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修学旅行 中編

 新幹線の車内は3人掛けの座席と通路を挟んで2人掛けの座席。

 それぞれ反転させると10人のグループが集まれる。

 俺達4人が反転させた3人掛けの座席に座り、残り2人と通路を挟んで4人の座席は学年全体でくじ引きをして決める事になった。 


「やった!」


「悔しい!」


 何やら真剣な様子だが、ここは聞こえない振りをする。

 やはり佑樹と花谷さんの人気は凄い、学年一と言ってもいい程の人気者だからな。


「おじゃします」


「ここ座るね」


 くじ引きで勝ち抜いた6人がやって来た。

 少し不安そうだ、心配しなくていいのに。


「遠慮するなよ。楽しくやろうぜ!」


「そうよ、みんな知った顔じゃない。

 狭くない?荷物棚に乗せるの手伝ってあげる」


「そういうのは俺達に任せろ、浩二!」


「はいよ、佑樹」 


 俺達は荷物を戸棚に並べる。

 結構な重さだが、佑樹は難なくこなしていく。

 さすがだな。


「はい、こっち座って、貴女は由香の隣ね、後でシャッフルしましょ」


 花谷さんが座席を決める。

 由香の隣はもちろん俺、佑樹の隣は花谷さん。

 これは仕方ない、でも不満を一切感じさせないのは花谷さんの人徳だろう。

 瞬く間に打ち解ける事が出来た。


 「昨日は眠れたか?

 俺は二時間しか寝れなかったぜ」


 「佑樹ったら子供みたいね、そんなんで夜まで大丈夫?」


 「大丈夫だ、これくらいで参る俺じゃねえよ。

 和歌は寝れたのか?」


 「私は三時間寝たわよ」


 「俺と変わらねえじゃねえか!」


 緊張を和らげる佑樹と花谷さん。

 たちまち笑い声が座席に溢れた。

 2人のコミュニケーション能力の高さにいつもながら感心する。


 車内は定番のトランプやクラス内の秘密話、学校あるあるで盛り上がる。

 他の座席の様子もそれとなく確認するのは忘れない。

 みんな楽しそうにしているな。


 やがて新幹線は新神戸の駅に着く。

 新幹線を降りて、ここからは普通列車に乗り換えだ。


「わっ!本当にエスカレーター並ぶの左右逆なんだ」


「すっげーみんな関西弁だよ」


「町中が漫才してるみたいだ」


 みんな口々に感想言い合っている。

 懐かしい関西だけど、感慨に浸る暇は無い。

 電車を何度か乗り換え、無事博覧会のある会場駅に着いた。


 会場近くの広場で弁当を食べ、博覧会会場に入る。

 博覧会は9月で終わる上、平日だから思ったより空いていた。


 様々なパビリオンを見たが、やはり1番人気はパンダだ。

 さすがにパンダ館は人気で行列していた。

 俺と佑樹は大興奮する由香と花谷さん達に連れられ、列に並んだ。


 しかしパンダは背を向けて、こちらを向かないまま終わり。

 立ち止まれないのが悔しい。

 しかし由香達女子は、


「顔見れなかったけどお尻かわいかった」


「しっぽ黒じゃないじゃん」


「後ろ姿だけでも見れて貴重よね」


 中々前向きだった。

 その後電車で三宮に戻り中華街を散策したり、

 特別に肉まんを先生の奢りで食べたり、肉まんの汁をこぼして花谷さんが落ち込んだり、がっついた佑樹が口の中やけどしたりした。


「ねぇ、浩二君これ被ってみて」


 一軒の土産物屋に入った俺と由香。

 沢山の土産物から由香は棚にあった帽子を手渡した。


「これは中華帽!」


「何で名前知ってるの?」


「いやテレビで見た事があって聞いたような...」


 あぶない、あぶない。

 由香が手渡したのは紫と赤が交互になっている帽子。

 当時から定番の土産物だったんだな。

 俺は早速被ると、お約束で腕を横に重ねて中腰になり、「謝々」と言って笑った。


「へっ?」


「いや、本当に。似合うね?」


 何故かそれまで微笑ましく見ていた店員さんが口を押さえて驚いている。


「それ。プレゼントする。記念の品よ」


 そう言って袋に入れた中華帽をくれた。

 お金を払おうとするも、


「良いもの見れたから。あげるよ」


 そんな訳で頂いた。

 でも何処で被るのこれ?

