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修学旅行小話

会話メインです。

 朝の学校の生徒会室

 ぽつりと由香が溢した。


「修学旅行の写真、大変な事になってなきゃいいけど」


「大変な事?」


「あのね浩二君、修学旅行の夜、覚えてないの?」


「もちろん覚えてるよ。

 みんな面白かったね、一番は和歌子佑樹の夫婦漫才だったね」 


「和歌ちゃんに怒られるわよ、

 そうじゃなくて、浩二君のコンサートよ」


「コンサート?

 あれはクラスのお楽しみ会でしょ?」


「浩二君だけその範囲を遥かに超えてたわ!!

 何あの衣裳?それに照明と音楽まで!」


「衣裳は上田さんのお家にお願いした」


「上田さんってまこっちゃん?」


「そうだよ。上田まことさん。

 家が縫製のお仕事だからお願いしたの」


「何を?」


「服を縫って貰うの」


「良く了解したわね」


「もちろん何も無しじゃまずいから僕の家にある仕事で余った生地をあげたの。

 もちろん両親の許可をもらってからね。

 上田さんのお父さん喜んでくれたよ、服に装飾まで付けてくれたし。

 どうしたの由香?大丈夫?」


(あれ?目眩かな?)

「でも照明は?

 あのスポットライトよ。

 あんな演出、あんなの小学生に出来るの?」


「出来るよ」


「何で?」


「石田君に頼んだ」


「石田良君?」


「そう、彼の家は電気工事業だから。

 家の仕事よく手伝ってると言ってたけど、凄いよね宴会場のスイッチパネル操作を一目で覚えてやっちゃうんだから」


「まさか旅館に無許可?」


「いやだなちゃんとお願いしたよ」


「本当?」


「うん」


「どうお願いしたの?」


「お楽しみ会の僕の出番、電気いいですか?って」


「えっ?」


「それで『電気?いいわよ』ってあの女将さんが。由香?大丈夫?」


(今したの目眩よね?)

「だから女将さん止めようとしたのね」


「でも石田君、上からだけでなくて下にもライト並べちゃうから眩しくって驚いたよ」


「こっちも驚いたわ」


「旅館の宴会場って凄いよね。

 照明から音響までばっちりだったよ。

 スピーカーも音割れしなかったしね。

 由香?大丈夫?」


「い、いいえ、大丈夫、少し目眩が。

 あの音楽のテープは?」


「あれは佑樹」


「えっ!?」


「佑樹の家に凄いオーディオ機器があるの。

 佑樹の父さんの趣味だって。

 オープンリールのテープ久し振りに見たよ、30年振りかな?」


「30年?」


「ごめん、初めて見た」


「それで録音したの?」


「そうだよ。

 貸しレコード屋さんでレコード貸りて、録音させて貰ったの、低音が効いてたね。

 由香?大丈夫?」


「目眩が」


「わ!大丈夫か?由香!」


「おはようって由香大丈夫?」


「あ、和歌ちゃん、大丈夫。

 酷い目眩が。

 でも落ち着いたから。うん」


「オッス浩二!」


「おはよう佑樹」


「この前のテープ余ったな」


「余った?」


「うん。使わなかったね」


「どうする?このギャランドゥ」


「キュゥ」


「由香?由香!」


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


『どうしよう』

 俺は紙袋に入った修学旅行のお土産を片手に駅前を歩いていた。


 由香には『これだけはダメ、ダメなの』と断られ。


 兄さんには『ごめん要らない』と断られ。


 順子姉さんには『それで何をしたいの?』と断られ。


 そして今、富三兄さんにも『俺は英語圏に生きるからそんな物不要だ』と断られた。


 最初ブツは俺の部屋に置いていた。

 しかしブツは主張するのだ。

 暗闇で見ると安っぽい生地で出来たブツの妙な存在感に悩まされ、

 誰かに譲ろう、押し付けようとしたのだが、結果惨敗だった。


 反対に新大阪で購入したビリケンの鉛筆キャップは好評だった。

 俺用に買った分まで由香にねだられあげてしまった


 気がつくと駅前のハンバーガー屋の前に来ていた。


「おや?あれは薬師兄さん?」


 薬師兄さんは道行く女の人に不自然なポーズを次々していた。


「薬師兄さん!」


「わ!びっくりした。浩二師匠じゃないですか」


「師匠はやめよ」


「そうだな」


「今日は何をしていたの?」


「おお、それよ今日は決めポーズの練習を」


「決めポーズ?」


「ああ最近は女の子に少し縁があるだろ、ひょっとして俺モテる男かな?って」


「はぁ...こら、薬師」


「う、また」


「1度や2度女の子と遊んだだけでモテるなどと馬鹿な事を。

 自意識過剰が始まる年頃だが、お前は飛びっきり酷いな」


「えっ?」


「いいか薬師、良い女が居たとしよう、そんな女が一人で次々訳の分からないポーズしていてお前は口説きたくなるか?」


「なりません」


「誰かれ構わず道行く人にウィンクしたり、自分の腰に手を当てて溜め息をつく様なポーズを取る男を誰がモテる等と思うか!!」


「ぐおっ!」


「いいかお前に必要なのは冷静にお前を見てくれる人の目だ」


「人の目?」


「これをやろう」


「なんだこれ、帽子?」


「これを被ってみろ」


「嫌だよ!」


「かぶれ薬師!!」


「はい、これでいいか?」


「恥ずかしいだろ」


「当たり前だ!」


「いいかさっきのお前はそれくらい恥ずかしかったんだ。

 いや真面目な顔でお前のさっきの決めポーズの方が質が悪い」


「こ、浩二...」


「それをやる」


「良いのですか?」


「お前の成長の証だ。

 少し自分に驕りを感じたならばその帽子を見るんだ。

 今の俺はその帽子を被った男の様に見えて無いか、そう戒めるが良い」


「ありがとう浩二」


「それじゃね薬師兄ちゃん、中華帽大事にしてね」


 俺は薬師兄さんに帽子を押しつけ、逃げるように走り去った。


「浩二、大事にするぜ...」


 薬師は帽子を見る。


「中華帽って言うんだ。ん?少し汗臭いな?」

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