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薬師と楽しい仲間達 中編

取り合えずその日はすぐに別れた。

帰宅した俺はは薬師兄さんに電話をする。


「いったい何だったのあれ?」


「すまん浩二、俺もあんな展開は予想して無かったんだ。本当にすまなかった」


電話の向こうで薬師兄さんの申し訳なさそうな感じがよく分かる。


「まあ薬師兄さんがピンチなのは分かったけど、もう1度詳しく教えてよ。

秀星祭がどうしたの?」


「あぁ、今度秀星祭でまた白石達を呼んだんだがな」


「へぇまだ続いていたんだ」


「う、そうなんだ。

しかし今回は俺が主導したんじゃない」 


「誰?」

 

「司だ。」


(司って言えばあの司だよな)


「石田司?」


「そうなんだ。前回俺が体育祭を休んでいる間にあいつが女の子達に話をつけてイベントまで勝手に!畜生!」


「勝手に決められて拗ねてんの?」


「違う!いや多少はあるか」


「あるの?」


「いやしかしあいつらのプランが余りにも」


「余りにも?」


「浩二の教えに反し過ぎて!」


(俺そんな事を教えたっけ?)


「教えに反する?」


「ああ、昔の俺なら喜んであいつらのプランに乗っていたんだが今の俺には分かる、

絶対に失敗する。

未来には失敗しか見えない!」


「そこまで薬師兄さんが言い切るなんてある意味で凄いな。

じゃ教えて石田君のプランとやらを」


「ああ、俺達は秀星祭のイベントでステージに立つ予定だ」


「ステージ?」


(たしか秀星祭って文化祭の事だよな、ステージが良く分からないな)


「先日の学芸大学附属の話をしたらあいつら、

『俺達もやりたい女の子の注目を浴びたい』って言い出して、浅薄な奴等だ」


「先日の事をべらべら喋った薬師兄さんもね」


(どっちもどっちだ)


「す、すまん、

しかしあいつらのプランは余りにも稚拙だ。

ついて行けない!

頼む1度見てくれ。そして言ってやってくれ」


「いいの?ボロカスに言ってイベントに不参加になっちゃうよ」


「構わん。このままでは俺だけでなくて白石の顔にも泥を塗る事になる。

あいつにまで恥を掻かせる訳には行かない」


「薬師兄さん...今も杏子姉さんの事を?」


「ああ今でも大好きだ。だから頼む浩二!」


「分かった。なら本気で行くよ。用意が整ったらまた連絡してね」


俺は静かに電話を切った。


3日後薬師兄さんに呼び出された俺はある家に着いた。


「よう来たな」


「僕達のプランのどこが悪いのか教えてもらうよ」


「練習したんだからね」


「まあ3人共...浩二に見てもらうんだから、まずは入ってもらおうな」


「そうだな。ま、上がってくれ」


ここは石田司の家だ。

(前回の時間軸の時に来たな。懐かしい)

玄関を上がると横の大きな扉を開ける。

そこは大きな鏡が壁一面に貼られたバレエの練習部屋。

石田の姉さんがバレエを練習するために作られた部屋だった。


「それじゃ、ちょっと待ってな着替えるからよ」


「着替える?」


「良いから待ってな」


しばらく部屋に一人残され床に座って待つ。


数分後。


「待たせたな!行くぞ!」


いきなりの大音量の音楽がスピーカーから流れピチピチの衣裳に身を包んだ4人が横に並び歌い出す。


「「「黙れ!うるさいぞお前ら~」」」


(ああ、これか、薬師兄ちゃんこれはダメだ。

しかし若さは凄いなこれを女の子の前でやろうってんだから)

唖然とする俺を見て自信満々で歌いあげる3人。(薬師兄ちゃんは顔を真っ赤にしてる)

分かるよ。冷静に自分を見ろって教えたもんね。やがて曲はラストを迎えた。


「ブルドック! ワオ!!」


見ている俺が照れてしまった。

招待されてこんなの見せられたら堪らんわな。


薬師よ仕方ない、言う事は言うぞ。


「どうだ見たか❗」


「今日は良い出来だったね」


「なかなかだね」


「こ、浩二?」




「...お前ら、バカか?」




「「「な、なに!?」」」


「いいから黙って浩二の言葉を聞け!」


「や、薬師?」


「あのな招待された女の子達が期待していきなり『黙れお前ら』だぞ?

しかも何だその衣裳?

筋肉もろくについてない体にピチピチの服。

お前らは盛り上ってるが冷めた目で見てみろ、

こんなの見る方が罰ゲームだぞ。

どこが文化祭に適してると思うか?

これのどこが文化なんだ?

しかも向こうは音大附属中学だぞ?

謂わば音楽家の卵達だ、

そんな女の子の前で何が『ブルドック、ワオ』だ!」   


「...............」


「お前らの年代は勘違いの連続だ。

一人よがりで自分だけが傷つくのはかまわない、

だが招待するきっかけを作った薬師の事を考えたか?

女の子達を誘ってくれた白石さんの事を考えたのか?  

それでもやりたいなら3人で勝手にやれ。

俺の大切な人[薬師明信と白石杏子]を巻き込むな。以上だ」


 項垂れてしゃがみこむ3人。小さな嗚咽が聞こえる。

 後の事を薬師兄さんに任せて俺は石田家を後にした。


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