おいでませ下界4
そろそろ街に行きたい。。
更新:段落の先頭字下げ処理・・・
不自然に切り開かれた森の中。
バシャァッバシャァッと水を撒く音が響く。
血まみれの大きな獣の死体が横たわる傍に、水浸しの男たちが倒れていた。
いや、小柄な少年が、森から意識を失っている男たちを引きずっては並べ、引きずっては並べ、と介抱していた。
少年は意識のない男たちを寝かせると声をかけ、肩を揺さぶり、反応が無い相手には、顔に勢いよく水をかけ周囲に水たまりを作る。
そしてまた声をかけ、肩を揺さぶり、を繰り返していた。
しかし男たちは呻くように荒い呼吸をするだけでピクリともしない。
少年はしばし考え込むように視線を彷徨わせると、何かに納得したように頷き、彼らに手を翳した。
「パーフェクトヒール」
目が眩むほどの光が辺りを包み込むと、男たちの荒かった呼吸が規則正しく落ち着いたものになり、中には目元をぴくぴくと動かす者も居た。
ついでに獣の血が混ざった水も綺麗になり、血の匂いも消え失せた。
血の匂いを頼りに向かっていた獣たちは、突然消えた匂いに戸惑いながらも、消えた匂いを追えず、巣へと帰っていった。
そんなことはつゆ知らず、呼吸が整った男たちの様子に、少年はもう一度考え込むように視線を彷徨わせると、一つ頷き、満足そうに目を細め、男たちの意識が回復するのを待った。
元給の神は、まるで初孫を見る祖父のような眼差しでその時を待った。
――――――――――――
彼らが苦しそうにしていたので調べてみた所、不可抗力とはいえ、吹き飛んだりめり込んだりした時にどうも怪我をしていたようだ。
人間はどうも脆いらしい。
とりあえず魔力次第でどんな怪我にも病気にも効くという魔法を使ってみた所、完璧に治ったようで、男たちの状態は<重篤>から<気絶>に変化したので良しとした。
ふと周りを見ると、パーフェクトヒールの効果なのか、周囲の植物が青々と生い茂っている。
おまけに血まみれだった獣も、綺麗になる所か頭と胴体がくっついて生前の愛くるしさを取り戻していた。
まるで生きているかのような状態に戻った獣に近づき、そっと手を触れてみる。
さすがに生き返らせることはできなかったようだ。
そのまま毛皮に沿って何となく手を滑らせていると、うめき声が聞こえた。
「う…」
「あぁ、起きたか?」
「?!ぎゃぁぁあ!!っ…・・・っ」
「・・・おい?」
男が一人目覚めそうだったので声をかけたら、目が合った瞬間に突然叫び出して意識を失ってしまった。
意味が分からない。
これもつんでれの特性か。
めんどくせぇ。
その後も一人また一人と目覚めて叫んでは気を失うが繰り返され、いい加減鬱陶しいのでまた全員に水をかけて目を覚まさせた。
こいつらどんだけ構ってほしいんだ。
「ひぃいぃ!?しっ死んでる…っ!?」
「やめろっ殺さないでくれ…っ!」
「うわぁああっ夢じゃなかったっ…!!」
突然青い顔をしたり叫び出したり身を震わせたりと、いかに構ってもらうかのリアクションを取るつんでれどもに、どう説明したものかと思案する。
が、結果は同じなので簡単に説明することにした。
そしてその前に大事なことを伝える。
「説明するからちょっと静かにしてくれ」
「「「っ…!」」」
これ以上面倒はご免だと少々言葉に力が入ってしまったが、おかげで全員が両手で口元を塞いで勢いよく頷く、というこちらの要望に沿った返事を返してきた。
思ったより素直な連中だったようだ。
「俺は街に行きたいんだが金が無い。あと場所も知らん。それからこの獣…マーダーベアをギルドに見せれば金になるはずだが、どうすればいい?あとコイツはどうやって食うんだ?」
「「「え」」」
「なんだ?」
「いや、ちょっと待て…!」
急にごにょごにょと仲間内で話し合ったかと思えば、リーダー格の男が口を開いた。
「教えても良いが条件がある…!」
「なんだ、言ってみろ」
「街に行っても、俺たちの事は言わないと約束しろ…!」
やけに真剣な表情で言われたが、もしかして街の連中につんでれなことを知られたくないのか?
