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第九十七話『戦闘。鉄鋼 駆岳』

 あまり体格はがっしりとしていない方だと言うのに、その男が振るう大剣の速度が尋常じゃあなかった。


「志東くん、俺はね、殺す人間のことは知っておきたいんだ、余裕があるなら、君の事を聞かせてくれるかな」

「なら剣を振るのやめてくれませんか?」


 僕の提案を聞き入れる気はないらしい。

 大きく飛躍すると大剣を振り下ろして斬りかかってきた、動きが大きく避けるのは容易いが。


「あぶっ……」

「避けるのが上手いね」


 着地と同時に突きへと転じ、攻撃の隙を見せてくれない。

 ただえさえ余り広くない戦場、追い込まれすぎると闇の底へと真っ逆さまだ。


「質問だ、少し哲学的な話になるが」


 間合いをとると、ルベルトはまた語りかけてくる。策を練らせないつもりだろうが、僕への効果は薄い。

 攻撃の隙がない、借りた短剣は大剣の前には役に立たない。戦場は狭く、場外は死だ。


「君は、正義とはなんだと思う?」

「さあ、なんでしょうね」


 答えるや否やルベルトは瞬く間に距離を詰め斬り掛かってきた、叩き潰すような斬撃を疾風の如く三連続。

 ほぼ避けるように短剣で捌くものの、長くは続けられない。


「俺は話をしようと……」


 そして何故かルベルトは身を縮めた、しかしこれは完全な攻撃への隙だ。一撃で終わらせれば良い、この好機を逃す訳にはいかない。


「…言っているんだ」

「な、がぁはっ!?」


 僕の短剣が届くよりも早く、弾かれた弦のように振るわれた大剣が僕を襲った。

 吹き飛ばされ痛みに悶える暇も与えられず、ルベルトの拳銃から発射された鉛玉を短剣で弾く。

 急所へのダメージは防げたが、足に一発撃ち込まれた。

 痛い。


「それで、君は正義をなんだと思う?」

「まずは、そっちのを聞かせてくださいよ」


 足をやられると、立ち上がるのが億劫になる。

 ただ幸いにも向こうは僕を試している、時間稼ぎは容易だ。

 学者は自分語りが好きだと、相場が決まっているものなのだ。


「正義か、私にとって正義とは信念だ」


 案の定、学者は自分語りが好きなようだ。

 僕はさりげなく、足の損傷を確認しつつ何か決定的な一撃に繋がるものはないかと見回した。


「人間は独り善がりの正義感を持ち、それに反するものを悪、相入れるものを正義の味方とする」


 ルベルトは語りながら、拳銃を再装填リロードしている。

 今詰寄ることは出来るだろうが、そうした場合は拳銃を投げ出して大剣を振るう選択肢をとるだろう。

 今の僕にできることは、ただ考えることだ。


「俺にとって、君は悪か、それともそれ以外の何か、なのか、興味がある」

「なら僕が正義の味方だとしたら、殺さないで貰えますかね」

「俺は無駄に期待を持たせる趣味は無い、さあ答えてもらおうか、君にとっての正義とは何なのだ」


 出来れば、彼の正義に沿った正義感を語りたいところだ。

 あまり当たり障りのない、スタンダードで普遍的な、ありふれた答えを言おう。上手く事が運べば、手加減してくれるかもしれない。


 ここはそう、よく周りから聞くような答えを返せばいいはずだ。無駄に深く考える必要もあるまい。


「えっと、お金になる事、ですかね……」


 言い終えるよりも早く、眼中へ弾丸が飛び込んできたが一発、射撃されただけだ。目前に短剣で弾く。 

 そしてすぐさま後ろへと下がった、しかしルベルトは追い詰めるように大剣の連撃を繰り出す。


 間を空けず瞬いた間に刃が振るわれる、正しく連撃。それも半身よりも少し大きいような物をだ、本当に科学者なのか問いただしたくもなる。


「今決定した、志東くん、俺にとって君は相入れることのない悪だ」

「やっぱり、そうなりますか」


 距離をとる為の犠牲に弾き飛ばされた短剣は、夜闇の奥底へと吸い込まれていった。

 限られた手段は少ない、これは、奥の手を使わざるを得ないだろう。

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