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卒業式。 前編

卒業式の朝が来た。

いつものように目覚めた俺は朝のラジオ体操の歌を歌い体操をして体を動かす。

体操が終わり洗面所に行き歯を磨く。

うん健康そうないつもの俺の顔だ。

鏡に向かってにっこり笑顔。

その後部屋に戻る。

先日母がクリーニングに出して昨日用意してくれた小学校の制服に着替える。

 

「この制服を着るのも今日が最後か」


そんな事を呟きながら色々な事を思い出す。

入学式の朝初めて袖を通した制服は今よりかなり小さな制服だったな。


「この制服は何着目だっけ?」

 

知らない間に俺の体も大きくなり小学校の間に40センチ以上背が伸びていた。

そしてランドセルに手を伸ばす。


これも背負うのも今日で最後だ。

入学式の時は大きなランドセルを背負うと腕か突っ張って大変だった。

今ランドセルの中は当然何も入っていない。

今日は特に持っていく物もないからランドセルで来る生徒は少ないだろう。

でも最後だからこそ今日はランドセルと決めていた。

その後いつものように家族の待つ食堂に行く。


「おはよう」


「おはよう浩二」


「おはよう、よく眠れた?」


「おはよう」


「おはよう浩ちゃん」


家族全員と朝の挨拶。

兄貴も今日は早起きして俺が来るのを待っていた。


母とばあちゃんは着物。

じいちゃんも去年と同じ紋付き袴。父はスーツ姿だった。


「浩二は卒業式もランドセルで行くのか?」


父が聞く。


「うん最後だからね。ランドセルで始まった小学校生活をランドセルで終わらしたいんだ」


「大きいなったなぁ」


じいちゃんの言葉に母が涙ぐむ。


「本当に、ランドセルが歩いてるみたいに小さかった浩二がね」


「浩二、本当におめでとう」


兄貴は俺のランドセル姿をじっと見ながら言う。


「ありがとう兄さん。去年兄さんもこんな気持ちだったんだね」


兄貴は無言で頷く。  


その後ランドセルを降ろして朝御飯。

小学校の思い出話に華を咲かせる。


「じゃあ僕そろそろ学校に行って来ます。

浩二、卒業式しっかりね」


兄貴は中学校に行く為先に家を出る。

卒業式は9時30分から始まる。

俺は家族と一緒に8時に家を出た。


いつも由香と落ち合った場所に着く。


「おはようございます山添さん」


「おはようございます橋本さん」


今日は由香の家族も合流する。


「天気で良かったですね」


「全くです。雨では大変ですから」


家族同士の会話している横で由香と挨拶。


「おはよう由香」


「おはよう浩二君」


「浩二君も?」


「ああ。由香もだね」


2人共ランドセル姿だ。

初めて学校の校庭で会った時と同じランドセル姿。由香の目が笑いながら涙で滲む。


「あれ?何でだろ?」


「分かるよ、僕もだ」


そしてみんなで学校に向かう。


「この通学路を制服で行くのも今日で最後ね」


由香が呟く。

俺も同じ事を考えていた。


やがて小学校に着く。

校門に[1982年岸里小学校卒業式]の文字が書かれた看板が置いてある。


「おはようございます山添さん橋本さん」


たくさんの卒業生と家族に囲まれた。


その後家族で写真を撮る。何故か色々な家族達とも撮影する事になる。


「すみません僕そろそろ行かないと」


「私も」


申し訳ないがきりがないのでこれ以上の卒業する家族との撮影は断る。

そして家族とも別れて6年の教室に行く。

教室の扉を開ける。


「「おはよう!」」


由香と声を会わしてクラスメートと挨拶。


「おはよう...」


既に泣いている女子達。


「ばっかだな何泣いてんだよ」


そう言ってる男子達も数人涙が流れている。 


「だって、だって、今日でお、お別れなんだもん!」

 

そうだ、クラスメートは殆ど同じ中学校に上がるけど俺達は違うんだ。

みんな俺達との別れを惜しんでくれている。

俺も何か言おうと思うが言葉にならない。


「ありがとう、みんな大好きだよ。

私もいつまでもこの学校にいたいよ。

でも次に進まなきゃ、違う中学校に入ってもみんな友達だよ!」


由香がクラスメートに向かって話す。

(あ、由香泣き出した)

それが更に涙を呼びクラス中が同級生の泣き声で溢れる。

俺も何か言おう、そう思った時。


「おはよう!」


先生が入って来た。

いつものはジャージかヨレヨレのワイシャツだけど今日はパリッとしたスーツ姿だ。


「なんだなんだ、おまえ達泣くのが早いぞ」


そう言う先生も涙目だ。


「山添はさすがに泣いてないが涙目だな」


先生に言われ俺も涙目に気がつく。


「さあみんな席につけ。開始時間まで教室待機だ」


その後先生は生徒の気分転換に今年一年間の思い出を語りはじめた。

これは逆効果だ。

まず女子が机に突っ伏して泣き出した。

先生は話に身が入り過ぎて生徒の変化に気がつかない。

[運動会、修学旅行、卒業遠足]

先生、自分の話に酔ってるな。

とうとう男子も顔を手で覆い泣き出した。

女子はすでに嗚咽している。


教室内に6年生講堂前で準備して下さいの合図のチャイムが鳴る。


「お、合図だみんな講堂に行くぞ。どうしたみんな?」


「先生が泣かしました」


「山添どう言う事だ?」


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