まさか街の中ではつんでれは危険視されているのか…?
確かにめんどくさいし、相手によっては拳で語らざるを得ない。
「…それだけか?」
「あぁ、それさえ守ってくれりゃぁ街までの道は案内してやるし、冒険者ギルドでの討伐報告のやり方も教えてやる。マーダーベアの食い方もな」
「そうか、なら頼む」
俺の言葉を聞いた途端、リーダー格の男はニヤリと笑った。
「そうか、もし嘘をついたらお前を奴隷にしてやる。いいな?約束だぜ?」
「あぁ、約束だ」
「ひゃはは!やったぜ!これで……あ…?」
ニヤニヤしていた男が首を傾げ、慌てた様子で首元をまさぐると、華奢な首飾りを引っ張り出した。
やたらと丁寧な手つきで舐めるように見ている。
おい、目が血走ってないか?
「な、なんで…っ?!」
「何がだ?」
「あぁっ?!はっい、いや、ちょっと待て、待ってくれ…!」
何だ急に。
構われ待ちか。そうなのか?
面倒臭さに思わず眉間に皺が寄る。
奴らは奴らで面倒だが、これはこれで面倒臭い。
面倒な奴を避けられる加護を貰えばよかった。いや、やっぱり奴らの相手の方がしんどい、と思い直す。
「おい、さっさと話せ」
「ひぃっ…!?」
待つのも時間の無駄なので声をかけると、何故か後ずさりする男。
意味が分からないが構われ待ちなんだろうとスルーしてさっさと情報を吐かせた。
やたらと気持ち悪い声で話し出した男曰く、街まではここから2~3時間程度で着くらしい。
何故か地理の情報が検索しても得られなかったため非常に気持ち悪い時間となった。
今後は聞く相手を吟味しなければ、と決意していると、マーダーベアを運ぶのは大変だろうと、解体を買って出てくれたので任せるとにした。
したが。
「ぎゃぁあああ!!?」
「なんだ!?」
「おいどうした?!」
「指!指が生えて…っ!?」
突然騒ぎ出したかと思えば手を広げ出した男に周りがまた騒ぎ出した。
こいつら賑やか過ぎないか。
「うおおおおぉお!?俺も!足!足があああ!!」
「「「何ぃ!?」」」
今度は違う男が騒ぎ、また周りが騒ぎ出した。
いやだから。
「おい」
「「「はっ!」」」
「解体するなら早くしてくれ。さっさと街に行きたいんだ」
「「「へい!」」」
ため息をつきながら伝えると、やたらちらちらと視線を寄越された。
なんだ、肉が欲しいのか?
特に何を言うでも無く、ひたすら手を動かしながらもちらちらと視線を寄越す連中の顔を見ないようにして手の動きを見る。
毛皮を剝ぎ、身体を開き、内臓を捨≪ステータスが更新されました≫
あ?
・・・更新?
意味が分からないのでとりあえずステータスを開く。
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キュウノ 12歳
種族:人間(男)
水準:12
生命:660
魔法:660
運動:420
知力:420
幸運:240
<才能>
冒険者≪ステータスが更新されました≫
<加護>
冒険の神≪ステータスが更新されました≫
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「・・・・・」
だからなんだ。と叫びたい衝動を堪え、更新された箇所を注視する。
<才能>
冒険者≪ステータスが更新されました≫
▷4本足の生物の解体を覚えました。
<加護>
冒険の神≪ステータスが更新されました≫
▷魔物を倒した後は更新した方がいいぞ。所で-文字数を超過しました-
「・・・・・」
水準を1上げ、ステータスをその分更新して、そっとステータスを閉じた。
給の神:色んな疑問やもろもろは転の神にぶつける所存。
転の神:やめてくれる?!
お読みいただきありがとうございました。