持って参れ、青き森の黒ダイヤ!
時は平安時代。
都にはかぐや姫もかくや、と評される美しい姫がおりました。
毎日のようにたくさんの公達から求婚の文が届きましたが、姫はため息をつくばかり。
なぜなら、姫には約束を交わした幼馴染の殿方がいたからです。
しかし、彼の身分が低いばかりに父親から結婚を許されることはありませんでした。
ある日、2人を不憫に思った陰陽師が現れ彼らに言いました。
「あなた方に呪をかけましょう。姫は今から私が言うことを結婚の条件として皆に求め、彼を信じ待ち続けなさい」
その夜、父親が設けた宴の場で姫は高らかに宣言しました。
「わらわを妻にと望むならば……持って参れ、青き森の黒ダイヤ!」
翌朝から貴族の若者達は我先にと森へ向かっていきました。
しかし、「青き森」はどこなのか、「ダイヤ」とは何なのか、誰もわかりません。
家来を使い国中の森を探させる者、占者に場所を占わせる者、「これぞダイヤだ」と適当な物を差し出す者……いろいろな者がいましたが、誰もが認めるような「本物」を持ってくる人はいませんでした。
幼馴染の彼も国中を歩き探しましたが手がかりすら掴めないまま。その上、都を出て数年が経った頃、最愛の姫が病にかかり亡くなったことを知りました。
絶望の中、彼は陰陽師の言葉を思い出しました。姫に提案をした後、自分にだけ残した言葉を。
「あなたにはもう1つ呪をかけました。望みが叶う日までその姿が変わらぬように。永い永い時間はかかるけれど、姫と結ばれる日は必ず来る。それまで決して諦めぬように」
涙を拭い、彼は探し続けました。
そして1000年が経った頃、彼はようやく答えを得ました。しかし、姫はもうこの世にいません。
そこで彼はさらに100年の時をかけてタイムマシンを作り、姫のもとに戻りました。「青き森の黒ダイヤ」=「大間のマグロ」を携えて。
姫の屋敷に集った貴族達は見たこともない大きく立派な魚に驚き、脂の乗った美味な身に感激すると、満場一致で「これこそ黒きダイヤ」と認め、姫の父親も2人の結婚を許しました。
その夜、姫の寝所を訪ねた彼は今までのことを彼女に話したのでした。
彼にとっては1000年を超える出来事。でも、姫にとってはたった数日間の不思議な物語を。
「タイトルは面白そう!」の「森の」へ投稿した作品です。
あらすじを膨らませて1つのお話にしました。
気に入ってくださるとうれしいです。