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おいでませ下界

はじまりはじまり。(多分)


更新:意味があるかわからないステータスの表記を一部変更しました。

更新:段落の先頭字下げ処理・・・


 鬱蒼とした森の中で、突如真っ白な光が現れた。


 目が眩むほどの光ではあったが、それは一瞬の出来事で、余程近くでなければ、気のせいと思えるほどに、刹那の輝きだった。


 光が消えると、そこには一人の少年が立って居た。

 まだ成人していないだろう少年は、幼さの中にも完成された美しさを持っていた。

 白一色の衣を纏った中世的な顔立ちはどこか神々しく、少し長めの美しい髪も相まって、神話の女神のようにも見えた。


 少年は何かを確認するように周りに視線を向けた後、自分の足元を見つめ、手の平を見つめた。

 美しい髪がさらり流れ、少年の顔を隠した。


 少年はそんなことには気にも留めず、小さく呟く。



「…くそが…」



 セリフと相反する、残念な程に美しい声は虚空に消えた。


 どこかで獣が活動する音が響く。


 少年はしばし自然が織りなす音に耳を傾けた後、その場に胡坐をかいて座った。


 少年にはどうも危機感が足りないようだ。


 まぁ少年というか、この地に召喚された元給の神だけど。


 ただ、胡坐をかいて、膝に手をつき、深くため息を吐きながら首を振る姿は、完全におっさんのそれだった。

 無駄にサラサラ揺れる髪が残念さを演出していた。




 ―――――




「…召喚先が森なのはまぁ良い。なぁ、転の神。ちょっとだけ若返るとか言ってなかったか?お前のちょっとの基準おかしくないか?」


 改めて自身の状況を確認したが、どうにも視線が低いし手も小さかった。

 神の遣いどころか眷属として認識された頃の状態。つまり人で言う赤ん坊だぞ、とわずかに苛立ちを覚えた。


 これで能力自体も当時と同じであればさすがにぶち切れ案件だが、能力自体は今まで通り普通に使えるようだ。

 そのおかげで、まだ冷静でいられた。


 身体が小さくなった所で、給の神として使っていた全知全能の特性と同じだから、この状態でも一目見れば、名称と何に使われるか程度は認識できる。

 要は鑑定だ。


 この場所はシャミュールの森の一角で、ちょっと奥へ進めば魔境へ行けるらしい。

 つまり、森の手前に進めば街があるのだろう。

 確認すると、人の足で2~3時間程度の距離にシャミュールの街があるのを見つけた。

 見ようと思えば領主館の内部も見れ…


「いやそれは普通にダメだろ」


 人の世の領主館なんてこちらで言う他の神々の仕事場だろう。

 阿保どもはともかく、下手に見てしまうのは絶対にまずい。

 …まぁその辺は見ようとしなければ問題無い。

 実際遠くまで見ようとするとちょっと疲れというか力の消費を感じる。

 一応、人間の身には過ぎた力だという指標なのだろう。


 まぁそもそも興味が無い。

 地域毎の一般常識内での知識で絞ればいけるだろう。

 最悪は他所から来たからと聞けばいい。


 とりあえず知識以外の状態を確認しておこう。

 魔法の出力や、身体の動きなんかは念入りに。

 力の調整ミスってうっかり街どころか国一つ滅ぼしたとあっては、大手を振って奴らをボコれない。


 幸い"人間"と認識されて召喚されたようなので、殺生や飲食も人間の作ったルール上であれば問題無い。

 変な所の気遣いが細かいが、もし奴らが人間の敵として遊んでいたら嬉々としてボコれる上にうっかり殺してしまっても問題無いというわけだ。


 …ほう、街中で無ければ拷問も有りか。

 これは良い。

 思わず口元に笑みが浮かんだ。



 飲食や睡眠は必要なようだが、一般的な人間と比べて毎日必要な訳でも無さそうだな。

 ただそれに甘んじていては怪しまれるだろう。

 人間らしく過ごしておく方が良い。

 平均的には1日2食、早寝早起き、あとは現地人の様子を見て調整か。


 ここではステータスなるものがあるようだ。

 今の自分がどんな状態か把握しておくか。


「ステータス」


 ―――――――――――――――

 給nおkM 1error2歳 

 種族:Nんgン???神

 水準:error

 生命:error/error

