ相手に使わないことを推奨します」


 そして刺突への派生。

 下腹部へと襲う大剣、僕は瞬間的にその刃を踏み付ける。

 必然、ルベルトは体勢を崩し、僕がその隙を見過ごすはずもなく鼻先に拳の一撃を叩き込んだ。


「なん、ぐがっ!?」


 長く戦場を生きのびてきた猛者の、奥の手の一撃を顔面に食らって立っていられる学者なんてものはいない。

 決着はついた。


「勝負が決まる時って言うのは、意外と一瞬ですよ」


 僕は倒れたルベルトさんから例の球体を探り、内ポケットから引き抜いて。

 黒く魔力が漂う足で、それを踏み砕いた。

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