卒業式。 後編
何とか先生とみんなを宥めながら数人を連れて教室を出る。
「よう遅かったな」
廊下で隣りの教室前で整列して待っている佑樹から声がかかる。
「おはよう佑樹、色々あってね」
「色々?」
「こら!山添喋ってないで手伝ってくれ」
「先生、川口君に手伝って貰っていいですか?」
「え?俺?」
「お願いしたいが石井先生よろしいですか?」
「いいですよ、おい花谷!」
佑樹のクラスの担任は学年女子のリーダーである花谷さんを呼んだ。
「はいはい分かってます。浩二、私も手伝うわ」
「助かるよ、佑樹は男子を花谷さんは女子をお願い」
「分かった、あれ、由香は?」
「教室で一番泣いてる」
「あらら」
佑樹と花谷さんは俺のいる教室に入り泣いている生徒達に駆け寄り励ます。
「ほら、いつまで泣いてるんだ、お前が中学校のリーダーになるんだろ?」
「さあ立ってあんまり泣くと後で写真撮る時凄い顔になっちゃうよ」
凄い2人に励まされみんな次々泣き止んでいく。
よーし俺も、
「さ、泣かないで。
泣きすぎると目が腫れてきれいな顔が台無しだよ」
にっこり笑いかける。
「ア、アウ、おぅ」
女子から変な声が。
泣き顔から真っ赤になって...気を失った。
「浩二」
「花谷さん何?」
「微笑み禁止。
今の心理状態では命の危険性があるわ」
「そんなに?」
仕方ないので勤めて諭すようにクラスメートを励まし廊下に整列させる。
最後に由香を花谷さんが宥めて全員整列して出発。
講堂前で在校生から胸に花を着けて貰う。
在校生が先に裏口から講堂に戻り6年生は正面入口前で待機だ。
「卒業生入場」
その声に併せて講堂の扉が開き1組から順番に入って行く。
やがて俺達のクラスの番になり講堂内に入る。
家族席を見る。母とばあちゃんが泣いてる。いや周りの家族も泣いてる。
1組の入場から泣き始めた家族達から伝染したのかな?
その後式は始まり国歌斉唱、校歌斉唱、校長の挨拶と続いた。
そして卒業証書授与。
俺達の番まで待つ。緊張する。
こんなに緊張したかな?前は淡々と済ました気がする。
前回の時とまるで違う卒業式の感じに運命は変わったんだと実感する。
「橋本由香!」
「はい!」
先生の名前を呼ぶ声に由香が大きな声で返す。もう泣いてない。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
しっかりした足取りで檀上を降りる由香。
泣き虫はたまになるけど6年前の臆病な由香はもういない。
立派な堂々とした由香がいる。
家族席を振り返る。
うん、泣いています。橋本家両親泣いています。
「山添浩二!」
「はい!」
俺の名前が呼ばれた。
檀上に上がる俺の足がフワフワしている。こんな緊張初めてだ。
やっとの思いで校長の前に行く。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
証書を受け取り頭を下げる。ようやく自分の席に戻った。
俺は疲れでボーとする。
気づくと卒業証書授与は終わっていた。
(しまった佑樹と花谷さんを見逃してしまった!)
悔やんでもしかたがない。
その後も卒業式は進行する。
「生徒代表、生徒会挨拶」
司会の教師の声に気合いを入れて俺達は4人で檀上に。
例年なら代表の生徒会長が一人で挨拶するが今年は4人それぞれの挨拶を先生にお願いした。
「皆さん、今日私達は...」
先ずは花谷さんが話す。よく響く声。
(花谷さんも成長したな)
そんな事を思い出しながら花谷さんの挨拶を聞いた。
続いて佑樹の挨拶が始まる。
大きな体に大きな声で話す佑樹。
前回佑樹はこの卒業式にいなかった。
しかし今は俺の横で挨拶をしている、不思議なもんだ。
そして佑樹の挨拶が終わる。
次は由香だ。
(由香、前回は1年の3学期が始まると転校していった由香)
今こうして小学校の卒業式でみんなの前で堂々と話している。
みんなの運命が変わったんだと実感する。
由香の話が終わり次は俺だ。
俺は由香と入れ替わりマイクの前に立つ。
「先生、来賓の皆様、家族の皆様。
今日はありがとうございます。卒業するみんなとも今日でお別れです。
小学校に入学して以来この6年はとても楽しく一生忘れない思い出が出来ました。
これからどんな人生が始まるか分かりません。
しかし運命は変えられるのです。
今、こうしている間にも未来は始まっています。
この先には苦しい時もあります。悲しい時、選択肢が沢山あります。
それぞれに運命は分かれています。
諦めず家族、友達、先生達と相談しながらよく考えて後悔の少ない人生を歩みましょう。
決して運命は決まっていません。
お互い頑張りましょう。
今日は皆様本当にありがとうございました」
「「ありがとうございました。」」
「生徒会会長 山添浩二」
「副会長 橋本由香」
「書記 川口佑樹」
「書記 花谷和歌子」
最後に4人で頭を下げて檀上を降りる。
そして卒業式の進行は進み卒業式は終わった。




