発表! それでいいの?
大変な試験も終わり今日は合格発表。
電車の一件を兄貴に話したら朝7時30分までの電車なら割りと空いている事、もし混んでいた時は一番前の車両なら少しましな事を教えてくれた。
そう言えば兄貴も隣の駅まで同じ方向だ。
兄貴は乗り換えずそのままの沿線で仁政は乗り換えだから忘れてた。
「兄さん詳しいね調べたの?」
「志穂さんや美穂さんから聞いたんだ。
僕と同じ駅から通ってるのによく知ってるよね」
うん、きっと<守る会>を動員して調べたんだな。
さすがだ。そう言えばいつもの兄貴が電車に乗ればなぜか先に同じ車両に学芸大学附属中学校と附属高校の生徒が5、6人乗ってるって言ってたな。
「浩二も次の駅まで今日一緒に行く?」
「いや大丈夫。貴重な情報ありがとう」
兄貴の提案をお断りして発表に行くまで家でのんびりする。
合格者発表は10時だから8時30分に家を出る予定だ。
「それじゃ行ってきます。結果はすぐに電話するよ」
「分かった、待ってるから」
仕事をしている母に声をかけてから家を出る。
途中で由香と合流そのまま駅に着く。
「よう浩二」
「おはよう佑樹」
「由香おはよ」
「和歌ちゃんおはよう」
いつものメンバーが駅で揃う。
推薦入試の佑樹と花谷さんは既に合格の知らせは仁政から電話で受けている。
今日は俺と由香の合格発表と自分達の合格者番号を一緒に見たくて同行していた。
俺達の結果はまだ分からないが自己採点では合格者ラインを2人共かなり越えていたから大丈夫と言ったので佑樹達は安心して来ている。
電車の中は通勤ラッシュが終わった時間だから結構空いていて乗り換えもスムーズに行った。
「橋本聞いたぜ試験の時大変だったな」
「え?何で川口君知ってるの?」
「浩二から聞いた。試験どうだったか心配で電話したんだ」
「浩二君言っちゃったの?」
ごめんね由香、話の流れでつい」
「泣いちゃた事も?」
「由香、あんた泣いちゃたの?」
「マジかそれは聞いてなかったぞ」
「しまった!」
由香が思わず自爆して佑樹と花谷さんは顔を見合わせた。
「それだけ凄い通勤ラッシュだったんだよ。佑樹も試験の時は満員電車で大変だったろ?」
「いや俺達は大丈夫だった」
「え?スポーツ推薦の試験時間も私達と同じ9時30分からでしょ?早く行ったの?」
「そうよ由香聞いてよ。佑樹ったら
『体のウォーミングアップ兼ねて隣の駅まで自転車で行こう』
って隣の駅まで自転車で行ってたら道にに迷って人に聞きながらで結局学校まで自転車よ」
「え?家から仁政までは20キロ近くあるよ!」
「そうよ、だから着いたの試験開始10分前で大変だったの」
「まあいいじゃねえか、いいウォーミングアップになったろ?」
「やり過ぎよ!バテたわよ!」
そんな2人のやり取りを由香と呆然と聞いていた。
やがて電車は目的の駅に着く。
「お、着いた着いた。やっぱり電車は楽だな」
「当たり前でしょ!」
「まあ2人共早く行きましょ」
改札口を出ると少し彼(彼女)の気配がする。
(まさかまた...)