 後店員さん、『アイヤー』って言わなかったな。


 みんな楽しい自由時間も終わり、電車に乗って本日の宿がある大阪へ。

 平日の快速電車は少し混んでいたが、皆静かにしている。さすがだ。


 大阪駅で電車を乗り換え、更に30分、賑やかな駅に降りる。

 天王寺駅と書いてある、もちろん俺は知っていた。

 そこからは宿まで歩く。

 独特な雰囲気で由香が少し怯えている。


 実は俺も怖い。

 昔(前回の時間軸)学生の頃に友人と新世界で遊んだ帰り、酔っ払いに絡まれた記憶があるのだ。


「さあ着いたぞ、早くみんな入れ」


 先生も少し怯えている。

 みんな慌てて宿に入ると、旅館の中居さん達がお出迎えしてくれた。


「よう来たね、疲れたやろ?今日はゆっくりしてって」


 その言葉に大阪を少し感じた。

 俺が生徒代表の挨拶をして、各部屋に入る。

 さすがに部屋まで他のクラスと混ざる事はせず事前の部屋割り通り。

 12畳程の部屋には冷蔵庫とテレビ、金庫が置かれたシンプルな和室。

 相部屋のクラスメートが備品に飛び付く


「なあ浩二、冷蔵庫何か入って無いかな?」


「鍵かかってると思うよ」


「本当だ」


「金庫鍵ささってないね」


「ダイヤルで開けてやる」


「鍵が無いとダイヤルが合っても開かないよ」


 みんな興奮している。

 非日常な空間だからな、気持ちは分かるぞ。


「テレビに100円を入れる所があるね、何だろ?」


 一人のクラスメートが禁断のボックスに気づいてしまう。

 止めなくては!!


「俺達にはまだ早い!」


「あっ!映った!」


 テレビのスイッチを指定のチャンネルに合わせるとお金を投入していないにも関わらず画面が光る。


「何だと!!」


 思わず画面に食いつく、これは仕方ないのだ。


「浩二、怖いよ...」


「消えた?」


 次の瞬間、画面から映像は消え失せ、無機質は砂嵐が映るだけになる。

 他のチャンネルも一緒だ。


「一瞬だったね」


 たぶんテレビの切り換えが遅れたか、なにかだろう。

 これで普通のテレビ番組すら見られない。

 他の部屋では果敢に100円を投入する猛者もいたそうだが、歓喜の映像は映る事は無かった。


 その後みんなでお風呂、やはり大人数のお風呂は楽しい。    

 泳ぐ奴、飛び込む奴が出る。


 先生が入って来た。

 みんなピタリと止む、しかし風呂の湯の量と湯面の波紋で直ぐに見破られてしまった、さすがだ。


 脱衣場で裸のまま叱られた後、大広間で食事。

 湯上がりの由香発見、かわいい。

 すこし冷めた食事もみんなで食べると気にならない。

 調子に乗った男子がお櫃に残ったご飯を食べて『俺何杯食べた』『俺なんか何杯!』とバカやってる。


 腹壊すなよ。 


 食事の後は各クラスの隠し芸大会。

 生徒数が多い為、事前にクラス代表が選ばれての隠し芸となる。


 佑樹と花谷さんは手品を披露している。

『チャラララララーン』と口で言いながら手品をする佑樹、顔の彫りが深く、本当の外国のマジシャンみたいだ。

 花谷さんも体が大きくアシスタントにぴったり、二人共パジャマだけど。


「あれ?入らない?」


「痛いわよ佑樹!痛いって!」


 どうやら花谷さんのお腹に被せた箱の上に剣を入れようとするも上手く行かない様子。


「おっかしいな、和歌練習の時より太ったか?」


「バッカ誰が太ったよ!佑樹が下手なんでしょ!」


 花谷さんが箱を投げ捨てると、お腹に赤いプツプツが出来ていた。


「誰が馬鹿だよ!」


 佑樹が剣を振り上げると、花谷さんが奪い佑樹の頭に炸裂!

 段ボールに銀紙を巻いた物だが痛そうだ。


「あんた程のバカはあんた以外世界中にいないわ!」


 マジックショーが夫婦漫才になった、さすが大阪。


 その後も各クラスの隠し芸は続き、最後は俺のクラス、出番だ!

 由香からは禁ギャランドウを厳しく命じられているので、今回はやめて。

 家が美容室の女子に廊下で密かにメイクしてもらう。


「お待たせ!」


 笑顔で宴会場に登場する。

 某元野球チーム名のグループにいた歌手の扮装とメイクだ。

 大音量が響き照明が眩しく俺を照らす。

 会場のテンションが高まるのを感じていた。


 背中にはパラシュート代わりの中華帽を紐で垂らしながら叫んだ。


「「「トーキーオ!」」」


 旅館内は大興奮だったと記しておこう。

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