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夢見心地

作者: 夏野篠虫

『お姉ちゃん起きて!』

「もう少し・・・まだ寝かせて・・・」

 ほんのちょっと覚めた意識は再び深いまどろみに落ちていく。

 そこに辿り着いたら、夢の続きが始まる。ストーリーの続きが曖昧だけど、私は寝る前に読んだ漫画のヒーローのポジションに成り代わっている。大型スーパーと地下鉄駅と遊園地が分解されて融合したような場所を小学校の友達や親戚や仕事仲間と共にパルクールの如く駆け回る。

 突然の敵の来襲に足がよろける。その隙に敵の一撃が私の身を軽々と吹っ飛ばした。コンクリートに叩き付けられた。呼吸が苦しい。

 だけど私はヒーローなのだ! 仲間の声援ですぐさま立ち上がり、オリンピック選手を超える脚力で駆け、跳び、回し蹴りを敵のみぞおちに食らわせるッ! 敵は血を吐いて建物の柱にめり込んだ。

 つかの間、背後から誰かに羽交い締めにされる。

 そんなので私を止められると思ってるの? いつの間にか手に握ってた使い慣れたナイフで、後ろの奴の太腿を突き刺す。力が緩んだら下から抜け出し、振り向きざまに喉に一閃!

 私の顔に血のスプレーが吹き付けられた。

「お願いだからっやめて、起きて!!」

 私はパジャマの袖口で顔を拭った。

「もう少しだけだから・・・・・・あとちょっとで全員倒せるんだから」

 刃物を構えた私を恐れて、どこに隠れていたんだが、わらわらと敵達が逃げ出す。近い奴をロックオン、手早く終わらせちゃおう!

 足を狙って切りつけ走れなくなったとこで心臓をグサリ。この作業の繰り返し。

 あれ? 漫画のヒーローだったはずなのに、さっきからゲームの悪役をやってるような・・・?

 まあいいや。敵がいなくなるまでもう少しだから。でも段々敵が増えてきてる? てか知らない人、多くないか・・・?



 今日午前7時30頃、○○県××市の住宅街でパジャマ姿の女性が刃渡り20cmの包丁を振り回し同居する父母と姉弟を殺害、さらに路上で通りがかった人を次々に殺傷しました。警察に現行犯逮捕された犯人の女性は終始意識朦朧とし、目撃者によると、犯行時も「もう少し、もう少しだけ」など独り言を呟いていた模様。警察は犯人の精神状態など含め慎重な捜査を――


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