「おはよう!」
「わ!」
「出た!」
「酷いな浩二君も佑樹も人をお化けみたいに」
驚く俺と佑樹に祐一は頬を膨らました。
「祐ちゃん試験の時はありがとう」
「由香から聞いたわ、ありがとう」
「どういたしまして。由香ちゃんだけじゃなくて、和歌お姉様にまでお礼言ってもらっちゃった!」
「和歌お姉さま?」
祐一の言葉に花谷さんは目を丸くした。
「いやだった?それじゃ花谷姉様?」
「いや、だから何でお姉さまなの?同い年でしょ?」
「いいじゃねえか、お姉さまでよ」
「うるさい佑樹!」
「祐ちゃん、和歌ちゃんの言うとおり同い年でお姉さまは少し変よ」
「少しか?」
「だから祐ちゃん、私と同じように和歌ちゃんって呼んであげて。いいでしょ和歌ちゃん」
「ま、まあそれなら良いわ」
(良いのかよ)
俺は佑樹と目を見合わせた。
「ありがとう和歌ちゃん!」
「いいのか和歌?」
「いいの、由香が言ってた事が分かったわ。
祐は祐だから祐なのね」
「「へ?」」
「そんな事より発表を見に行こうよ、楽しみで1時間前から待ってたんだよ」
そんなやり取りをしながら俺達は仁政第一中学校に着いた。
やがて発表の時間が来た。
「受かってますように!」
指を組み合わせ祈る祐一。
その仕草はどう見ても女の子のそれにしか見えない。そして合格番号が張り出された。
「あっ!あった!あったよ浩二君由香ちゃん!」
「あっ、あった!由香もあった!」
「浩二君たら先に私の番号確認するなんて。
浩二君もあったよ」
「良かったな!和歌俺達もあったよ!」
「当たり前でしょ」
「和歌、こういうのはノリで行かなきゃ」
「それより浩二と由香の番号の横に丸で囲って特って書いているわ。あれって何?」
「本当だ」
「何だろ?」
俺達は学校の事務室に聞きに行く事にした。
「すみません」
「はい」
事務室から年配の職員が出てくる。
「発表見たんですが僕と彼女の番号の横に特の文字があったんですが」
「合格されたんですね、おめでとうございます。特は特進コースの事ですよ」
「特進コース?」
「ええ。入学試験の合格者で高得点を獲得すれば資格者となり特進コースを希望されてなくても特進コースの加入が許されるのです」
「は?」
「凄いですね、一般普通コースから特進コースの資格者はここ数年出ませんでしたからね、しかも2人も!!」
「あの特進コースってクラス分けは?」
「特進コースのクラスは一般クラスと別に1クラスあります。
取り敢えず特進コース合格者の資料となります。
入学後に一般コースへ変更も出来ますし、
一般クラスから特進クラスへの編入も成績優秀者にはチャンスがあります」
「良かった」
「そうですね、特進コースの授業について行けなくて一般クラスに変更を申し出される方もいらっしゃいますから」
俺達は話を聞き終わり事務室を出る。
駅に着いて家と学校に合格者の報告電話をした。
駅前で祐一と別れる前にみんなでファーストフード店に入った。
「やっぱり浩二君や由香ちゃんは凄いや!」
「そうだな浩二はやっぱりただもんじゃなかったな!」
「由香ったらいつの間に天才の仲間入りしたの?」
自分達のようにはしゃぐ3人だが由香と俺は無言のままだった。
「おいどうした2人共、特進は授業が難しいって聞いてビビってんのか?」
「由香なら大丈夫よ!きっと浩二と特進クラスだってトップにたてるわ!」
「2人共やっぱり凄かったんだね!」
「僕、特進クラス辞退しようと思うんだ」
「私も」
「由香どうして?」
「浩二俺と和歌に気を使ってるなら余計なお世話だぞ」
「「え?」」
「あのな、俺と和歌はスポーツ推薦入学だ最初からクラスが違うぞ」
「「えぇ?」」
「浩二君、由香ちゃん。一般クラスって全部で何クラスあるか知ってる?」
「知らない。由香知ってる?」
「私も知らない」
「やっぱりね10クラスだよ。
だから一般クラスに入っても僕と一緒のクラスになる確率は5分の1」
「いや待て10クラスなら10分の1だろ?」
「何言ってんの、浩二君と由香ちゃんも一般クラスに入ったら2人が同じクラスになれるのは10分の1だよ。それでバラバラになった2人の内どちらかが僕と同じクラスになれる確率は5分の1」
「どうする2人共、10分の1に賭けるか?
特進クラスで2人同じクラスになるか?」
「そうよ、ちなみにスポーツコースも1クラスだから佑樹と私は同じクラス」
「そうだ、猛獣と過ごす3年だ」
「そう猛獣と過ごす3年...って誰がよ!」
「まあまあ、それに僕だって。さっき言ってたでしょ、成績優秀な生徒は特進クラスに編入のチャンスがあるって、諦めないからね」
「「「で?どうするのお2人さん?」」」
「「特進コースにします!!」」




