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何の話だっけ? ガールズトーク

2月最初の日曜日、十河さんと坂倉さんは駅前のハンバーガー店にいた。


「お久し振りです」


「ん、久し振り。今日は呼び出してごめん」


「ううん、お誘いありがとう。みんな元気?」


「うん元気だ」


中1には見えない大きな十河順子。

同じく中1には見えない小柄な坂倉唯。

珍しい2人の取り合わせは最初の少しぎこちない会話から始まった。


しかし10分もすると、


「それで志穂が有一に言ったんだ」


「あら、目に浮かぶわその光景」


順子さんはとても聞き上手なので普段無口な坂倉さんも楽しくお喋りしていた。


「あー、一杯喋った。

こんなに喋ったのは家族以外では初めてだ。順子ありがとう」


「こちらこそありがとう。

唯さん普段静かにされてるけどお話しするとこんなに楽しいなんて。私もつい唯さんの話に引き込まれたわ」


「順子、私の事は唯でいい」


「そうだった、ありがとう唯」


「ん、どういたしまして順子」

 

顔を赤らめてる坂倉さん、そんな坂倉さんをにこやかに見つめる十河さん。

端から見れば年の離れた姉妹か、母娘にも見える。


「そうだ、来週の話」


「そうよ、忘れてたわ」


「誕生日だ」


「しかし偶然ね私達同じ誕生日なんて」


「ん、順子は大きいから私みたいな小さいのと同じ生年月日と誰も思わない」


「あら、私そんなに大きい?

唯も小柄だけど言う程身長低くないわよ」


「順子は身長もだけど体の全パーツが大きいから」


「全パーツ?」


順子は唯の言っている意味が分からず首をかしげた。


「身長、胸、お尻。全部大きい。ズルい」

 

「そう言われても...

胸なんか大きくても、邪魔な.....」


「みんな大きい胸の人はそう言う。

大きいと肩が凝るとか、夏暑いと胸の下に汗疹がとか、成長中は痛くて違和感とか。私は全く痛く無い、胸の違和感も無い!」


「唯...」


それまでの静かな雰囲気を一変させて捲し立てる唯に順子は絶句する。


「ごめん。取り乱した」


「いいのよ」


「で何の話だったけ?」


「誕生日よ」


「そうだ、2月14日」


「バレンタインが誕生日なんて偶然ね」


「男の人に告白する日にお祝いされるのは大変だ」


「そうね、でも告白した日にお祝いして貰えるなんて素敵じゃない?」


「そう考えれば悪くないな」


「そうでしょ」


にこやかに話す順子に益々心を許す唯。

順子に聞きたかった質問をする。


「有一に」


「うん?」


「順子は有一に誕生日お祝いしてもらった事はあるか?」


「小学校の時はお友達と一緒にお祝いされた事ならあるわよ」


「二人では?」「ないわ」


「早っ!」


「なかったのよ。

二人でお祝いしようとした時もあったわ。

でも有一君は淋しい誕生日は可哀想だと、誰か呼ぶのよ。

特に薬師君!あの人は二人になりたいから遠慮してねと事前に打ち合わせしていたのに有一君が誘うとホイホイ家に来るのよ!あのバカ!」


今度は順子の雰囲気が一変する。

先程までの穏やかさが消えた順子に唯が絶句する。


「じ、順子...」


「あら、ごめんなさい。」


「...苦労してたんだな」 


「鈍感な人を好きになる苦労は唯ちゃんも分かるでしょ?」


「同じ人が好きだからな」


「そうよね」


「ありがとう」


唯はそう言って順子に頭を下げた。


「何が?」


「有一を独り占めしないでくれて」


「あら、だからと言って譲ってないわよ。

私が有一君の横に並べるまで付き合うのお互い我慢してるだけなんだから」


「分かってる。だけどそのうち」


「そのうち?」


「順子が『唯、参ったわ有一と幸せに』と言わせるように頑張る」


「頑張ってね、でも有一君は振り向かせるの大変よ」


「順子に出来たんならチャンスはある」


「そう?なら取られないように私も更に頑張んなきゃね」


「ん!順子が凄い大人な余裕、これは出せない」


焦りを全く見せない順子を見て逆に焦る唯だった。


「大人?」


「順子は体も心も大人。凄い」


「心は嬉しいけど体は私家じゃ一番チビよ」


「えぇ?」 


「お父さん190センチあるし

お母さんも170センチ近くあるから

後姉さんも173センチって言ってた。」

 

「デカッ!」


思わず唯は大きな声で驚く。


「酷い!」


「それで分かった。家は父さん165センチ

母さん148センチ、しかも母さん胸が無くて尻だけデカイ」


(お母さん可哀想!娘に暴露されてる)

順子は見た事の無い唯の母に同情する。


「やっぱり食べ物だけじゃダメだ」


「あら食習慣も大切よ」


「でも毎日私はたくさん牛乳を飲んでる。

余り効果がない」


「どのくらい飲んでるの?]


項垂れる唯に順子が聞いた。


「家で牛乳瓶2本、学校でもパックの牛乳は欠かさない」


ふん!と胸を張る坂倉さん。


「足りないわ」


「え?」


「全然足りないわ。私小一から毎日1リットルよ」


「え!」


「更に中学校に入ってから毎日1.5リットルよ」


「毎日?」


「そうよお腹壊したら悲惨よ、3日間飲まなきゃ冷蔵庫の中には4.5リットルの牛乳よ」


「どうするのその牛乳」


「飲むのよ。飲むしかないのよ!お腹が少しでも治ったら毎日飲むのよ」


「料理に使うとか出来ないの?」


「そんなズルはダメって母さんが」


「ズル?」


「牛乳は飲んでこその栄養だって!」


「そんなに飲めるの?」


「もし捨てたら牛乳取るの止めるって母さんが言うからもう必死よ」


気合いの入った順子の目に唯はたじろく。


「でも牛乳って消費期限が...」


「だから古い牛乳から飲むのよ、お陰で胃腸が丈夫になったわ」


「私には出来ない」


「私もお薦めはしないわ」


「順子が乳牛に見えてきた」


「今日一番酷い!」


「誉め言葉」


「どこが❗」


「「で、今日何の話だっけ?」」


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