 魔法:error/error

 運動:error

 知力:error

 幸運:error

<才能>

 半知半能

<加護>

 神々からの憐憫と心からの応援

 ―――――――――――――――


「いやダメだろ」


 エラーしかない。

 せめて隠蔽しとけ。

 あれか。自分で調整しろってことか。

 というか半知半能ってなんだ。

 加護にも物申したいが言える相手が居ない。


「くそっ…」


 基本的には他人に見られることは無いが、他人のステータスを見ることができる才能を持つ者も居るらしい。

 万が一を考えて変更だ。

 一般的な基準値のちょい上くらいなら下手を打っても誤魔化せるだろう。多分。


「子供、ステータス、平均で検索…。ふむ、水準で1上がるごとに平均で生命と魔法が50、運動と知力が30、幸運が15上がって…ってめんどくせぇ。…過去データの平均でいいか…」


 ―――――――――――――――

 キュウノ 12歳

 種族:人間(男)

 水準:12

 生命:660

 魔法:660

 運動:420

 知力:420

 幸運:240

<才能>

 冒険者

<加護>

 冒険の神

 ―――――――――――――――


 近年の男児のステータスを流用した所、若干能力が高い程度になった。

 まぁ問題ないだろ。多分。

 あとは自動で上がるように…それは無理なのか…水準が上がれば上がるだろうが、エラーの場合はどうなんだ?


「…まぁ、ステータス上の数値だけだしそこまでこだわらなくていいか…」


 面倒臭くなった。

 あとは持ち物と、恰好か…


 着の身着のまま放り出されたようなものなので森でこの恰好は明らかにおかしい。

 汚れ一つない白い服はアウトな気がする。

 色のせいか若干光って見える。

 それに丸腰の冒険者は無いな。


 平均的な冒険者の服ってどんなのだ…?

 ここ最近の平均を参照。


 却下だ。


 首に何かをぶら下げてるのはどうも身分証のようなものなので問題ない。


 問題は、上半身が革製と布を融合したような鎧に、所々何故か金属製の板やトゲトゲしたものがついている。

 何だこれは。


 下履きは同じく革製の、なんかやたらとピッチリしたものだし所々布だったり、上半身同様金属製の何かがついている。

 意味がわからない。


 あと背中に色々背負い過ぎだ。

 背中に普通サイズの剣やら盾は背負わないだろ。おまけに鞄て。さらにマントて。

 背中で渋滞してる。

 どうやって武器使う気だ。

 腰に刺さった杖か。明らかに魔法用だろう。

 だめだ。

 ちょっと意味がわからない。


 さらに言えば全体的に急所が金属で覆われギラギラしている。

 狙ってくれと言わんばかりだ。

 一体この平均は誰を参考にしたんだ。


 詳細を見ると全体の平均の合作みたいなのが出されたようだ。

 合作すんな。

 本当に融通が利かない。


 ダメだ。

 剣を使う新人冒険者で絞ろう。


 …なるほど。

 安っぽい見た目の簡素な上下服、革の胸当て、直剣、厚底靴、荷物袋。

 安い古着を使用してるのかちょっと薄汚れている。

 先ほどの格好に比べれば問題無い。

 すっきりしてる。

 足りない分は現地で聞こう。


 あとの問題は金だ。

 金が無い。

 街に入るにしても身分証が無い以上、金が要るらしい。

 しかし盗賊とか魔物とかを門前で換金できるらしい。


 近くに何か居ないか探ると居た。

 随分と都合がいいが本当に盗賊か?

 とりあえず人間が10人程固まっているが、冒険者の可能性がある。


 遠い記憶のかなたに、「やっぱりチュートリアルはあった方が良いわよね!」とどや顔で宣う阿保の顔が浮かんだがすぐに殴り飛ばして記憶を打ち消す。

「やばい!女神の慈悲とか胸熱!」とか合いの手を入れた阿保の顔も殴り飛ばし記憶を霧散させた。

 慈悲なら金を用意しておけ。


 良し、忘れよう。

 この身体の動かし方も合わせて適度なサンドバックが転がっているんだと思うことにしよう。

 違った。

 まずは盗賊かどうかの確認が先だな。






お読みいただきありがとうございました。

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