名前を覚えよう
ようやく兄貴の友達に慣れてきた。
我ながら上手く溶け込めて来たように思う。
しかし最初の内は酷いものだった。
『なんだ?このチビ助』
(お前の方がチビじゃねぇか!)
『何よこのカリメロみたいな頭した子』
(俺がカリメロなら、お前の頭はおんぶおばけじゃねぇか!)
兄貴の傍をうろつく俺を邪魔に感じていたのだろう。
しかし3ヶ月も過ぎると、
『おーす浩二、おじゃますんぞ!』
『こんにちは浩ちゃん、今日もニコニコ笑顔可愛いね』
みんな話掛けてくれる様になった。
今日家に来たグループは固定メンバーの5人。
家に来るメンバーは日替わりで、全て入れ替わる訳でなく固定メンバーが5人。
時折数人が加わる事に気づいた。
男の固定メンバーは前回から覚えいる。
『薬師明信』と『扇本富三』の2人。
何で覚えてるかって?
こいつらみんな兄貴と同じ中学高校と進んで、それぞれ違う国立大に進んだからだ。
俺は兄貴の行っていた公立高校を落ちて、併願の私立男子校に通う嵌めになったというのに。
...俺の事は良いんだ。
さて問題の女の子達、最初から顔くらいなら俺も見覚えがあった。
そりゃそうだ、3人いて、みんな兄貴に好意を寄せていたメンバーだから。
前回は名前すら、ろくに覚えなかったがな。
よし、名前を間違えず、忘れてないか今日も確認するぞ!
「ねぇ順子ねぇちゃん、上のお名前のそごうって十の河で合ってたっけ?」
「あら嬉しい、しっかり覚えくれたんだ。そうよ十の河でそごう十河順子だよ」
順子ねぇちゃんはとっても大柄で、目鼻がハッキリした女の子。
最初はハーフかと思った程だ。
「ねぇ浩ちゃん、私の名前は言えるかしら?」
「もちろん、西村優子ねぇちゃん!」
「ふふ、ありがとう」
優子ねぇちゃんはおっとりした感じで、大きな目が印象的。
長い黒髪は腰まであって、いつも綺麗に手入れされていた。
「次は私よ、私。
ねぇ浩ちゃん、私の名前言ってみて!」
「しらん あんこ!」
「ちょい、ちょっと待って、しらんじゃないよ。白石、あんこじゃない杏の子と書いてきょうこ、白石杏子!」
「そうだった?」
俺は首を傾げる。
杏子ねぇちゃんは順子ねぇちゃんや優子ねぇちゃんとタイプが全く違う。
ショートカットの髪は少し茶色で、切れ長な二重と高い鼻筋。
中学に上がる頃には一部男子生徒からファンクラブが出来てたな。
「うぐ、この可愛さは反則...」
「良いんじゃね?あんこの杏子で」
「うるさい富三!
浩ちゃんが餡子が苦手だから『こいつの名前はあんこだぞ』って教えたからじゃない!富三が!」
そう言えば、毒舌でも知られてたっけ。
「こら富三、富三言うな!」
「ハイハイこれぐらいしましょうね」
順子ねぇちゃんはさっさと場を収める。
本当、大っきくて頼りになる。
でも中学からの印象は全く無い。
避けられてたのかな?
「そうだな皆で宿題終わらしたら人生ゲームしよう!」
「「「「賛成!!」」」」
今日も賑やかな固定メンバーだ。