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A Purple Tale  作者: 雨戸稲
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クイズ大会の賞品

 10日後の日曜日、桂介は電車に乗って東京に向かっていた。前に雑誌の懸賞で申し込んだクイズ大会への出場のためだ。その大会は大手製薬会社が主催しているイベントで、全問正解すれば賞金3万円と副賞がもらえることになっていた。桂介は地元の駅から在来線と新幹線を乗り継ぎ、東京駅に到着した。桂介はいわゆる「乗り鉄」と大学時代の友人から言われたほど日本の鉄道に詳しかったので、東日本のJRや私鉄の路線は大抵知っていた。東京駅からは山手線と常磐線を乗り継ぎ、北千住駅に到着した。大会の会場は足立区の北千住駅から徒歩5分のところにあった。会場で受付をすませると、係員がにっこりと挨拶した。

「本日はお越しいただきありがとうございます。会場設営スタッフの久慈と申します。不明な点がございましたら、私に質問してくださいますようお願いします」

「あ、はい。ありがとうございます。」桂介は軽い挨拶と会釈をした。問題が出るまで30分以上あったので、桂介は待機室で読書することにした。

出題の時間がやってきた。問題は全部で10問で、最初のうちは日頃からクイズ番組や問題集で練習している桂介にとってはやさしかった。5問目でこんな問題がでた。

「ロシアのロマノフ朝の皇帝に、ピョートル一世がいます。彼は何代目のツァーリですか?」

桂介は即座に答えた。

「第6代目です」桂介は歴史が得意なので、この問題には自信があった。

「正解です。見事問題の半分に正解いたいました。」

桂介はその後も問題に答えていき、最後の10問目までいった。

「では、最終問題です。昭和日本の文豪、三島由紀夫の作品のタイトルを5つあげてください」

桂介は考え込んだ。趣味は読書で、太宰治は割と読んでいた。けれど、三島由紀夫はあまり読んでいなかった。処女作はたしか「あれ」だったなどと考え込んで勢いで答えてしまうことにした。

「仮面の告白。潮騒。金閣寺。サド侯爵夫人・・・それと、わが友ヒットラー」

司会者が判定を出すまでの間は長かった。桂介は緊張で生きた心地がしなかった。彼は人並み以上に緊張しやすい性格だったからだ。

「正解です!おめでとうございます。賞金3万円と副賞の獲得です!」スタッフが3万円の小切手と段ボール箱をもってきてくれた。その箱の中に副賞が入っているのだろう。などと考えていたら、先ほど受付で出会ったスタッフの久慈がやってきてこう告げた。

「こちらは、当社の試作品で、「ムラサキ」と呼ばれている粉薬です。こちらを服用したのち、相馬様が想っている、例えば恋をしている相手に思いを伝えると、7日間だけその意中の相手をとりこにできます」

全くきいたことがない薬だったので、桂介は怪訝に思って質問した。

「そんな薬は初めて見ました。その効果は、信じていいんですか?」

「こちらはあくまで試作品でして、うまく働かない可能性もございます。もし副作用などで体調を崩してしまった場合、当社が責任を取ります。もちろん、服薬は強制ではなく、飲む飲まないは相馬様にお任せします」

桂介は怪しいと思いながらも、

(まあ、いいか。もらえるものはもらっておこう)と考えて、追及はしなかった。


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